<Dear My Friends!第2期 第17話 魔法&刀vs機械!>

(ヤマト国 オーエド地区 アサクサバヤシ アキバ製菓工場跡)

 ゆうまはミズキと一緒にミゥ兵側とコンタクトを取りに行ったので、“インストール”と戦う『男性陣』は、テル、レン、学歩の3人だった。

 テル側は生身で、武器属性は、『魔法』、『剣』、『刀』。かたやルォのギア側は、ルォ自身は生身だが、戦う本体であるギアの武器属性は、『機械』である。正直、普通の感覚から言っても、テル側の方が圧倒的に不利である。かつて“魔方陣事件”で戦ったフォーリナー軍政国家の兵士ですら、武器は持っているが、遺伝子から培養された生物だったわけで、本体そのものが“機械=金属”で出来ているギアを相手にするには、それなりの戦略と前もっての知識が、普通なら必要だった。

 そう、『普通』、なら・・・・・・・・・

***

インストール:コレヨリ、ダンセイゾクセイノ センメツヲ カイシシマs

 シュパーーーーーーーーーーーン!!!!!!

 ボトッ

 インストールの右腕が、“肩関節との接合部”、つまり、“関節”故に、金属装甲が手薄の部分が、真っ二つに斬り落とされて、地面に落ちてしまったのだった。

 斬り落としたのは、精神統一して準備しており、居合い切りで瞬時に踏み込んだ、学歩の刀だった。正確に言うと、刀の刀身で斬ったのでは無く、刀の一振りで刃の周りに生じた“斬撃波”で、関節を支えているパイプや金属骨格を斬り落としたのだった。

インストール:!?!!?!? リカイフノウ! リカイフノウ! コレヨリ バランサー エネルギージュンカンケイロ アクチュエーターヲ シュウフクシマス!

学歩:ふぅ。まぁ、とりあえず、初陣はこんな所でござるな。レン、テル、後は任せた
レン:りょーかーい!
テル:了解だ

 その光景を見ていたルォは、唖然としてしまっていた。

ルォ:な・・・・・・・・・・・・・ギ、ギアを・・・・・・・一撃だと・・・・・・・

 インストールは、すでに攻撃に移れる状態ではなかった。右腕破壊により、破損関節の自動修復、動力伝達器(アクチュエーター)からの動力経路の変更、オイルや高分子内部液の流出停止、電力供給経路の変更、兵装の変更他、右腕破損だけでも、最低これだけの事を同時に行わなければいけないため、とても攻撃状態などにモードを変更することなど、出来るはずも無いのである。

テル:私もミズキ達3人との話で、色々勉強したのだよ、ギアの特性を。相手は“基本、金属”で、“電気で動いている”、ということもな

 ジジジジジジジジジジ!!!

 テルは複雑な魔方陣が書かれた“白い手袋”をはめた“両手”を開いて、少し間隔を開けて胸の前で構え、その間に“雷撃魔法で作った電流”を流し始めた。青白い何本もの“稲妻”が、手袋の間をはしっていた!

テル:テイマーは、我々とは戦ったことが無い。戦闘経験から来る“戦略知識”は皆無だ。自分で武器を持って戦わないテイマーと、相手に効果的な知識を伝達されないギア、そんな輩で我々に勝つなど、片腹痛い!

 ババババババババ!!!!!

 テルの両手には、輝く稲光が渦巻いていた!

テル:金属装甲や間接カヴァーの下には、おそらく電気を通さない“絶縁体”が敷かれているだろう。だが、学歩の斬撃で、電気での伝達経路内部は、むき出しになった。つまり、絶縁体など、何の役にも立たない。だから!

 ギュバ!

テル:ブロークンサンダー!!!!!!

 ビカッ! ゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

 テルが作った両手の間の稲妻が、突然、前に流れていく“雷”となって、インストールの壊れてむき出しになった“右手側の間接内部”に落ちていった! 絶縁体が破損して、電気回路がむき出しになった箇所に、高電圧の稲妻が落ちたのだ。その効果は、言うまでも無いのである。

インストール:カ・・・・イロ・・・・・ダ・・・ン・・・レ・・・ツ・・・サ・・ブ・・デ・・ン・・ゲ・・ン・・ニ・・・

テル:レン、最後のとどめを頼む
レン:オーケー! うりゃ!

 そういうと、レンはブロードソードを前に構えて、“破砕”できる部分である“メインスコープ”に向かっていったのだった。

レン:貫通撃!!!!!

 ガシャン!!!!!!!!

 レンの剣の先は、動かなくなって防御できず100%ヒットする事になったインストールの頭部前面に設置されていた“メインスコープ”を貫通して進入し、メイン制御装置のある“頭部”を破断したのだった。

インストール:・・・・・・・

 ガクン・・・・・ガタッ

 遂にインストールは、すべての動きを止めて、緩くなった間接があり得ない方向に曲がって地面に崩れ落ちて、完全沈黙したのだった。

レン:ふぅ・・・・・成敗!

 レンは決めポーズを取って、剣を天に掲げたのでした。

***

ルォ:な・・・・・・・・・・・・なんなんだ・・・・いったい・・・・・・・・・

 ルォは、もう、狼狽するしかなかったのだった。あっという間に勝負がついた、男性陣のインストール戦。だが、ルォとて“テイマー”、両手で頬をひっぱたいて気を取り直し、まだ大丈夫だろう、ダウンロードの戦況に目線を変えたのでした。

ルォ:い、いや、まだだ! まだ終わらんよ! 俺にはまだ、“あの”ダウンロードがいる! 今の戦闘データをダウンロードにフィードバックすれば、今からでも十分挽回できる! 女共を片付けたら、そのままヤロー共に向かわせる! 今度は戦闘データがある! 絶対勝てる!

 しかし、ルォは大きな“勘違い”をしていたのだった。

***

 ミゥ兵側に連絡をするために移動した“ミズキ”、そもそも戦闘向けでない“めぐみ”、兵士の回復や弾丸を電磁的に反らすためのバリアーを張っている“リン”、この3名を除いた4名、つまり、“イア”、“ルカ姫”、“アペンド”、“りおん”が、女性陣の攻撃メンバーだった。

 戦う気満々のルカ姫は、テルにあらかじめ教えてもらっていた通り、弱点の電気系に効果的な“電撃弾”に魔弾銃のダイヤルをセットして、ダウンロードに標準をあわせて構えていた。

ルカ姫:あのテイマーに直接撃ち込みたいけど、とりあえずこのギアから片付けるわ!!!!

 少々、生理的に嫌っていたのだが、両手をテルと同じように構えて、強烈な稲妻を発生させて、雷撃の準備をしていた。

アペンド:私の役割は、動きを止めること。さっさと終わらせるわ

冷静なイアは、まず初撃で“疾風系で間接内部を露出させる”事に専念するため、ダイヤルを“疾風弾”にセットして、ルカ姫と同じようにダウンロードに向かって構えていた。

イア:逃げちゃだめ・・・・・逃げちゃだめ・・・・・

 だが、“りおん“だけは、そのテンションに大きな差があった。簡単に言うと、ルカ姫以上に、

『キレていた』

 のだった。戦闘前に杖になにやら魔法をかけていたらしく、その“細工のしてある杖”を構えて、鼻息荒く、ダウンロードを睨み付けていた。

 そんな女性陣の戦闘準備の状況を、視線での分析程度にとどめていたダウンロードは、ルォから脳波経由で、男性陣の戦闘が終わって、インストールが破壊されたことを伝えられた。

ダウンロード:なんだよ、あいつ、イっちまったのかよ! 所詮、量産型かぁ! その点、オレっちは、特注品のカスタムタイプだからな! さーて、あのイケてる“ナオン”達を、どう料理しようかn

りおん:ぶっ倒すぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!!

 我慢の限界を超えた“りおん”は、杖を振りかぶりながら、いきなりダウンロードに向かって突進していったのだった!

ダウンロード:おいおいおい! お嬢ちゃん、そりゃ、無策だぜ! オレぁ“ロリコン”じゃねーから、あんたは最後にしようと思ったんだが、いきなり相手かよ、せっかちだn

 そんなことを言っている場合ではなかったのだ。カレとルォはその後、地獄を見ることになるのだった。

ダウンロード:おりゃ、主砲喰らえ!

 ドガン!

りおん:ホームランなのだ!

 バゴン!

 なんと彼女は、杖をバットにして振りかぶり、主砲の弾丸を打ち返してしまったのだった! 打ち返された弾丸は、距離がある“アキバ製菓工場”の屋上に居る、ルォの所に飛んでいったのだった!

ルォ:ぬぉ! あぶねー!!!!!

 ひらり!  ヒューーーーーーン ドカーーーーン!

なんとか交わしたルォの後方で、弾丸は爆発したのだった。

ルォ:な・・・・なんなんだ、あのガキ! 男性陣の戦闘データが役に立たねーぞ!!!!!!

ダウンロード:つ・・・・つぎの攻撃・・・・ちょっと! ルォ! しっかりしろぉ!

 ダウンロードは次の攻撃に移ろうとしていたが、時すでに遅しだった。りおんは、すでに杖を構えてダウンロードの目の前に来ていた。彼女の目は血走っていた。

りおん:あちし達が留守の間・・・・・ずいぶん酷いこと、やらかしてくれたじゃないの・・・・
ダウンロード:ひぃ!

 ガゴンッ!

 りおんは、“旅先で手に入れた魔術書で覚えた魔法『極限硬化』でガチガチに固めた杖”で、ダウンロードの前面甲板を叩き割ったのだった!

ダウンロード:いてぇ!
りおん:これは、ここの仲間の兵士の分!!!!

 ひょい ドゴンッ! ドゴンッ!

 今度は、前面甲板に乗っかって、杖で両手肘間接を次々と破砕したのだった!

ダウンロード:ぐぉわ! しゅ! 修復!
りおん:これは、困っているミゥ様の分!!!! そして!!!!!

 ギュイーーーーーーーン!  ドッッッッッッッッッゴォォォォン!!!!!

 最後に、メイン装置が集まっている頭部から胸部にかけて、杖を思いっきり振りかぶって、爆砕してしまったのだった!!!!!

ダウンロード:ごぉ・・・・な・・・・なん・・・なんだ・・・この・・・ガキ・・・・
りおん:これは、この国で困っている、全員の分なのだ!!!!!!

 ぎゅーん・・・・・がくんっ


ダウンロードは、斬撃攻撃も使われず、電撃攻撃も使われず、剣撃も使われず、男性陣の戦略が全く利用できない方法で、撃沈され、行動が全停止して、地面に崩れ落ちてしまったのだった。

りおん:・・・ふぅ・・・・スッキリしたのだ!!

 屋上で、口をアホみたいに“あんぐり”と開けて呆然としているルォだけではなかった。そのバトルシーンを始終見ていた、他の女性陣3人の、それぞれの攻撃ポーズを取ったまま、ある意味、呆れていたのだった。

アペンド:な・・・なんなの・・・あの子・・・・・
イア:つ・・・・杖の・・・・物理攻撃だけで・・・・倒しちゃった・・・・・
ルカ姫:で・・・・・・出番・・・・・無かった・・・・・

***

 その後、男性陣と女性陣は合流し、アキバ製菓工場の屋上で、まだ“ほうけている”ルォを睨み付けて、兵士から貸してもらった拡声器で警告を与えたのだった。

テル:そこの“負けた”テイマー!!!! 貴様を次に倒したいが、色々訊きたいこともある! 我々の戦力は見てのとおりだ! 潔く投降して降りてこい!!!

 ルォはその声、特に、“負けた”、の所にカチンと来たのか、我に返って、逆上して拡声器で怒鳴り返したのだった!

ルォ:ま! “負けた”ゆーな!!!!! こ、今回はこれくらいにしておいてやる! 全部、チンシャン様に言いつけてやるからな!それに次はな! オレのとっておきのギアで、おまえらなんか、ぐちゃぐちゃのメケメケにしてやるもんねーーーーだ! ばーーーか! ばーーーか!

 そう言うと、奥側に移動し、屋上の裏に隠してあった“小型飛行機”のコクピットに乗り込み、即エンジンをかけて、屋上から飛び立ち、そそくさと逃げていったのだった。

 全員冷や汗を垂らして、大人げないルォを見ていたのでした。

テル:あ・・・・あいつこそ・・・・いったい・・・なんなんだ・・・・

 そういうと、ミズキ達が合流して説明していた、このエリアの兵士達の所まで全員移動し、とにかく事情を聴くことになったのでした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

Dear My Friends!第2期 第17話 魔法&刀vs機械!

☆休める時間に、ノリノリで書きました。

☆オリジナル作品第16弾である、「Dear My Friends!第2期」の第17話です。

☆対ルォのギア2体戦です。でも、どうも、最初に感じた危機感が・・・・・・

☆それと最後に、テイマー達の一部をちょっとだけ登場させてみました。あと、やっぱり“なんちゃらツリー”より、ロマンあふれる“なんちゃらタワー”ですよね!

***

私がここに投稿したボカロ小説のシリーズ目次の第1回目です。第1作目の“きのこ研究所”?第8作目の“部室棟”+番外編1作目です。
作品目次(2009/12/25時点):http://piapro.jp/t/5Qsh

同じく、目次の第2回目です。第9作目“鏡音伝”?第15作目“ルカの受難”の途中までです。
作品目次(2010年1月6日?2012年2月7日):http://piapro.jp/t/9GY1

更に、完結した『Dear My Friends! ルカの受難』のみの目次も作りました。
作品目次(Dear My Friends! ルカの受難):http://piapro.jp/t/qj6A

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投稿日:2013/04/06 21:01:11

文字数:5,042文字

カテゴリ:小説

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  • オレアリア

    オレアリア

    ご意見・ご感想

    enarinさん、今晩は!
    今回も楽しみに待ってました!

    初戦のギアとの戦い、一体どうなるかと思いましたが、苦戦するどころか圧倒的!いやいや、テルたち一行の力は、近未来の科学兵器に対して、まったく引けをとらない強さですね。これじゃあ、流石のルォも唖然しちゃいますよねw

    しかしこのダウンロードのようなギアは、あくまで前線に駆り出される、ごく普通の兵器…背後にいるテイマーたちは、更に強力なギアを持っている様子。チンシャンやマカの言う「あのギア」とは一体?
    そして一行たちも、テイマーたちに目をつけられてしまいましたね。これはもう、五体満足で帰れらせてはもらえない…!?

    なんちゃらタワーww
    あ、僕もGRYPHUSδさんと同じく新タワー建設は冗談、半信半疑に思っていました。まさか本当にだったなんて…w

    ブクマ頂きました!
    荒廃したヤマト国で、劣勢に追い込まれていたミゥたちも、アペンドやテルたちの協力で反撃に出ることができるのでしょうか。次回も楽しみにしています!

    2013/04/09 20:53:20

    • enarin

      enarin

      オセロット様、こんにちは! めっちゃめちゃお返事が遅くなりましてスミマセンでした。例の件で忙しい故、ご了承くださいませ

      > 近未来の科学兵器に対して、まったく引けをとらない強さですね

      今回はテル達の予習が役に立つギアで良かったです。どうも、今後相手にするだろう、サーチなどは、この手は使えないような感じですしね

      > 背後にいるテイマーたちは、更に強力なギアを持っている様子。チンシャンやマカの言う「あのギア」とは一体?

      上層部もギアを使います。チンシャンのギアは”サーチ”、つまり、”見通し分析する力”です。攻撃型ではないですが、かなり危険な相手ですね。それに”奥の手”として配備しているルォの次のギアも気になります。

      > 五体満足で帰れらせてはもらえない…!?

      どうやら、そのようです。完全に相手に喧嘩を売ってしまった形です。とはいえ、あの事態で、ルォと話し合いは無理ですしね。

      > 僕もGRYPHUSδさんと同じく新タワー建設は冗談、半信半疑に思っていました。まさか本当にだったなんて…w

      観れば一目瞭然の異様な塔です。下町の屋根の低い一帯に、1つだけ飛び出した金属の塊。不気味です。

      > ブクマ頂きました!

      ありがとうございます! 毎回更新が遅くなってしまって、申し訳ありません

      > 次回も楽しみにしています!

      ありがとうございます! 今、こんな事態なので、時間を作って、続きを書きますね。もうちょっとお待ちくださいませ。ちゃんとシナリオは出来ているのですが、なかなか文章化まで到達できません? (;。;)

      このたびのご閲読、コメント、有り難うございます!

      2013/04/25 12:57:37

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