【第九話:とある社員へ】

 めいこさんは、小包を抱きしめたまま、しばらく泣いていた。

 「開けてみてください。」

 いい加減じれてきたのか、レンが言った。
レンには、中に何が入っているのかも、分かっているのかもしれない。

めいこさんはこくりと、ひとつ頷くと、震える手で小包を開けだした。

 少しずつ。

 「!!!……っ…」

 めいこさんにはわかったのだろう。
中身が何であるかが。

 残念ながら私とぐみのいる、ここからだと角度的に見えない。

 「…めいこさん…、それ…っ」

 瑠花姉も驚いて目を見開いている。

 彼女が中から取り出したもの、それは。

 上品な濃い青色をした、小さな箱だった。

 これで分かった。
私にも、ぐみにも。
かいとさんは、何のためにそれを今日、めいこさんに贈ってきたのか。

 「…今日、何かの記念日ですか?」

 レンがきくと、素直に頷く。

 「……つきあ…って、さん……ねんの……。」

 「今日が…3年記念…。」
おもわず、声が出たのはぐみだった。

 私も出そうになったけど。

 「……え!?…れ、レンくん!?」

 不意に後ろから声がした。

 ちょっと長めの髪の男の人。
片手には、ペットボトルのジュースを持っている。

 「…ああ、うちの社員か。お前さんも。」

 そういうと、めいこさんがバッと、顔をものすごいスピードであげた。

 「ええ!!?ど、どうして、レンくんが…!?」

 「そんなことより、その中に、まだもう一つ何か入ってるんじゃないのかい?」

 突然、めいこさんの腕の中から、小包が消えた。

 ……ぐみだ。

 「…手紙……。」

 そう言ってめいこさんに渡す。

 めいこさんが読みだすと、みんなそこに集まった。
もちろん私も。


     *


 めいこへ

 ただいま、ってもう言ってるかな。
僕が帰ってくるほうが早かったら、もう言ってるね。

 ところで、僕がめいこに手紙を渡すのは初めてなんだけれども…。

 なんだか、緊張するなぁ。
正直すごい恥ずかしいし、照れくさい。

 めいこは勘がいいから、ていうか指輪が一緒に入ってる時点で誰でもわかるんだけど、僕が言いたいことがあるってこと分かってくれるよね。

 本当は、口で言いたい。

 でも、僕の性格上、たぶん言えないと思う。

 10日間めいこに会えないだけで、すごい…寂しかった。
いや、ホントに、本気で。

 えーっと。

 僕は、だから、めいことずっと一緒にいたいって思ってる。

 疑ってんじゃないだろうな。
ホントにホントにホントだから。

 帰ったら、もう一度ちゃんと言う。
たぶんめいこのことだから、僕が帰ってくる日は、すっごい綺麗な格好して、迎えに来てくれるんだろ?

 だから、言いたいことをまとめたら…


 僕と、結婚してください

      かいと


      *


 それを読み終えた、その場にいたほぼ全員が涙していた。
レン以外は。

 カイトさんの文章はあまりに自然体で、むしろ残酷に見えるほどだった。

 それでも、めいこさんは嬉しいような、悲しいような、そんな顔をして手紙を見つめていた。

 「……はい……っ」

 そう呟いたのが、はっきり聞こえた。

 「めいこさん、私ぐみっていいます。今日瑠花姉も一緒に私の家でパーティーしましょう?プロポーズされたんだから。」

 ぐみが、めいこさんの顔を覗き込んで、言った。

 「……うん…。」
そう、わらった。

 どうしてみんな、そんな風に接することができるんだろう。

 私はどうしても、人の恋に関わってしまうと、思い出しそうで怖い。

 思い出せないし、思い出したくもない。
それでも、レンにそれに近い感情を持ってしまうのはどうしてだろうか。






 いつかもう一度恋ができるなら、彼女みたいにわらうことはできるだろうか…。
 


 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

憂鬱少女と陰日向

うーん、これは…「めいこさん篇」が完結ということでしょうか?

あ、まだまだありますがね。
ネタはww

でも文章にできるかは、不安です。
とても。

閲覧数:121

投稿日:2012/07/04 14:38:44

文字数:1,648文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    めーちゃんは、いつも強い
    ものによっては怪力だったり……
    お酒を大量に飲んでも全然大丈夫だったり……
    みんなをまとめるリーダーてき存在だったり……
    辛いことがあっても、周りには笑顔だったり……

    いろんな強いがあるけど、カイトの前では弱いのがめーちゃん

    それがかわいくて、それが素敵で、それが凛としていて、それがめーちゃん
    だから、カイトはめーちゃんが好き
    だから、皆がめーちゃん好き

    やっぱり、めーちゃんだな!!←何が言いたかったのか…

    2012/07/18 00:44:49

    • イズミ草

      イズミ草

      そうですよね…。
      強いから、弱いから、優しいから、厳しいから、笑顔だから、
      かわいいから、カッコいいからこそ
      みんなから慕われているんですよね…。

      カイメイが大好きなのですww
      雰囲気が

      やっぱりめ―ちゃんですね!!
      わかりますよ、なんとなくwww

      2012/07/18 18:26:32

  • つーにゃん

    つーにゃん

    ご意見・ご感想

    お久しぶりです、覚えているかどうか分かりませんが、椿姫です。

    来れなくなった理由は二つあります。
    一つは、テスト期間中だったこと。
    もう一つは、パソコンが故障中だったこと。

    カイト、良かったね、手紙届いて。
    手紙じゃなかったらきっと、遺体から出てくるんだろうな…
    指輪が…

    ちなみに、名前が「椿姫」なのは、お嬢様幼稚園だったからじゃないです。
    ただ単にオペラ「椿姫」が好きだからです!!
    それと、私の家はそんなにお金持ちじゃないです。
    お父さんが社長なだけ。

    2012/07/04 18:04:01

    • イズミ草

      イズミ草

      ちゃんと覚えてますよ!!
      忘れるわけがありませんよお!!なんてったて恩人並みに恩を感じるお人ですからね!!w

      あ、私もですw
      テストいやですよねww
      まあ、バリバリ投稿してましたがwww

      ぁ……。
      なんてさびしいんだ。
      そういう展開のほうが切なかったかもですね…。

      「椿姫」名前は知ってるけど、話はちゃんと知らないなあ。
      そういえば…。
      オペラなんて、授業で「蝶々夫人」と「アイーダ」ぐらいしか……ww

      2012/07/04 19:03:40

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