さぁ おいで
さぁ おいで
こっちへ きて あそぼうよ
あそこへいこうよ
こちらへいこうよ
さぁ
どこにいく?
どこに いくかは きみ しだい
さぁ おいで
さぁ おいで
『親』がいぬ ま に
さぁ おいで
みつからない ま に
さぁ おいで
『親』がいない いま のうち
さぁ
おいで
「『親』のいぬ ま に」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
右から巨大な物が木々をなぎ倒し、突進してくる。
盛大な音を響かせながら突っ込んでくるあたり、本能のみで動いている低能な種族なのだろう。
そちらに意識を集中させていると、今度は正面から草の上を這ってくる音が耳に届いてきた。
その音を認めた少女は、二つの音の接近してくる速さに合わせて木々の間を素早く飛び跳ねていく。
しばし気配を殺し、タイミングを見計らって木々の間から飛び跳ねると、それを待っていたかのように巨大な猪か牛のような異形の物と、巨大な鯰のような生物が別々の方角から、彼女の影を目掛けて躍り出た。
ヒラリと少女は空中で枝に捕まり、飛び出してきた猪の眉間目掛けて小さな足を叩き込む。
この程度ではダメージを与えることは出来ないが、注意をそらせることは出来る。
当然目の前に振ってきたものに、困惑した猪は飛び上がりながらも前足をバタつかせて頭を振る。少女がそこから飛び退いた瞬間、彼女を狙った鯰が勢い良く猪の頭部に食いついた。
獣の絶叫が辺り一面に響き渡った。
そして、巨体同士がぶつかり合う音と、牙をぶつけ合う音。
辺りに血の臭いが漂い始めた頃には、その場から小さな少女の姿は消えていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
辺りの様子を伺いながら大木の枝に腰を下ろし、少女は息を整えた。
(何なの?何なの?)
先ほどから感じる、異様な気配。
後から後から湧いて出てくる異様な気配を纏った見たこともない生物たち。
ここは、どこなのか?
少女は辺りを見渡した。
今腰を下ろしているこの大木すら、始めて見る種類の植物だ。
なぜ、このようなところにいるのか?
そして、奴らは何者なのか?
今のところ、爪も牙も使うに至ってはいない。
しかし、彼女の気配を察して本能のままに牙を剥き、突進してくる獣が後を絶たない。
彼女の体力も限界だった。
もう、どれだけここをさ迷っているのか分からない。
(助けてよ・・・・・メイコ姉。レン!)
感情が高ぶったせいか、彼女の気配が周囲にフラリと漏れた。
『ナンダアイツ?』
『ミタコトナイ魔物ダ』
『ナニモノダ?』『ナニモノダ?』
『キケンナヤツカモシレナイゾ』
『アブナイゾ』『アブナイゾ』
『タベタラウマイカモシレナイゾ?』
『ウマイノカ?』
『ウマソウダ』
『ツカマエロ』『ツカマエロ』
『コロセ』『コロセ』
周囲にあの正体不明な気配を感じ、少女は顔を上げた。
地面から、そして周囲の木々の間から異様な視線が彼女を射抜く。
少女は棒のような足を叱咤し、立ち上がった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
高い木々の間を3つの影が素早く移動していく。
先陣を切って木から木へ駆けて行く小さな影は、その動きが非常に荒々しい。
「リーン!!!」
その粗雑な動きに後ろを飛ぶ二人は眉を寄せ、厳しい顔つきで、その後姿を追っていた。
「メイコ殿」
彼の後ろを飛んでいた女の横で、男が何か言いたげに顔を向けてきた。
「レン!」
「リーン!!返事しろ!!」
必死に叫び続ける少年の後ろからの姉の言葉も聞こえないのか、全く反応はない。
普段の冷静で礼儀正しい彼らしからぬ姿だ。
「レン!」
「レン殿!」
男は一際大きく跳躍すると、少年の前に回りこみ、腕を掴んでその動きを封じた。
「!離してください!」
「待つでござる。良いですか、少し落ち着いて・・・」
「!落ち着け?落ち着けって何ですか!?」
「レン」
彼らに追いついた女は、二人の留まる大木の枝に降り立つと、男の掴む腕とは逆の手を掴み、少年に目線を合わせた。
「レン?」
「姉上・・・・」
姉の深い琥珀色の瞳にまっすぐに見つめられ、高ぶり続けていた感情に歯止めがかかる。。
まずは、息を。
ゆっくりと深呼吸をして、少年は目の前の二人の顔をまっすぐに見上げた。
それを確認した男は静かに頷くと、周囲を見渡しながら、口を開いた。
「ここはどこでござるか?」
「え?」
男の言葉に、少年は改めて周囲の気配を伺った。
女は意外ではなかったようだ。鋭い視線を周囲に巡らせまっすぐ立ち上がった。
その時、鳥のような絶叫が周囲に木霊し、烏のような、雉のような巨大な怪鳥が彼ら目掛けて突っ込んできた。
口を開ければ、恐らく3人共一飲みにできると思われる巨体だ。
素早く女は手の中に矢のような炎を顕現させると、一気にその怪鳥に向けて放つ。
全身に矢を喰らい、濁った叫びを上げながら空中で暴れる怪鳥に向かって、男は跳躍し、腰の刀を引き抜くと、空中で一刀両断した。
更に、枝から飛んだ少年は力を込めた木刀で怪鳥の首を狙い、尚も暴れるその巨体を一気に叩き落とした。
バランスを完全に失った怪鳥は地面に叩きつけられ、身体を痙攣させながら絶命していった。
何だ、あれは。
本当は、三人がかりで挑む必要もなかった。
だか、初めて感じる気配を纏った、見たこともない生物。
各々自分が触れた感触に、改めて怪鳥を見下ろし息を飲む。
気がつけば、周囲に漂う気配も今まで感じたことのないものだ。
再び少年は息を飲み、姉の居る枝に移動した。
「姉上、ここは・・・?」
「分からないわ」
女は留まってる枝の幹に手を掛け、注意深く見上げた。
「貴方たちは何なの?」
その言葉に呼応するかのように、木々がザワザワと揺らめいた。
自分たちが知っている森とは色も気配も違う森。
知らない者たちの気配の密集する力の集合体。
ここはどこなのか・・・・。
何なのか・・・・。
その時、少年は弾かれたように顔を上げた。
一拍遅れて、女と、彼らの元に戻ってきた男も顔を上げる。
「リン・・・?」
この気配は・・・。
「リン!!」
先ほどまで全く掴めなかった、少女の気配だ。
少年は再び目の色を変えてその枝から跳躍した。
少し遅れて、女と男も一気に飛び跳ねる。
既に少年の姿は木々の間を縫って飛ぶ影としか認識できないほどに、遠くのものとなっていた。
本気を出した彼の速さには、誰も敵わない。
「がっくん!」
「分かっております」
男も女も、ただ、彼が残した気配のみを辿りながら、全力でその後を追った。
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ご意見・ご感想
kokomono
ご意見・ご感想
こんばんわkokomonoです。
近々を次々に空目して小躍りしてしまいました。
前作、めちゃくちゃいい所で終わっていたので、続きないのかなーとずっと思っていました。
勇気を振り絞ってコメントして、本当によかった…!
削除なんてとんでもないです!
続き、楽しみにしています^^
2012/06/30 00:29:22
kokomono
ご意見・ご感想
はじめまして
このシリーズ大好きです!
続きがあるなら読んでみたいなあ
2012/06/28 21:01:48
イソギン
はじめましてイソギンです
この度は、メッセージを有難うございます!
まさか、このシリーズにこのようなお言葉をいただけるとは・・・・!
本当に有難うございます!!
ハローウィンからの続編の準備は・・・できているのですが、如何せん前作から雰囲気がガラリと変わる(ギャグ色が強くなります)+非常に長いシリーズになってしまい、次作を表に出すと後戻りができなることが分かってしまったので、どうするか悩んでいました。「YELLOW+?」も、何回も削除しようかと考えていました
ですが、kokomonoさんのお言葉で勇気をいただきました。
有難うございます。
近々に投稿してみようと思います
2012/06/29 02:01:59