始まりは、別れ
冷たい雨の降る街の片隅で
二人の若い男女が、とある店の軒下に雨から身を隠すように立っていた
重たい沈黙を破ったのは、青い髪の青年
「君に、贈り物があるんだ。貰ってくれる?」
その言葉に、少女は目を見開く
「え?いつのまにそんな……」
こんな生活苦の時
そんなお金などなかっただろうに
「気に入ってくれるといいんだけど」
そう言って少し照れながら、青年は少女に髪飾りを手渡す
「あ……」
ずっとずっと以前
通りがかった店で見つけた、綺麗な装飾品
赤青緑……色とりどりのそれが並んでいる様は、目を奪うには十分で
隣を歩いていた彼はそれを知っていて、覚えていてくれたのか……そう思うと胸に込み上げるものがある
「君には緑だと思ったんだけどね……でも緑だと、その綺麗な髪に隠れてしまうから」
そう言って淡い苦笑を浮かべた
少女は苦笑を返す
その理由で選んだのがこの色なのか
「相変わらず、感性のずれた……でも、嬉しい」
呆れるものの、そんな所も愛しいとばかりに髪飾りを見つめる少女
しかし、その表情もすぐに陰ってしまう
「もう、行って……しまうんだね」
「約束を、守れなかった」
――ずっと、一緒だと誓ったのに
「仕方ないよ……だって……」
仕方ない?何が?
そんなこと微塵も思っていない癖に
仕方ないで済ませられるの?
済まさなくてはならない
二人のために
「…………。必ず、再会を」
「今度は、守ってね。その約束」
青年は返事の代わりに、彼女の緑の髪に髪飾りをつけてやる
碧い蝶の髪飾りを
「やっぱり蝶が似合うと思った」
「色は映えないでしょ」
「ん……でも、君の、ミクリの色だと思ったんだ」
「……、ねぇ――」
「もう、行かないと」
伸ばしかけた手を引っ込める少女
その顔には、ぎこちない笑顔
「……待ってる」
もっと顔を見ていたいのに
「うん」
「ずっと、待ってるから」
世界がぼやけてくる
「うん」
「生きて……帰ってきて」
滲んで、見えない
「うん。ミクリも、気を付けて」
もう声は出なかった
口を開けば、嗚咽が漏れてしまう
少女は涙をいっぱいに溜めて、頷いた
青年は言いさした口を閉ざし、踵を返す
これ以上この場にいたら、離れられなくなる
本当は今すぐこの手で抱きしめたい
その思いを振り払い、歩きだす
青年はそのまま振り返ることなく、街中へと姿を消した
「カイリ……」
青い髪が見えなくなっても、少女はその場から動かない
傘を差さずに
重い空の下
「カイリ……」
彼の、海理という名を呟きながら
「どうして、貴方が……」
この国を、時代を恨みながら
運命を呪いながら
「必ず、必ず帰ってきて……」
少女――海玖理は、しばらくその場を動くことはなかった
若い、たった二人ぼっちの彼らを引き裂いたのは、親でも地位でもなく、戦争
――ただ、静かに暮らしたかっただけなのに
そんなささやかな願いを叶えることは、たとえ時代が違っても、この二人には許されないことだった
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4/4 BPM133
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君は知らんふり
目合わないのいつから
君は知らんふり
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神谷朔
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次の二人は 街の隙間で...コノハの世界事情 歌詞
じん
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