食事を済ませ、私は兄の手伝いをすることにした。兄に一人だと、いつまで経っても終わりそうにない。
「兄様、早く布を敷いてちょうだいな」
「わかったわかった」
兄が敷いた布の上に本を並べる。これでようやく後半分。
「そういえば兄様、マスターの部屋にあった本は日干ししないの?」
聞いたところ、ここにある本は全部兄様の部屋にある物らしい。
「ああ…うん」
本を並べる作業をしながら兄は頷いた。
「僕のだけでもかなりの量だし、マスターのはまた今度にしようと思って」
「そうなの」
確かに兄の持っている本の量は半端ない。自ら「本の虫だから」と言うだけはある。
「でも、これはマスターのでしょう?」
一冊拾い上げて、私は言った。随分古い魔術書だ。表紙は色褪せて元の色がなんだったのか分からなくなっている。「あ!」と顔を上げて兄は呪文を唱えた。途端本が私の手を離れて兄の元へ飛び去る。
「嘘はいけないわね、兄様」
「……いや、勉強しようと思って…」
本を置きながら兄は続ける。
「力を使いこなすには、力を知っておかなおかないと」
「そんなの小さい頃にマスターに散々叩き込まれたじゃない」
溜息を吐きながら私は言った。「今更すぎるわ。今私達がするべきことは、力を“知る”ことじゃなくて“使う”ことじゃなくて?」
「子どもの頃教えられたことが全てだとは限らないだろう」
顔を上げ、兄は言った。「“使う”ことばかりに執着していたら、身を滅ぼすよ」
「兄様は臆病ね」
「君は慢心すぎる」
無言で私達は睨み合った。先に根負けしたのは兄。目を逸らし、本を置く作業を再開する。それを見て私も別の本を手に取った。
よくあることだ。私達の一番の違いは、“魔術”の捉え方。兄はマスターの教えを守り、私はマスターの教えに従わない。それは理由が分からないというだけではなく、自分の力を試したいという欲求もある。けれど、それは叶わない。
マスターは私たち双子に魔術を掛けた。この森から出られぬ呪いの言霊。森を出れば私達の命は尽きる。
『それがお前達の為なんだよ』
昔森を出ようとした時、マスターはそう言った。私は腕の傷を兄に治してもらいながら、マスターの言葉に頷くしかなかった。
でも、本当は訊きたかった。
どうして、森を出てはいけないの?
どうして、魔術を使ってはいけないの?
どうして、どうして。
答えはもうもらえない。
或る詩謡い人形の記録『言霊使いの呪い』第二章
今回は短め。
長編ってどこで区切るべきか分からなくなってしまうのは…私だけですね、すみませんorz
第三章はもうしばらくお待ち下さい。
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