「兄さん、何やってるの？」
「うわぁっ・・・って、何だ、お前かよ。」

遊郭番のところにいる双子の従者、その兄を探しに来ていた弟が声をかけました。

「何でそんなに驚くの？」
「い、いや、別に？」
「じゃあ何やってるの？　こんなところまで来て。」

従者兄のいた所は、時計屋の家からは死角になっていて、なおかつこちらからは良く見えるところでした。

「いや、別に何にも。」
「じゃ、何でこんなところまで来てるのさ。」
「・・・散歩？」
「何？その疑問系。」
「そ、それより、そっちは何でここにいるんだよ！」
「何その慌て方。こっちは兄さん探しに来たんだよ。」
「何でだよ。」
「兄さんが最近妙に外に出かけてて、いたずらも殆どしなくなってて、色々怪しいから見張りに行けって、主様が。」
「え、何。そんな風に言われたの？」
「うん。」

そうこう話しているうちに、時計屋がすごい勢いで走っていくのが見えました。

「・・・何があったんだ？」
「それより、兄さんはなんでここにいるの？」
「・・・、別にいいだろ。」
「言わないんだったら、実力行使でもいいけど？」
「・・・・・・言わない。」
「何でここで意地を張るの？　はぁ、レィンはストーｋ（超大声）」
「言うから言うなっっ！！」


「・・・おれさ、やっぱり、人生は恋に費やした方がいいと思うんだよね。」
「何さ、急に。それより理由は？」
「だから、人生を無駄にしたくないんだ。」
「兄さん・・・。」
「わかってくれたか？」
「話を要約すると、ストーカーだね。」
「違う！」
「ほぼ毎日時計屋の家の近くまで来てるのに？」
「何故・・・それを・・・。」
「時々覗こうとしてるのに？」
「どこで見てたんだよ！」
「えっ、本当だったのｗｗ」
「はめられた！？」
「まぁ、兄さんはそのみっっじかい人生をストーカーに費やすって意味だね。」
「なぁ、最近冷たくないか？　あと何故「短い」を強調する？」
「別に？　兄さんが抜け出してる分、ぼくに仕事が大量に回ってることなんてナイデスヨ？」
「完っ全っに、それが理由だよな！」

「こんにちは～郵便屋です。」

郵便屋見習のレイレンが来ました。

「何のようだよ。」
「やぁ、ストーカー（笑）。」
「は？　てめぇやんのか！？」
「今日は仕事だし、邪魔すんなよ。」
「さっさとしろよ！」
「何だ、ノスフェラトゥが写ってる写真要らなかったか。」
「それならさっさとわたせよ！」
「わたせ？」
「わたしてくれよ、レイレン。」
「丁寧に言えよ、でないと破き捨てるぞ。」
「くっ、わたしてください、レイレン様。」
「初めからそう言え、じゃあな。」

封筒をわたされました。

「・・・兄さんは、プライドまで捨ててしまったんだね。」
「・・・それは否定しない。」
「してよ！」
「ストーカーは否定してるだろ！」
「じゃ、もうやめるんだね。」
「やめるよ。・・・写真見ていい？」

例のあの写真を見ました。

「・・・・・・。」

確かに、ノスフェラトゥは写ってます。
ウサギと一緒に。

（実らない恋ならしなきゃいいのに。）

兄は泣いてました。

その日から、兄は真面目に仕事をするようになったそうです。

「真面目な感じでアタックするんだ！」
「はいはい。」