その、二時間程後の事。
未だに実感がなかった凛は、家に帰って自分の部屋に入ると、一気にその実感がわいてきた。
携帯に、メールが来ていたのだ。それも蓮から。
凜にとって、唯一の男友達だった蓮には、よく愚痴を聞いてもらっていた(といっても、メールを通してだが)。もう見慣れた画面の筈なのに、緊張で手が震えて、なかなかメールを開く事ができない。
凛は一度深呼吸をし、蓮からのメールを開いた。
『From:山波 蓮
To:栗布 凛
件名:明日のことだけど
本文:
明日、何時にどこで待ち合わせする?』
メールの内容は、簡潔にまとめられていた。何の変哲もない文章に、凛は大きく息を吐き出した。
「……っはは」
そして、無駄に緊張した自分が馬鹿らしく思えて、思わず笑ってしまう。そして、そのまま鞄を放り投げてベッドに倒れこみ、携帯の『返信』ボタンを押す。
三分程たったころ、凛はメールを送信した。
『From:栗布 凛
To:山波 蓮
件名:Re:明日のことだけど
本文:
じゃあ、朝の8時に二丁目のバス停で!^^』
凛と蓮の家は歩いて二分程の距離にあり、丁度その中間地点の辺りにあるのが、凛の指定したバス停だった。そこからバスに乗ればすぐに駅に行く事ができ、凛はよく使っている。
しばらくすると、蓮から『了解』と返信が来た。
明日は創立記念日で学校は休み。デートの約束をするには、丁度良かったのかもしれない。
「どうしよ……緊張してきた…………」
凛はそう呟く。
しかしその何時間か後、彼女の呟きはどこかに消え、深い眠りの中に落ちていった。
◇◆◇◆
翌日。
時刻は午前四時、まだ夜明け前だ。
少女は、とある家を走る。廊下を駆け抜け、目的の部屋へとたどり着く。けれどその部屋の扉は開かない。鍵がかけてあるようで、押しても引いてもガチャガチャという音が虚しく響く。
どうしようか、と少女は一瞬悩む。けれどすぐに解決策を思いつく。
単純で簡単な方法。目の前にある扉を、一瞬で無効化する方法。
少女はすうっと息を吸い、全身の力を使って足を振り上げる。
「おにいいいいいちゃああああぁぁぁぁんっ!!」
バキィと言う盛大な音と共に扉は蹴破られ、部屋の中が明らかになった。
机とベッドしかない質素な部屋。その机は勉強道具で溢れかえり、床には脱ぎっぱなしの制服と鞄が無残にも転がっている。そしてベッドにはある人物が眠っている。
少女はその人物の上に立ち、耳元で叫ぶ。
「起きろおおおおおおおおにいちゃあああああああん!!」
常人なら鼓膜が破れているであろう声量で少女は叫んだ。机に積んであったノートや教科書は飛び散り、天井からつるしてある電球には罅が入る。
しかしそれでも……目の前の人物は眠ったまま。静かな寝息をたて、深い眠りについている。死んでいるのかもしれないが、呼吸はしているので生きてはいるだろう。
少女はいつまでも起きないその人物を睨みつける。そして、またもや名案が浮かんだ。目の前の人物を起こさせる為には、どうしたらいいか。
今度は大声で言わず、ぼそぼそと呟く。
「デートに遅れちゃうよおにーちゃん」
刹那。
「うわああああごめんごめん!!」
突然、その人物が起き上がった。明るい茶色の髪に、紺色の瞳――さっきまでベッドに寝ていたのは、蓮だった。
少女は蓮が起きたのを確認すると、得意顔でにやりと笑った。
「計画通り」
蓮はしばらくきょろきょろと辺りを見回す。そしてここが自宅である事、まだ夜明け前である事を知ると、少女を呆れた様な眼で見つめる。少女はそれに気づくと、自分の胸を手で隠すようにして、言った。
「きゃ☆ お兄ちゃんのロリコン☆」
「やかましいわっ!!」
蓮は長い溜息をつく。溜息をつくと幸せが逃げる、なんて言っていたが……
元々この家にはないものだから、関係ないだろう。
と、そこで蓮はベッドから下り、ガッと少女の顔を掴む。
「……りーんーなー」
「わわわわ」
少女はそれを払おうと蓮の手を叩く。しかしそれ位ではびくともしなかった。
蓮は続ける。
「お前なぁ、兄は敬うものなんだぞ? 知ってたか?」
「だぁって、お兄ちゃん、敬う気になれないんだもん」
少女は口を尖らせた。
彼女の名前は、山波 乃莉(やまは ないり)。蓮と同じで癖のある、焦げ茶色の髪。丸い大きな黒い瞳。
小学五年生のその少女は、蓮の妹だった。
「それよりさぁお兄ちゃん……」
「ん?」
乃莉は、するりと蓮の手を自分の顔からどけた。そして蓮の寝ていたベッドに乗る。
「今日、クラスの子とデートするんでしょ?」
瞬間。
「ぶはっっ!?」
蓮は足を滑らせ、近くにあった本棚に頭を強打した。あまりの痛みに蓮が何も言えないのを見て、乃莉は目を丸くする。
「あ、あれ? お兄ちゃん、もしかして秘密だった? それ」
蓮は涙目になりながらも乃莉を睨みつけ、立ち上がった。そして低い声音で、ゆっくりと言う。
「……乃莉、お前何で知ってる……?」
凛との約束の事は、まだ誰にも言っていないし何かに書いた訳でもない。もちろんメールはしたが、彼の携帯にはきちんとロックがかけてあって、暗証番号を入れないとメールを開けないようにしてある。
クラスメイトなら、知っていてもおかしくない。あれだけ教室で注目を浴びたのだから。けれど、学年どころか学校さえ違う乃莉が知っている筈がない。
知っている筈がないのだが……
「さぁて、何ででしょうね~っ」
乃莉は無邪気に笑う。その笑顔がムカつくというか、
「あ、待ち合わせは二丁目のバス停だっけ? 凛ちゃんも賢いよね~」
「はあぁ!?」
乃莉の笑顔は、ムカつくというより恐ろしかった。それは人の反応を見て楽しむ、悪魔の笑顔だ……
どうしてこんなのが自分の妹なのだろう。確かに顔のつくりは似ている気もするが、中身は本当に違う。いや、乃莉ほど悪魔の様な心を持った人間は他にいない。そうだ、絶対いない。
「……あれ? つーか乃莉、何でお前凛の事知ってんの?」
「ふえ?」
そう、凛は幼馴染でもなく、別段親が親しい訳でもない。中学で初めて同じクラスになり、何となく仲良くしていただけな筈なのに。
「えっへっへ~、何でだろうね~っ」
と、またしても悪魔の笑顔。彼女の情報網は一体どうなっているのだろうか。
「おま、いい加減…………あー、駄目だ、眠い。俺もっかい寝るわ」
怒鳴る元気も無く、ぽんぽんと乃莉の背中を叩いてベッドから下ろす。また眠りにつこうとする蓮を、乃莉は不満げに見つめて、
「えー? おにいちゃん、二度寝はいけないよ?」
「四時に起こしといてその台詞かよ!」
カッとなり蓮は眠気も忘れて言う。乃莉はふうぅと息を吐き、粉々に粉砕された扉を飛び越え、廊下へと出る。
「冗談だって。おにいちゃんをからかう為に起きたんだし。私もそろそろ寝るよ~」
一つあくびをして、乃莉は自分の部屋へ走っていく。それをぼーっと見つめていた蓮は、
「……扉、直さないとな…………」
そう呟いて、再び眠りへとついた。
キミとデートとゴーランド【2】
というわけで第二話です。
蓮の妹はとりあえず常識が通じないキャラなんで、書いてて楽しかったです^^
ちなみに、蓮の妹の元になったボカロは特にいません
(強いて言えば、山波 蓮かな? 兄弟だし)
次回から二人は遊園地に行く予定です!
予定です!
目標は、いちおう週一回一話ずつ(一話は約2000文字)更新です。
ちょっと簡単すぎますかね^^;
ちなみに第一話は大体3000文字、第ニ話は2700字くらいでした
あれ……目標、一話3000文字にした方がいいかな?
感想・アドバイスなどお待ちしてます!
グーフ
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龍竜
ご意見・ご感想
本日3回目~
何回もすみません(泣)
でもすっごくおもしろくって・・・
続き頑張ってくださいね☆
2011/04/30 20:02:27
グーフ&ボイスレコーダー
さささ、3回目っ……!!
いえいえいえ、すっっっごく嬉しいです!
自分の作品を誰かに見てもらえるなんて、本当にうれしい事なんですから!
ましてコメントまで頂けるなんて……
頑張りたいと思います!
おかげで、続きを書く気力が出ましたっ
ありがとうございます>▽<
2011/04/30 22:00:01