「乱していい?」
それは唐突に片割れの髪弄りごっこタイムの最中に僕が言った台詞。ブラシをかけていたリンの手が止まったのが振り向かずとも感覚で解った。うーとかあーとかたっぷりと思考の間を持った後、彼女が出した答えは。
「だめだよ、今から結ぶんだから!」
「や…、髪の話じゃなくて、」
思惑通りの誤答。途端に倦怠感がのし掛かる。家族全員から溢れんばかりの愛情を注がれて育った片割れは超を通り越した純真無垢で、こと関してソチラの話に超絶疎い。落ち込むな、それは今に始まった事ではないだろう、とモチベーションを何とか上げながら会話を続行。
「例えばさ。真っ白な画用紙があったら色を塗りたいとか思うじゃん。」
「?そんな話だっけ?あ、そこの髪ゴムとって。」
「ん、これは例え話。」
「レンっていつもまどろっこしい言い方しかしないよね。」
ブラシのリズムが再開する。纏めた金糸が上に引っ張られ、四角い氷みたいな飾りが付いた髪ゴムでとめられた。…可愛い系は嫌だって言ってるのに…。触れるとゴツゴツとするその手触りに溜め息をついた後、満足げに頷くリンに椅子を謙る。今度は僕が彼女専属ヘアリストになる番だ。さらさらと肩口に流れる金糸を先ずは手櫛で梳きながら反論を返す。
「庇護欲と嗜虐心が同居してるからね。ヘタなことは口に出来ないんだよ。」
「最初の方はよく分かんないけど、それって何か違う。だって本音とタテマエなんていらないのがあたし達の関係でしょ?」
何の気なしに言ったのだろうそのリンの台詞にはた、と手が止まり、胸の辺りがざわつく。日常会話の中に密かに滑り込ませるだけで留めていた内なる感情が外に出たがっているのがひしひしと伝わってくる。ああ…そろそろ限界かも。
「……そう。じゃあ率直に言わしてもらうけど。今日の髪型、」
「うん?」
「項にキスしたいから、アップでいいよね。」
「………き…!!」
目の前の鏡に真っ赤な顔で硬直する愛しい片割れが映っているのを横目で見やりながら、鮮やかな金糸に唇を寄せた。
(本当は唇にしたいんだけどね。)
なんて口にすればそれこそ椅子から落ちてしまうだろうから。
今は代わりの言葉を吐き出す事にしようか。
「うん、とっても似合ってる。」
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