月霞む丘に 少年は一人立っていた
紅く咲き誇る 奢侈の花に囲まれ
腐り落ちていく 白い肌を削り
夜に溶けるような 黒い蜜を塗っていた
明日夜が明ける前
風が丘を行くとき
禁忌の薬を飲みほして
すべてを無に帰すのさ
星が堕ちていく 街は今日も明るくて
無邪気な嬰児を 焼き尽くしてしまっていた
生きることも死ぬことも
大差ないこの土地で
そんな資格などないけれど
許せはしない
少年の
光る腕に 潜む唾棄 身に余る力を欲していた
叫び唸り願い祈る その呼吸が熱を巻き上げた
奢侈の花は赤く燃えて 舞い上がり街をとり囲む
この身ごと燃えてしまえ 赤い涙永遠に枯れていくまで
夜空が泣きだし 花は枯れて地に堕ちる
体は崩れかけ 死期はそこに迫っていた
陽が昇るその前に
身をささげ息吹かせる
灰が舞う街に希望の光を灯す
少年は
小さな声で 最後の力を その身から燦然と解き放つ
誰もいない街をそっと青い風が吹いていく どこまでも
少年は倒れ 土となりて 丘の花は白く生まれ変わる
そこは終末の夜明け 太陽が朝を告げる瞬間が近づいていた
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