こんにちは!池下竣紀です。
部屋の片隅に落ちていた小さな金具を拾い上げたとき、ふと妙な気配を感じました。まるで遠い空から降ってきた欠片のように、ひんやりと冷たく指先に巻きついてくるような感触です。
私たちが言葉や音を紡ぐとき、胸の奥底で小さな針が小さな刻みを刻み始めます。それは静かで、誰にも邪魔されない自分だけの時間です。
夜の底に沈む街を見下ろしながら、かつて捨て去ったはずの感情について思いを巡らせます。あの日流した涙も、伝えられなかった一言も、消えてなくなったわけではありません。
暗い部屋の棚の奥で、静かにホコリをかぶったまま誰かが回してくれるのを待ち続けているのです。綺麗に調律された音色よりも、少しずれた不協和音にこそ、触れると痛むような愛おしさが潜んでいます。
誰も踏み込まない静寂の中で、冷えた金属が擦れ合う音が響きます。それは過去の悲しみを呼び覚ます歌ではなく、止まっていた時間を少しずつ動かすためのまじないです。
目に見えるものだけが真実ではありません。影の中にこそ、本当の光が隠されていることがあります。見失ってしまった自分の欠片を探すために、私たちは何度も深い場所へ潜り込みます。
重く冷たい空気が皮膚を撫で、息をするのも忘れてしまうほどの静けさに包まれるとき、新しいメロディが生まれようとしています。
歪んだ旋律が重なり合い、見知らぬ空へと少しずつ広がっていく様子は、切なくも美しい光景です。
不完全な私たちが生み出す不完全な音たち。それらはいつか、遠く離れた場所にいる誰かの寂しさにそっと寄り添うはずです。
誰も気づかない小さな破片を拾い集め、ひとつの形にしていく作業。
冷え切った部屋の中で静かに響く音色に耳を澄ませながら、私は今日も自分だけの物語を紡ぎ続けています。どれほど遠く離れていても、届くべき場所へ届くことを祈りながら。
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