ミクはわかぎ園から帰ってきてから、ずっと部屋にこもってベッドで横になっていた。帰ってから考えていたのは雅彦の過去についてである。話の内容については、わかぎ園に行く前にミクはひどい話を聞く覚悟はしていたのだが、実際に神谷から聞いた話がミクの想像以上にひどい話だったので、ミクのショックは非常に大きく、そのショックが家に帰ってからも収まらなかったのだ。そのせいで夕食も食べていない。
 (雅彦さんにあんな過去があったなんて…)
 ミクが部屋の中にこもってからずっと、神谷の話していた内容が頭の中に渦巻いていた。ミクには世の中にそこまでひどい人間がいたということが驚きであり、またショックでもあった。そのような悪意のある人間が雅彦の親族におり、そのせいで雅彦が人間として扱われていなかったというのは、KAITOの言った通り、聞くに堪えない話であった。そして、雅彦の過去と自分の過去を対比させると、自分がいかに周囲の人々、そして環境に恵まれた存在であったかということを認識せざるを得なかった。

 「…ミク、大丈夫かしら…」
 一方リビングにはMEIKOとKAITOがいた。テーブルの上には夕食をとっていないミクのために夕食の残りが置かれている。
 「ミクにはショックの大きい話だったね。やっぱり、一緒に話を聞きに行くのは止めるべきだったのかな」
 KAITOが答える。二人とも神谷の話に確かにショックは受けていたのだが、雅彦の親族のような悪意ある人間の存在を認識していたので、ミク程のショックは受けていなかった。この辺りは、人生経験の差だろう。
 「私たちがミクたちのためを思って色々と頑張ってきたからこそ、神谷園長がおっしゃっていたような酷い人間やアンドロイドからミクたちを遠ざけることが出来たけど、そのせいでああいう話には全く耐性が無い子になってしまったわ。特にミクは純真だからショックは大きいでしょうね」
 「そうだね。ミクはそういう悪意の存在を知ってしまった。そこから立ち直るのはミク自身が自分で気持ちを整理して何とかしなきゃいけないだろうね」
 「そうね…」
 そう言って、ミクの部屋の扉を見つめる二人だった。

 (…でも、私は雅彦さんの過去を知ってしまった。雅彦さんを何とか出来るのは、きっと私しかいないのよ)
 相変わらず部屋にこもっていたミクだったが、先程とは考えが変わっていた。先程まではただショックを受けているだけだったが、今はそこから何をすべきか考えるようになっていた。雅彦のために何かをする、それが自分に課された使命であると考える様になったのだ。しばらく何かを考えていたようだったが、考えがまとまったらしい。
 (…うん、これで上手く行くか分からないけど、やってみないと)
 決心したミクはベッドから起き上がると、部屋を出た。そしてリビングに向かう。リビングにはMEIKOとKAITOがいた。
 「MEIKO姉さん、夕食、残ってる?」
 「ええ、残ってるわよ。今から食べる?」
 「うん」
 「それじゃ、温め直すわね」
 ミクの何かを決意した表情に、二人とも、心なしかほっとした表情をしていた。
 「…ミク、大丈夫かい?」
 心配そうにKAITOが尋ねる。
 「MEIKO姉さん、KAITO兄さん、二人に心配かけてごめんなさい。でも、大丈夫だから」
 ミクの目には、意志の強さが戻っていた。その目を見て、MEIKOもKAITOも安心した。

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初音ミクとパラダイムシフト1 外伝2 家族 9節

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投稿日:2016/11/30 22:49:43

文字数:1,430文字

カテゴリ:小説

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