とんとんとん。
ネギを刻む小気味の良い音。
包丁とまな板が立てるリズムって結構いい音だと思うな。
とんとんとん。
ミリ単位で刻まれていくオニオンブロック。
汁が飛んでも俺は泣かない。
ゴーグルつけて準備は万端、キアイ満点で俺はネギをやっつけていく。
どうだ、もう終わりかよ?…最後の塊に近づいてくる。
こういうのはラストが一番コツがいるんだ。
左右に回して切れ込みをいれ、根元の周りを無尽に勢い刈っていった。
とんとんとんとん、たんたんたんたん、がん、ばっ、ざぁっ!!
磨き上げられたボウルの底へとスライディングする玉ねぎのかけら達。
サイズは均一、つぶれもなし。色つやもボウルと同じく綺麗な光沢だ。
よし───きまったじゃん、俺。
まな板を持ち上げまた起き、リズムを1,2。
ついでに両手を叩いてパン、パン、パン。
俺は作業のピリオドを大きく隣にアピールしてさしあげた。
そうすると、不服な表情。いつもと同じく俺をとがめる視線が現れる。
『台所は女の聖域』。
そんな言葉が昔はあったらしいけれど、特に我が家ではそんな言葉は通用しない。
現にこいつが持っているサラダボウルには、ウサギが齧ったようなボロボロレタスが
ちんまり入れられてるだけだ。
「次、進めるぞ…俺、朝食ってないから早く食いたいし」
もう一度ウサギレタスの主をゆっくり見据えて話しかける。
…面白いだろ。
ゴーグル越しに見るその顔。
頭のリボンが本気でウサギみたいな感じなのに、真っ赤になって怒ってら。
「く、食いしん坊レン!あ、、あたしはすっごいあまくておいしートコ選んでるだけだもの!」
ムキになって言葉が少したりなくなってるこれが俺と双子の鏡音リン。
俺の相方。
…『自称』スパゲティ作りの大天才(マエストロ)、その人だったりする。
※ ※ ※
木曜日。今日は週に一度のスパゲティの日。
今は昼時。お腹ももうへりっぱなしだ。
だから俺は今、全力でスパゲティを作ってる。
そうだよ、あのフォークでくるくる巻いて食べるやつ。
…って言ってもさ、勘違いすんなよな。
はっきり言うんだけど…俺、別にスパゲティが好きっていう話とは全然違う。
例えばどうせ作るんだったらラーメンとか牛丼とか。
もっと気軽にガンガン食べてもよさそうなやつ、あるだろ。
姉ちゃんとか女が強い家だからさ、そういうのって結局めったに食べられないんだ。俺。
あーあ。
たまには一人で飯くってみたいぜっ────。
リンの趣味で着せられた白いエプロンだって(当然!)お断りだ。
じゃあなんでスパゲティなのかって?
うん、そこなんだ。
本当は水曜がスパゲティの日って決まってるわけじゃない。
だけどな、食事当番が曜日で交替で変わっていく我が家では、自然に今日がスパゲティの日に
なってしまう。
※ ※ ※
去年の12月27日。
何時も通りソファに座って何となく、互いのレーンにゼリー状の生き物を
落としあうテレビゲームで遊んでたりした昼下がり。
全く同じタイミングでクロスして、互いに太陽マークがさんさんと降り注ぐ。
お互いに大チャンス、一番燃えるタイミングだ。
その時にメイコ姉が言った言葉
「そろそろ双子ちゃんにもご飯支度してもらわないとね」
その言葉によって、あっけなく俺達二人にも食事当番を任されることに決まってしまう。
「じゃあ、毎週木曜日はスパゲティの日ぃ!あたし大得意~」
その掛声で俺は操作を誤り3列目に沢山ゼリーを摘んでしまう。
そしてポーズボタンを押すリン。
「スパゲティだったらあたし、すっごく一生懸命作れそうな気がする」
嘘つき。
毒づきながら、ポーズボタンを解除した。
そして太陽を巻き込んだ、強烈な4連鎖。
リンは──コントローラーに手を伸ばすも間に合わない。
硬いカタマリがぼたぼたリンのスペースに落ち続ける。
その瞬間。少しの間相方の頭からはスパゲティのことなんてもう何も残ってない。
俺に向かってクッションを投げ付けて報復してきたぐらいだからな。
「まぁ───いいんじゃない、洋食なんてのも」
元凶はゲーム機だ。そう判断したメイ姉。
リセットボタンなんか押さず、テレビを切って断言する。
我が家の秩序はその一言で回復し、俺もリンも並んでその場で正座してしまう。
「いいこ」
俺達の頭をなでるメイコ姉。いつまでも俺たちを子ども扱いしたいらしい。
…けどな。
俺はあいつがちっとも”いいこ”じゃないことを知っている。
何故スパゲティって。…俺は理由を知っている。
そして、もしかしたらきっと皆も理由に気付いてる。
アイツは「茹でればできる」…そう信じ込んでいるだけなんだ。スパゲティを。
更に悪いことに、家族はみんなリンには何故か甘いんだ。
隣で揺れる大きなリボン女に注がれるのは惜しみない賛辞の声だけなんだぜ。
俺、本当に嫌になる。
カイト兄は無責任な応援。
「わーおしゃれ」なんてよ。俺には嫌味にしか聞こえないミク姉の
ストレートな絶賛の声まであがってきたからには、、、ほんきで完っ璧、涙目。
俺の気持ちなんか全然知らないリンのヤツは調子に乗ってつけあがる。
「じゃあ早速買い物いってきますー♪」
だってさ。
”さも当然”みたいな感じ。…俺の手を無理やり握って外へと連れ出していった。
「どうすんだよ!スパゲティなんてきっと難しいだろ」
真冬の玄関フードの中、二匹の子猫みたいに小声で二人は話し合った。
リンだって本当はそこまで馬鹿じゃないんだ。
俺たちのことは俺達二人できちんと話す。
そんな風にこういう大事な時は、、とりあえず二人で話して決めてきた。
押入れの下の段、ソファの後ろ、向いあった勉強机の背中越しに。
…結論なんていつだってひとつできまっているんだけれど。
この日も耐えられない沈黙の後、一言だけの決断をリンは言う。
マフラーに隠れた口の下、俺にだけ聞こえる小さくてはすっぱな声で。
「逃げるの?あたしが作れるって言ってるのにな」
───溜息。俺はその日も、何時もどおりの決まった結論に陥落した。
※ ※ ※
だまって言うこと聞くなんて情けないって?
君、…それは勘違いと言うものだ。
だってさ…。悔しいだろ。
同じ顔の奴の下手くそな料理とエプロン姿、、皆の前で笑われてみろよ。
自分が恥ずかしい事をさせられてるようで、すっげぇ恥ずい。
朝起きて寝ぐせとか酷いのを鏡に映したとき、急に鏡から寝起きの俺が飛び出して
学校に飛び出していったとか、見せなくてもいい嫌なものを味わった気持ちになるんだ。
だから俺はあれから一生懸命勉強してパスタを覚えた。
…最初の日はレトルトで笑って許してもらった(うぁ、、、忘れてぇ!)んだけど
今はちゃんとリーフも入れて本格的にソース、作れるんだぜ。
…マエストロは最初からマスターだから相変わらずなんだけど、さ。
※ ※ ※
「レン卑怯。あたしだって包丁使えば、、、野菜くらいちゃぁんとに切れる」
「刃物はやっぱりカッコいいじゃん。俺が使いたいんだって……あ、やべ……」
「何?なにやったの??」
「パスタ同時に茹でんの忘れてるじゃん……」
「あ、バカ。いいよ。あたしやったげる───」
「にやり」って文字が顔に書かれていそうな顔を十分見せつけた後で自分の仕事を放棄した。
放置されるサラダボウル。
リンの作業は後はパスタ鍋に麺を入れて見てるだけ。
これで分担どおりに進んだ事に、ちょっとだけ俺はほっとした。
だから挽肉の色が赤からキツネ色、茶系に代わって行くための仕事をじゃんじゃん俺は行う。
スナップを利かせて、よっし。成功。
ピーマンやニンジン、セロリにマッシュルーム。
ミートソースは具材が多いから、飽きっぽいリンと作るには丁度いい。
鍋を火にかけ、早くもやることを見失ったリンは早速炒め終わったミートソースのフライパンを
満足そうに覗いてる。
…俺も、なんだかそれを見てると少しだけ悪い気がしないんだ。
結構好きだし。………ミートソースが、だ。スパゲティの中では。
だってメイコ姉貴の作るボンゴレはやたらに辛すぎるし、ボンゴレなんて全然
食べた気にならないもんな。
やっぱり男は黙ってミートソース。
キマリダゼ。
「いい香り」
「だな」
なんだかミートソースの香りは安心が詰まってる感じだ。
後、落ち付いていられる原因は。。。
やっぱりリンが”不思議なことをしでかさないで傍にいる”こと。これっきゃない。
リンが”見てるだけ"っていう理由だけで作業が次々捗ってきた。
リンがちぎったレタスの上に、わかめと赤とさかをふわふわのばしてトッピング。
けれど、”おとなしいリン”は、こういう時にはきっちり爆弾を用意する。
「…レンってあたしじゃないみたい」
横からサラダを覗いていたリンは、そんなことを呟いた。
「ばーか。俺はこんなに不器用じゃないし、こんなにほっぺた太くない」
”当たり前だろ”っていう感じで肩で傍から追い返そうとする。
「酷。あたしだってこんなに髪つんつんじゃないし」
軽く押し返してくる。
「そうだよ。だから、リンはリボンつけてられるじゃん」
言われて頭の上に乗った白いリボンを触ってら。
リン一人では結べないから毎日結んでやってる可愛いリボン。
「そういうものなのかなぁー───…」
「そういうことなんだよ。リンは似てるからって俺にリボンつけさせたい?」
「げ。…それサイアク」
二人で俺の頭の上にリボンが乗った図を想像。
…うげ。我ながら何考えてるんだ!!!!
二人同時に下を向いて蹲ってしまった。
そうだ。
俺達は似ててもこんなにも違う。
だからこそ、こんな風に遊べて…嫌で、楽しいんだ。
「ありがと、良く出来た弟くん」
────ぴぴぴぴぴ。
何かひっかかるコトバと共にタイマーの音。
こういうのがないと俺達二人は時々他に世界があることを忘れてしまいそうになる。
けれど、動いたら動いたでとたんに慌ただしく動き出すのが時間と世界の勝手さ。
”……分かっててやってるなんて卑怯。姉ちゃん…”
「なんか言ったぁ?…あ、変な歌!」
居間からの歌──澄んだこれはミク姉の。
「「はやくしないと!」」
♪ フォークで巻き巻き くるくるん
おなかが グルグル 恥ずかしい そろそろ我慢の限界よ
それでは いよいよ いただきます~ ♪
ミク姉は綺麗な声なのに、かなり変な歌を平気な顔して歌ってる。
…俺に…もう少し幻想を持たせてくれよな。ミク姉。
こんなんだったらぼんやりしてる時間はない。
味にうるさい兄姉達が二人のご飯を待ち受けているのだ。
だんだんだんだん。
二階の部屋から、大きな音で降りてくる年長組。
「よぉ、お二人──スパゲティの機嫌はどうだよ?」
ノースリーブの涼しげなカッコが似合うメイコ姉。
「やぁ、今日は辛くないスパゲティで安心だよ」
ノースリーブはおそろいだけれど、何故か真夏にマフラーを付けている変な兄貴のカイト兄。
「なんだよ。あいつら年すげぇ俺たちより上なのに…俺達に全部任せっきりなんだぜ」
「あは…ほんとー。ね、、、レン」
「あんだよ」
「また作ろうね、パスタ」
「考えとく」
そういった手前、やっぱり俺は考え込んで見た。
きっと、俺…イタリア料理屋さんになるのかな?
ボーカロイドなのに。
・・・ま、いっか。
「ほい、味見」
「おいしい、、レンのスパゲティ」
凄い笑顔。
やっぱり俺はリンなんかじゃ絶対ない。
こんな顔出来ねぇ……。///やば、意識してる??俺。
「おいしそうでしょぉー。食べて食べて、あたしお手製のスパゲティ・ボロネーゼ♪」
勝手なヤツ…本っ気で。
一人で飛び出して兄貴たちの中でスパゲティを給仕するリン。
”弟、ね”
確かに相方はそう言ってたよな。
胸が少しもやもや。楽しげな雰囲気の中でため息ついてバカな相方の事を考える。
3日後とか1週間後とかじゃない、もっとずっと遠い未来の二人の事。
きっと俺、ずっとスパゲティを作っていかなきゃならないんだろうな──…。
そんな事をたった今、確信した。
ずっとそばに居たいって言う事を意識してそんな事をもっと考えた。
「アシスタントのレンくんー、特別に君にもいっぱい食べさせてあげよう」
振りかえりざまのリン。
白いリボンがふわりと揺れた。
”はーい、はいはい”
ワザといいかげんで適当で、ゾンザイに答える俺サマ。
それに対してにやりとリンはタバスコを振りかざす。
怒ったふりして粉チーズを沢山もって応戦するのが俺の役割。
わいわいがやがや。メイコ姉が怒り散らすまでこの喧騒は続いて行く。
でも、これでいいんだ。
同じ顔だけど違うリン。
永遠の相方が、同じ顔で泣いてたり、悩んだりしてると俺がすっごく困るから。
席に着く全員。──「っただきます」の声。
同時にウィンク。向かいに座ったリンが笑いかけてきた気がした。
でも…そんなんじゃ足りない。
もっと笑わせてやるんだ。俺に変な悪戯なんか絶対できない位にな。
(Fin~)
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-----------...ネバーランドから帰ったウェンディが気づいたこと【歌詞】

じょるじん
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朝まで遊ぼう ここでは皆が友達さ
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音楽隊 灯りの上で奏でる星とオーロラのミュージック
大人も子供も皆が楽しめる
ほら、おばあさんもジェ...☆ ネバーランドが終わるまで

那薇
ハローディストピア
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BPM=200→152→200
作詞作編曲:まふまふ
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ぱっぱらぱーで唱えましょう どんな願いも叶えましょう
よい子はきっと皆勤賞 冤罪人の解体ショー
雲外蒼天ユート...ハローディストピア

まふまふ
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