再び現れたマッド・リズムに3人で立ち向かう事になったミク達は、苦戦を強いられていた。
「今日は3人しかいないのか」
 御影桜子(みかげ・さくらこ)は、3人しか来ないカナデンジャーに対して、いらだちと何かしらの不安を感じていた。
「狂音獣とあんたくらい、私達3人で十分倒せるわよ」
 スーツの一部が破損していたが、リンは強がって見せた。
「リン、行くよ」
「うん」
「ブラス・バズーカ!」「ブレイブ・ロッド」
 リンとレンが同時に武器を出す。マッド・リズムはすぐにレンの方に向いた。
「リン、いまだ」
「ツインズ・ショット」
「BPM50」
 レンの持つドラムスティックから、刃が放たれる。マッド・メトロンはすぐさまレンの方を向く。そして、今までのように、急に刃のスピードが落ち、マッド・メトロンはそれをかわした。

「口ほどにもない」
 そう言っていた桜子の真後ろからリンはバズーカを放つ。
「そこか!」
 桜子は鞭でリンの放った弾をはじき返す。そして、リンの体に鞭を巻きつけた。
「この減らず口を、黙らせてやる」
 電撃がリンの体を襲う。
「キャアアアア」
 リンの悲鳴が響く。
「リン!」
 レンはすぐに桜子に向けて持っているドラムスティックで攻撃しようと近づく。しかし、突然、高速で移動するザツオンに阻まれ、弾き飛ばされてしまった。

「リン、レン!!」
 ミクはすぐにザツオンに対して、ピアノグローブで攻撃を始める。だが、マッド・リズムの特殊な能力によって、動きがスローになり、ミクの拳はかすりもしない。そして、逆にマッド・リズムから反撃を受け、吹き飛ばされてしまった。激しく体を強打し、起き上がれなくなってしまった。
「……ルカ、早く来て!」


「まだできないのか? 3人はもう限界だ。早くしないと、やられてしまうぞ」
 カイトはルカに向けて声を荒げた。
「もう少しです……もう少し」
「カイト、とにかく今は、ルカさんを信じましょう」
 平静を装うメイコであったが、モニターに映し出される戦いの光景に、焦燥感を感じていた。
「メイコ、ちょっといいかな」
 カイトに呼ばれ、メイコはすぐにルカの部屋から廊下に出た。

「作戦の事だ。メイコ、覚悟は決めてくれたかな」
「……カイト、本当にあの作戦を実行するつもりなの?」
「一番確実なのは、それだと思う。確かに、リスクは高い。でも、成功すれば、確実にあの狂音獣を倒せる」
「だけど、それって……」
「少し痛い思いをするだけだ。どうと言う事はない」
 少し早口だったが、カイトはそういってのけた。
 その様子を、ハクは2人には見られないように廊下の奥で眺めていた。


「……どうすれば……」
 ルカは研究室の中で苦闘していた。どうしても、エネルギーをため込む核の部分が強化できなかった。
「このまま渡しても、何の意味もない。やはり、あの人でなければ……」
「入るわよ」
 ハクはそのままルカの研究室に入っていった。
「……ハクさん」
「所詮、他人の設計図通りに組み立てただけ。確かにあの子たちも、貴方も強い。それは、新型のヴォイス・エナジー・システムを使用しているから。そうでしょ」
 ハクはずばり言いきった。

「メイコ達の動きが鈍っていたのは、体力が落ちたからじゃない。単純に、貴方達の動きに合わせていたために、体力の消耗が激しくなっただけ。でも、新型のヴォイスエナジーシステムを作りなおすとなると、数年はかかる。そうなると、長期間、2人は戦えなくなる」
「……何をおっしゃりたいのですか」
 ルカはハクを見据えていった。
「それは、カナデンジャーの敗北を意味する。わかるでしょ? 今はよくても、その内、狂音獣が強化されたら、4人では負けてしまうわ。3倍のハンデがあっても2人と同じようにしか動けないんですもの」
「…………」
 現実を突き付けられ、ルカはがっくりと肩を落とした。

「メイコとカイトのメロチェンジャーを強化させたいなら、その場しのぎだけど、これを使いなさい」
 ハクはこの時のために作成しておいたヴォイス・エナジー・システムを手渡した。
「貴方達の使っているシステムには劣るかもしれない。でも、能力の基礎の部分、ヴォイスエナジーはメイコとカイトの方が貴方達よりはるかに上よ。これで、2人ともかなり楽になるわ」
「……ハクさん」
「バカね。手伝わないなんて言ったくせに……でも、苦戦する貴方達の姿を見ていたら、手を貸してあげたくなっちゃった」
 そう言って、ハクはルカに背を向けた。
「急ぎなさい。2人とも待ってるわよ」
「ありがとうございます」
 ルカは背を向けたハクに、そう言って、深々と頭を下げた。


「はじめの元気はどうした? やはり三人では無理だろうが」
 リンは、桜子の挑発にこたえるだけの力がなかった。大きく肩で息をし、桜子とマッド・リズムを睨みつけるのがやっとであった。
「ルカ姉が……来るまでは……」
 どうにか立ち上がったレンはブレイブ・ロッドを構えたが、どうにも腕に力が入らなかった。
「ルカはきっと来る……だから……」
 ミクもあざだらけの体で立ち上がる。だが、もはや戦う気力も尽きようとしていた。
「とどめだ!」
 桜子は鞭を3人に向けて振り下ろす。
 キィィン
 金属音の後、桜子の手から鞭が弾かれる。

「何!?」
 鞭を持つグリップに、矢が突き刺さっていた。
「みんな、待たせてごめんなさい」
 まず、ルカが姿を見せた。手にした鉄扇で、近づいてきたザツオンを叩きのめした。
「ルカ姉! もうちょっと早く来てよ!」
 ルカの姿を見て、リンが元気を取り戻したかのように言った。
「6人そろえば、貴方達なんかすぐに倒せるわ」
 メイコは剣を振り、近づいてくるザツオンを薙ぎ払う。
「ごめん、少し時間がかかったけど、その分は取り返させてもらうよ」
 カイトは再び矢を放ち、今度はミク達に近づいてきたザツオンを射ぬく。
「じゃあ、行くよ」「OK」「わかりました。メイコさん」
 メイコ、カイト、ルカはそれぞれ確かめるように言った。勢いよく左手を突き出すと、メロチェンジャーに手を添えた。

「コードチェンジ!!」
 3人は叫び声と同時に光に包まれ、変身を終えた。
「強くなった私達を見せてあげるわ」
 メイコは剣を手にザツオンを切って捨てる。
「さあ、こちらに来なさい」
 ルカはハープを奏で、美しい声を響かせる。その声に引き寄せられるように、ザツオンが近づいてきた。そして、声が途切れるとともにザツオンは消滅した。
「……いざ、覚悟!!」
 カイトはマッド・リズムに向けて弓を引いた。それに気がついたマッド・リズムが腰から延びる棒をゆっくりと動かし始めた。

「BPM50」
「今だ! メイコ、ミク、リン、レン!!」
「わかったよ」「うん」「行くよ」
 カイトの言葉の後、4人が武器を手に走り始めた。カイトは正面に立ち、マッド・リズムに向かって弓を引く。
「行け、ウィンド・アロー!」
 当然、カイトの放った矢はゆっくりと進み始める。そして、桜子の鞭がカイトを襲う。
「作戦通りだ……」
 カイトは飛んできた鞭をかわす事もなく、攻撃を受ける。

 その時、四方から狂音獣をめがけて攻撃が始まった。
「ソング・ウェイブ」
「キーボード・グローブ」
「ブレイブ・ロッド」
「ブラス・バズーカ」
 メイコ、ミク、リン、レンの4人が同時に攻撃を仕掛けた。集中攻撃を受ける形となったマッド・リズムは全員の動きを遅くしようと試みたが、対応しきれなかった。
「しまった」
 完全にカイトに気を取られていた桜子やザツオンは慌てて護衛をしようとしたが、もう遅かった。

 4人の攻撃をまともに受けたマッド・リズムはそのまま倒れ、大爆発を起こして、消滅した。
「成功しましたね」
 ルカは桜子の攻撃を受けて倒れていたカイトに手を差し伸べた。
「……自己犠牲ってのも、結構きついけど、こうした方が確実に倒せるんでね」
 カイトはルカに支えられ、立ち上がった。

「……でも、何でこんな作戦考え付いたの?」
「あいつは、スピードを操ろうとするときに必ずその対象の正面を向いていただろ? だから、一方向の物しかスピードを操る事が出来ないんじゃないかと思ってね」
「さすが、カナデンジャーの参謀ね。でも、うまくいかなかったらどうするつもりだったの?」
「……その時はその時さ。でも、ルカさんが改造してくれたおかげで、だいぶ体が軽くなったみたいだ」
「そうね。やっぱり、貴方が科学者ってのは、本当だったのね」
「いえ、大したことは何一つしてません」
 ルカは謙遜ではなく、正直に自分の気持ちを話した。


「ダイオンリョウサイセイ」
 どこから、不気味な声が聞こえた。全身黒づくめのロボットがマッド・リズムの亡骸にビームを浴びせる。すると、そこからマッド・リズムが巨大化したのだ。
「また来たわね。ルカさん、あれは出せるかしら」
「ハクさん準備はいいですね」
「いつでもいいわよ。このために私はここにいるみたいだし」
 メロチェンジャーを使ってカナデベースにいるハクと連絡を取る。
「カナデモービル、発進」
 ハクはパソコンを操作すると、次々とカナデモービルが発進していった。

「みんな、準備はいいかしら」
「いつでもいいぜ!」
 レンの元気のよい声が響いた。6人は心を一つにしていく。そして、合体が始まった。
「完成、共鳴合体、シンフォニー6!」
 巨大化したマッド・リズムは再び振り子を大きく左右に振り、こちらの動きを鈍らせようとする。
「そうはいかないぜ! ツインショット」
 両手からバルカン砲が放たれる。しかし、狙ったのは、マッド・リズム本体ではなく、その足元だった。驚いた拍子に、転んだ狂音獣に対し、左足から放たれたランチャーミサイルで集中攻撃を加える。
「今だ、あいつの振り子の棒をへし折れ!」
 操縦主であるレンの声に反応したロボットは、そのまま、マッド・リズムの振り子を握り、そのままへし折った。

「これでもう何も出来まい。とどめ」
「了解!」
 メイコは目の前にあるマイクに向かって歌い始めた。それに合わせるように5人が歌を歌う。その声に呼応するかのように、背中のスタンドマイクが光響剣に変わり、シンフォニー6の右手に降りてきた。
 6人の歌声が共鳴し、ソングエナジーが最高潮に達する。そして、剣が輝き始めた。

「……いくよ、Gクリフアタック!!」
 メイコの合図で剣がト音記号の軌道をたどり、そのまま、マッド・メトロンを一刀両断する。やがて、マッド・メトロンは袈裟切りにされ、上半身がずり落ちるように地面に落ち、大爆発を起こした。
「やった!!」
 この前と違いメイコは隣にいたカイトとルカにハイタッチをした。ようやく、マッド・リズムを葬る事に成功し、体全体で喜んだのだった。


「ルカさん、ありがとう。貴方のおかげで、私達も能力が上がったし、狂音獣も倒す事が出来たわ」
 メイコはルカに深々とお辞儀をした。
「いえ……私は、何も……」
「でもすごいなぁ。美人でスタイル良くて、頭もよくて……」
「…………」
 カイトの言葉に、ルカは少し顔を曇らせた。
「さ、おなかもすいたし、早く『オクトパス』に戻ってご飯にしようよ」
 リンはすぐに走り始めた。
「あ、待てよ」
「2人とも、おいていかないでよ」
 リンにつられ、ミクとレンも走り始めた。
「食いしん坊ね、あの子」
「それに、3人とも元気いっぱいだ」
「それが、あの子たちのいいところなんですよ」
 元気よく走り始めたリン達につられるように、大人組の3人は次の戦いに備えるべく、『オクトパス』へと帰還するのだった。
                            つづく

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

光響戦隊カナデンジャー Song-07 Power up MEIKO Bパート

カナデンジャー第7話です。
内容はコラボにアップした作品と同じです。

閲覧数:79

投稿日:2013/05/28 23:43:22

文字数:4,868文字

カテゴリ:小説

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