アマンダはリンをロボットの調整用のベットに連れて行く。
「そこに横になって」そう言って指差す。
リンはこくっと頷いて、ベットに横になる。それから、アマンダはリンの頭や、腕や体といった場所にある小さなジョイントホールにコードを付けていく。
「大丈夫か?」
ジェシーは近くの椅子に座って、アマンダの作業を見守っている。
「う~ん、とりあえず一度スリープかシャットダウンして頭を開いて見ないとなんとも言えないな・・・」
アマンダはジェシーに答えながら作業をする。
「時間掛かるか?」
「掛かるね、徹夜になりそうだ」
「解った、特別料金を出す。こいつを治してくれ」
「はぁ!?なんでそこまでするんだよ。うっぱらうんなら、時間掛けてじっくりやっても問題ないじゃないか?」
ジェシーの言葉に思わず大きな声を上げてしまうアマンダ、ジェシーの正気を疑ってしまったからだ。
「なんだ、こいつに同情したのか?」
「好きなように取れ、ただし初期化はしてくれよ。俺がオーナーってのは勘弁してほしいからね」
「じゃぁ、どうすんだよ・・・」
「知り合いの孤児院に、こいつを連れて行く。こういう奴なら、子供等とも仲良くやれるだろう」
「なるほどね・・・」
アマンダはジェシーの言葉に、含み笑いを浮かべる。ジェシーが知り合いという孤児院に何かと援助してる話はアマンダも知っていた。
「解った、見て見るよ」
「じゃぁ、頼む」
ジェシーは立ち上がって、酒場の方に足を勧める。
「あ、銃の方も頼むな」そいう言って、右手を軽く上げて挨拶をする。
「解ってるよ」
奥から、アマンダの声を聞いてから部屋を後にする。
酒場は客が居なくなり、マスターが後片付けをしていた。
「おや、お帰りですか?」
出てきたジェシーに気づいたマスターが声を掛ける。
「ん~、一杯いいかな?」
苦笑いのジェシーに穏やかな笑顔で返すマスター、「どうぞ」とカウンター席を指差す。
「なんにしますかな?」
「バーボン、ロックで」
「かしこまりました」
ジェシーは椅子に腰掛け、今までの疲れを吐き出すように大きく息をつく。
「今日のお仕事はどうでしたかな?」
マスターはグラスに氷を入れてバーボンを注ぎ、ジェシーに差し出す。
「どうもこうも、ないぜ・・・。武装できないやら何やらで、中に着たこいつが無かったら苦戦してただろうな・・・」
そう言って、シャツの中のパワードスーツを引っ張ってみせる。
「おやおや、それを使ったのですか・・・。相変わらず無茶しますね」
「こうでもしなきゃ、あの野郎簡単にやられてくれないからな・・・」
それからジェシーは、しばらくマスターと仕事の話から最近の社会事情まで話した。
話の途中で、アマンダが出てきて店の珈琲を勝手に淹れて自分の仕事場に去って行った。
話に満足したジェシーは、家路に着く。
家は店から、歩いて5分もしない所にあるアパートだ。部屋に戻ったジェシーはシャワーを浴びて眠りに着いた。
ジェシーが目を覚ましたのは既に12時を回ったくらい。
ベットからのっそりと抜け出して、顔を洗って歯磨き。身支度を整えて食事を取りに近くの喫茶店に出向く。外は晴天、喫茶店に寄る途中の路上の売店で新聞を買う、喫茶店で軽食と珈琲を注文して外の食事場の座席に腰を下ろす。これが彼の日課だった。
新聞でまず探すのが、昨日のニュース。大きな記事ではなかったが、それなりにニュースになっていた。
先に来た、珈琲を口にしながら新聞の記事に目を通す。
(大きな事件にはなってないか・・・、まぁ相手が相手だからな。マフィアの抗争的な扱いか・・・)
誰に殺害されたのかとかといった、事は書かれていたがそれ以上深くは書かれていない。それは情報が不足している証拠だ。
(現場に監視カメラ等がなくて良かったと言う所だな・・・)
ジェシーは顔が割れたかどうかなど、自分にかかわる事を確認すると他の記事にも目を通す。
ニュースは毎日絶えない、どこで誰がしんだとかどこかの会社が不正をしただの様々だ。
ジェシーは表で生きるのに新聞等にはきちんと目を通している、世間の流れを知るためだ。
新聞を軽く読み終えてから食事を取ったジェシーは、アマンダの居る店に行く。
店への入り口はこの時間では閉まっているのでジェシーは裏口から入る。
裏口も正面口同様の仕掛けが施されていた。一見すると只のガレージ、車が置いてあり奥には工具置き場の大きな棚が幾つかある。その一つに手を掛けて、横にスライドさせるとアマンダの居る作業場への入り口が姿を見せるというものだ。
何故、彼女の居る場所がこのような仕掛けが施されているかというと、彼女家は酒場のマスター含めて昔から代々続いてきたガンスミス(銃整備士)の家柄。元は酒場のマスターがガンスミスとしてやっていたが、今は孫のアマンダに譲り自分は酒場のマスターに納まっている。
アマンダたちは裏社会に深く関わっているガンスミス、その為人目に触れないようにしていたのである。
表向きは寂れた酒場、裏では様々な銃火器を扱う店という訳だ。
マスターの時代は、銃火器専門だったがアマンダが引き継いでからは様々なマシンも扱うようになった。
時代が進むにつれて、銃火器だけでは喧嘩にすらならなくなっていったのだ。
実際、ジェシーが昨日の仕事で使用したパワードスーツもここから調達したもの。
「アマンダ、起きてるか」
ジェシーは奥の方に声を掛けながら進む。部屋の中央にはリンが寝ているロボット調整用のベットが有った。ベットには頭の傷が綺麗に補修されたリンが静かに横たわっている、そこに椅子に座って添い寝するようにアマンダが寝ていた。
「やれやれ・・・。おい、アマンダ起きろ」
アマンダを揺すり起こす。少し揺すると、半目を開けて機嫌の悪い様な顔を上げる。
「何だよ・・・」
「どうだ、出来たのか?」
あまり寝てないのだろう事はジェシーにも解ったが、彼女には仕事なので容赦はしない。ジェシーは近くから椅子を引っ張ってきて座ると、タバコを咥えて火をつける。
「で、どうなんだ?」
吐いた煙はゆっくり天井に向かう、それをアマンダはぼーっと眺める。
「どうもこうも、いじれない・・・」
「は?いじれないって?」
「ここの外傷な、思ったより中に酷い影響を与えてるんだよ」
アマンダは自分の額の右側を指差す。
「一様頭のフレーム外して調べたんだが、フレームがひしゃげて中で基盤やら何やらがそれに押されてひん曲がってやがる・・・。互いが干渉してショートしてる所もあった。おかげで一部は焼け焦げてるわ、熱で溶けたハンダが干渉を引き起こしてるわで、動いてたのが不思議なくらいだぜ・・・」
アマンダは作業をデジカメで取っていた、それをPCから映像を出してジェシーに見せる。
「まて、俺にそんな難しいこと言われても解らん。動くのか、駄目なのか教えろ」
「動く・・・事は動く」
依然眠そうに話すアマンダ。
「じゃぁ、データ等の書き換えは終わったんだな?」
「いや、それが出来ない」
「なに?」
タバコの灰を落とすのを忘れて話しに聞き入ってた為、灰がジェシーの言葉で床にポトリと落ちる。ジェシーは慌ててタバコの火を近くの作業台にあった灰皿でもみ消す。
「動くのにデータの書き換えが出来ない?どういうことだ」
「ここからは難しい話になるから、単刀直入に言うとだな。専門の修理工場に持っていかなきゃこいつのデータの初期化どころか書き換えすら出来ないって話だ」
アマンダが、急に真面目な顔になった。
「という事は?」
「現状、お前がオーナーとして認識した状態での稼動という事だ」
「じゃぁ、どうすれば・・・」そうつぶやいてジェシーは困惑の表情を浮かべる。
「取り合えず言うとだな、こいつは一般用で戦闘用でも何でも無いそもそも、銃弾が当たるなんて事を想定した物じゃない。だからなんだろうな、こんな変な事になったのは・・・」
アマンダはジェスチャーでジェシーにタバコを要求する。ジェシーは自分の分を取り、アマンダにタバコの入ったケースを渡す。二人はお互い自分の手持ちのライターでタバコに火を付ける、アマンダはジェシーにタバコのケースを返してお互い一息つける。
「要するに、起動したらこいつは昨日同様俺にべったり付いて来るって話か?」
「ああ、そうなるだろうな」
「このまま機能停止させて捨てるって手はどうだ?」
「まぁ、無理だな・・・」
アマンダはタバコを大きく吸い込んで一気に煙を吐いた。
「なんで?」
「シャットダウンが出来ない、さっき言った基盤干渉のショートでそこら辺が壊れてる。今現状はスリープモードだ、時間が来れば目を覚ますだろう・・・」
「まいったね・・・」
ジェシーは頭を抱える。
「一様きちんと、フル稼働できるように整備しておいた。干渉してる部分にはシリコンでコートして通電しないようにしたり、頭のゆがんだフレームは叩いて整形したし、剥がれた人工皮膚はきちんと補修しておいた」
「いらんことを・・・」とジェシーが呟く。
ジェシーにとってはもとよりゴミ同然の代物、直されても迷惑なだけだった。
「ちょっと考え方変えたらどうだ?」
アマンダが自分のタバコを灰皿に押し付けて、ジェシーに灰皿を渡す。ジェシーは灰皿を受け取って自分のタボコの火を消す。
「考え方?」
「ああ、最近では仕事の手伝いとかでロボットを使う奴も居るだろ?お前もそいうので、こいつを助手に使ってみたら?」
「助手?勘弁してくれ、いくらなんでもこれじゃ足手まといだろ?」
「そうでもないさ、こいつらはこんな外見だが知能は大人のソレと変わらないし、動きも調整次第では好きなように出来るしな。逆に、こんな子供みたいなロボットだとお前が行けないような所にスイスイ行けたりするもんだぜ」
「様は、考えようって事か・・・」
落ち込んだ表情のジェシー、そこには諦めなんかが混じっていた。
「どうする、色々パーツもあるし軽い戦闘用にもカスタマイズ可能だぞ」
「ああ、もう好きにやってれ・・・」
ジェシーは投げ出したように言う。
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