「太った…」

 私は思わず、自分の下ではっきりと現実を映し出すその体重計のうえにへたり込んだ。

 ただでさえ、あの重そうなツインテールの親友よりも一キロ重いのに…。そういえば最近間食が増えていたかも…。
 などと頭の中をいろんな言葉が駆け巡る。

 幼馴染であり彼氏でもあるレンにばれたら嫌われちゃう…。

 
 その一言が頭の中に現れた瞬間。

 私はダイエットを決意した。



 
 ***



 ダイエットを決意してからの私の一日は、毎朝5時に起床してランニング。
 そしてご飯は食べずに野菜ジュースだけ飲んで学校まで遠回りをして歩いていく。
 昼食はサラダだけ。
 下校も登校時と同じように遠回りをする。
 そして、帰宅後もなるべく体を動かすようにして、夕食もあまり食べないようにする。
 というものだった。

 お腹は減るし体も疲れてぼうっとすることが増えたけれど、レンに嫌われるぐらいなら我慢できた。


 そんなこんなで私のダイエットは開始から1週間過ぎた。
 


 ***



 大好きなはずの体育の時間。

 今日は先生が出張とかで、男女合同のバレーボールの試合だった。

 普段は張り切ってやるはずのバレーも体がだるくて身が入らない。

 ボールがコートの間を舞う。それすらもしっかりと認識できなくて…

 「リン!危ない!!!」

 相手コートから私のコートに早いボールをよこしたグミが叫ぶ。

 自分の真上に落ちてくるボールがスローモーションのように見えた。

 ごんっ!と鈍い音がして、私は意識を失った。


 ***


 目を覚ますと目の前には真っ白な天井と私を包む真っ白なシーツ。

 そして、私の横には―――

 「れ、レン?」

 大好きな人。

 むくりとベッドから上体を起こすと、レンは
 
 「あ、頭うってんだからおとなしく寝とけ!!」

 と慌てたように言って、私をベッドに押し戻す。

 そしてゆっくりと話し出す。

 「…お前さぁ、最近、ちゃんと飯食ってないだろ。」

 私は思わず黙り込んだ。しばらくの沈黙の後、私は口を開いた。

 「…何で、レンが知ってるの?」

 「お前の母さんが、最近リンが飯食わないって心配してた。」

 「…だもん。」

 私の口からはかすれた声が、目からはぼろぼろと涙が出てきて。

 「レンのせいだもん!!ばぁーか!!!」

 私は枕をレンに投げつけた。
 
 「ぅぶっ!!」

 レンはそれをもろに顔面に食らう。

 「な、なんだ。元気じゃねえか…て、俺のせいって?」

 「…嫌われちゃうもん。」

 「俺が?リンを?」

 レンは手の中の枕をぱふぱふともてあそびながら首をかしげる。

 「太っちゃたら、レンは私のこと嫌いになるもん。」

 布団に顔をうずめながらちらりとレンの表情をうかがうと、レンはなぜか笑ってた。

 「何が面白いのよ…」

 じろりとレンをにらむと、レンはあっけらかんと、

 「俺がリンを嫌うわけないじゃん。」

 といった。

 「はあ?レン、馬鹿じゃないの?彼女が太ったらいやじゃないの!?」

 「俺はどんなリンも好きだよ?」

 「語尾が疑問形になるのが何となく許せない。」

 「めんどくせぇな!お前!!」

 レンは私に一度背を向けて鞄をごそごそと探ると、コンビニのおにぎりを取り出した。

 そしてそれを私に渡す。

 「食え。」

 「イヤ。ダイエットしてるってわかってるでしょ。」

 レンにおにぎりを突き返す。

 「でも、お前フラフラだし。顔色悪いし。見てられねーんだよ。」

 レンは無理やり私におにぎりを渡そうとする。

 そのおにぎりを突き返し続ける私。

 しばしそのやり取りが続いて、それにしびれを切らしたレンは、

 「だあああ!!もう!お前が食わねぇなら俺が食うからな!!」

 といって乱暴に包みをはがし始めた。

 「…今一応授業中だし。」

 私が呟くとレンは、おにぎりをほおばりながら、

 「お前が食わないからだろ?こっちは体育の後で疲れてんだよ。」

 といってドヤ顔をする。

 私がう~、とうなると、レンは

 「食べたいんなら我慢するなよ―――」

 と言って、私とレンの唇が重なった―――――



 何度も角度を変えて重ねるキスは甘くて、脳天までしびれそう。

 息が苦しくて、でも心地が良くて。


 ***


 レンと唇が離れる。

 すこし恥ずかしくなってレンをちらりと見上げると、レンと視線が交差する。

 「…食えよ。」

 レンは食べかけのおにぎりを差し出す。

 「ありがと。」

 今度は素直に受け取っておにぎりをほおばると、口いっぱいに鮭のほどよい甘さが口に広がった。

 「…鮭。」

 「リン好きだろ?」

 「うん…でも、レンは鮭嫌いじゃん。」

 レンはふっと軽く微笑む。

 「だってそうでもしないとリン食べないじゃん。」

 「ありがと。」

 私は大きくおにぎりをほおばった。


 ***


 レンは私がおにぎりを食べ終わるまで待ってくれた。

 「…ごちそうさま。」

 私のその言葉を聞き終わると、

 「じゃあ、俺は授業戻るから。お前はもうちょっと寝とけよ。」

 といって椅子から立ち上がった。

 「待って!!」

 私は立ち去るレンの服の裾を引っ張る。

 「なに?」

 「…どんな私でも好きでいてくれる?」

 小さくうつむいて尋ねると、

 「当たり前じゃん。大好きだよ、リン。」

 私のおでこにキスを残してレンは保健室を出て行った。


 ***

 
 こうして、私の長くて短いダイエットは終わりを迎えた。

 レンが愛してくれるのなら、私はそれだけで幸せな気持ちに満たされる。

 だから、これからも――――――






ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【モモへの】すべてはそう、君のため【大遅刻誕プレ】

遅れてすみません!!!
話の構想は早い段階からできてたけど、文章にすると難しくてなかなか仕上がりませんでした!!
しかもあんまりリクエスト通りの甘い感じじゃない…
本当にごめん!!

モモ大好きです!!これからもよろしく!!

閲覧数:365

投稿日:2012/06/13 21:25:15

文字数:2,442文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • モモコ

    モモコ

    ご意見・ご感想

    きゃああぁぁぁぁ!!!!!←←←

    かわいすぎるー!!!(((落ち着け!

    と、その前に。リンちゃん、ちょっと私と代わってくr((黙れ

    あぁ…。リンちゃん、可愛い…(はーと
    うん、うん。好きな人に嫌われたくないよね…。わかるよ!
    でも、ダイエットの方法がむちゃくちゃ…ww まぁ、リンちゃんらしいっちゃ~…らしいけどww

    28282828ww
    もしかしてレンきゅんがお姫様だっこで保健室まで運んだのk(((妄想ストップ

    てか、レンきゅん!!!かっこよすぎるぉ~~~////
    おにぎり食べさせるつもりが…き…キスするなんてぇぇぇぇーー!!!あー。私もレンきゅんにされたいry

    鮭おにぎりじゃないか!!!私も大好きだぞ!!!←

    もぅ…。なんなのこれ…。超!甘い感じだよ!!!こんな感じの小説大好きだよ!!←


    こんな素敵な小説をありがとう*

    私も紅華のこと大好きです!!こちらこそよろしく!!

    2012/06/15 21:58:22

    • 紅華116@たまに活動。

      紅華116@たまに活動。

      モモー!!コメントありがと!気に入ってくれたみたいでよかった^^
      本当に遅れてごめんね><

      リンちゃんの立ち位置は美味しいよねー(((

      はーと てwww
      あんなダイエットしたらやばいよねwwリンらしいとは私も思うけどww

      そうなのよ!
      リン視点だからお姫様抱っこのシーンは省いたけどそうなのだよ!!((落ち着けwww

      レンきゅんはイケレンを目指しましたww
      レンきゅんからキスされてみたい…手かむしろリンにキスしたいwww

      鮭おにぎり美味いよね!!うちも好物www

      気に入ってくれて本当に良かった!

      2012/06/15 22:28:00

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