売れ残っていたボーカロイドを買った、風変わりな妙な男。
彼に理由を問えば、彼は首を傾げてこういう。
「気に入ったから」
現に、彼はKAITOを起動させる前から、存分にその外見を眺めて満足そうにしていた。歌うための存在を、彼は外見からして気に入ったらしい。
まず、青が好きな彼にとって、KAITOの髪の毛や瞳はたまらなく。試しに起動させた時に聞いた声が気に入って、あっさりと買うことにしたらしいのである。
欠点をその前に大量に並べられられていたにも関わらず。
「そんなものどうにでもできる」
「……マスターってポジティブなんですね」
あっけらかんと言ってのけた男に、KAITOはため息をついてそういう人種なのだと納得した。
「ところで、青ってどんな青が好きなんですか?」
興味本位から出た質問であった。青にも色々ある。薄い水色に近いものから、藍色に近い濃い色。
際限なく広がる色の多様さは、むしろ一言で表せないものだ。
「どんなのでも好きだぞ。あぁでも、映像で見た、昔の綺麗な海の色が一等好きだな」
「へぇ?どんな色なんですか?」
「うん?説明しにくいなぁ。青だけど、緑にも近いかもしれない」
「…よくわかりません」
「そのうち映像入手してやるよ」
指きりまでしたものだが、結局それは叶わなかった。
実を言えば、KAITOと彼が過ごした大半は、平穏な時代ではなかったのである。
***
KAITOは、よく海や湖に変化がないかと視線を凝らしていた。濁って、黒くさえ見える水を見ては落胆した。
青い海が見て見たい。マスターが言っていた、美しい、緑にさえ見えるというその色を。
冷たい風に吹かれながら底の見えない水面を見下ろしていると、妙にあの約束が思い出されてならなかった。
青が好きで外見が気に入って。
声で買うことを決めたという、妙な主とした、唯一の約束である。
「もしかしたら、本物を見たかった、とか」
ぽつりと呟くと、現実味が増して頬が緩んだ。叶わなかった約束。
あのポジティブなくせに現実的な男が、叶わなさそうな約束をした。
あれはすでに、願望だったのだろうか。
遠くで声が聞こえる。
かの女性のように、マスターを、人を求める声。けれど、それも大分減った。
自分もそのうち、彼女のようにあれらの仲間入りをする。
…最後の願いは、叶えられるだろうか。
to be continued...
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