当ても無くシャルロットと子供を捜していたが、影すら見当たらなかった。

「そろそろ暗くなるんじゃないのか?」
「う~ん…もしかすると迷子になってるんじゃないかな?他のスタッフも捜してる
 みたいだし。」

確かロビーで見た子供は小さかった。大体2~3歳だろうか、そんな子供が迷子になったら相当心細いんじゃないだろうか?ゲルニカが私の手を甘噛みした。視線を落とすとゲルニカもこっちをじっと見ている。判ってる、何が言いたいのかも、何をすべきかも判ってるんだ。だけど…。

「…ラビット?」

忘れたつもりの記憶がじわじわ甦って足が竦んだ。

「ラビットさん!それにシャルロットさんも!」
「あれ?花壇…ウサギも何で…?」
「あの…えっとね、課題の花持ってる子が一人迷子みたいで…私クリアしたから捜すの
 手伝おうと思って…。」

言葉が喉まで出掛かっていたけど、どうしても、どうしても飲み込んでしまった。私は花壇の様に素直でも頑張れる訳でも無い…同じ様に皆が受け入れてくれないかも知れない…恐い…恐い…!俯いてゲルニカを抱き締めた時、小さな手が私の服の裾を弱々しく引っ張った。小さな男の子が目に涙をいっぱい溜めて私を見上げていた。

「しあが…しあがいないの…!しあ…たすけて…!」
「詩亜?」
「迷子になってるのは幾徒様の…この子の双子の妹です。」
「しあ~~~…。」
「幾徒君、大丈夫、泣かないで?ね?」

幾徒と呼ばれた子供は真っ赤な顔でぼろぼろと涙を零して泣き出した。ウサギと花壇が必死でそれを宥めている。私は何をしてるんだろう?出来る事があるのに…この子を泣き止ませられるのに…!

「…シャルロット…。」
「え?」
「花壇…クラム…チコリ…鳳仙花…スナイパー…ハレルヤ…それに、ウサギも、
 NPCの皆も…。」
「ど、どうしたの?」
「…気味が悪いかも知れないけど…私を…私を嫌いにならないで…。」

抱いていたゲルニカをそっと地面に降ろすと私は指笛を鳴らした。


―――カァー…!!
―――チュンチュン…チュチュン…
―――ピピッ…ピィーッ…


「わわっ?!何だ?!鳥がいっぱい…!!」
「ラビット…?」
「ウサギ、迷子の特徴は?」
「名前は詩亜、銀色の髪に金色の目の2歳の女の子だ。服装はグリーンのワンピースに
 髪飾りを付けてる。」

私はその子達に特徴を話す、一人から答えが返って来た。

「ウサギ、此処に教会はあるか?」
「ああ。式用のチャペルがある。」
「この子がそれらしき子が教会に入ったと言ってる。」
「よし、じゃあ教会行ってみよう!」

急ごうとする皆に思わず言葉を投げ掛けた。

「信じて…くれるのか?」
「え?嘘…じゃないよね?」
「わ…私が気持ち悪いとか、胡散臭いとか思わないのか?!あいつらみたいに魔女だって
 白い目で見ないのか?!こ…恐く…恐く無いのか?!」

答えが恐くて顔が上げられなくて足元のゲルニカをじっと見詰めた。すると思いの外大きな手が頭にポンと乗った。

「召還師みたいでめっちゃめっちゃ感動しました。」
「シャルロット…?」
「一緒に行こ、ほら。」
「…うんっ!」

右手を繋いで、左手にゲルニカを抱えて、緩む口元は必死で隠しながら教会へ走った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-60.スターチス-

手…だと?

閲覧数:106

投稿日:2010/08/13 22:36:03

文字数:1,353文字

カテゴリ:小説

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