今日は12月27日。そう、俺とリンの誕生日。動画投稿サイトには沢山の動画が、イラスト投稿サイトには沢山のイラストが投稿され、俺達を祝ってくれた。俺達に関わっている人のブログやホームページ、掲示板やSNSなんかも、お祝いの言葉で溢れている。マスターからプレゼントも貰えたし、こんな日はやっぱり、俺達は愛されているんだなと実感する。
「…すごいねぇ、レン」
 リンはマスターのパソコンのモニターを見ながら呟いた。鏡音誕生祭と呼ばれる今日のネット内は文字通りのえんやわんやのお祭り騒ぎだ。時間と才能の無駄使いだと思えなくもないが、有り難いことだ。無駄使いといってもそれらを俺達に費やしてくれるのは、やっぱり嬉しい。
「ねぇ、レン」
「ん?」
 リンはモニターを凝視したまま、俺を呼ぶ。心なしか沈んでいるようにも見える。沢山祝われて、不快に思うことは何一つないだろう。俺がどうしたのか聞くより先に、リンは愚痴を零した。
「みんなは誕生日にいっぱいプレゼントくれるのに、結局サンタさんは何もくれなかったね」
 2日前の12月25日の朝、リンはサンタからのプレゼントをそれはそれは楽しみにしていた。しかしいくら探してもプレゼントは置かれていなくて、リンは酷く落ち込んだ。リンが拗ねて泣いてしまったものだから、兄や姉達が慌ててプレゼントを買いに走った。
 勿論リンはそれに感謝したけれど、サンタから貰うことに意味があるらしく、機嫌を損ねたままだった。それにしても、まだ引きずっていたのか。レンだってくれたのに、と言いながらペンダントを触る。
「欲張りなのはわかってるけど…やっぱり人間の子にしかくれないのかな?」
 そんな今にも泣きそうな顔をされても。サンタ、いるなら何故来てくれなかったんだ。それか俺が代わりに用意すればよかったのではないかとか…もっと早くに気付けよ俺。
「レンは嫌じゃないの?」
 どうしたものかと頭を掻いていると、リンはそう尋ねてきた。
 俺としてはサンタが来るという考え自体なかったものだから、リンみたいなショックはなかった。来てくれれば嬉しいのだろうけれど、来なかったからといって特別悲しいわけでもない。プレゼントなら今日に貰えるし、どちらかといえば誕生日のほうが楽しみだった。
 実際サンタがいるのかどうかすら俺は怪しいと思うのだが、それをリンに言っても「いる!」と反論してくるのはわかりきっているから言わない。
 結論から言うとサンタが来なくても嫌じゃなかった。ただ、例えそれが本音だとしても、リンは同意してほしくて聞いてきたのだろうから、果たして何と返せばいいのだろう。
「…レン?」
「あぁ、ゴメン。まぁちょっと残念だけど…」
 曖昧な返事をするとリンは「だよね…」と言ってまたモニターを見つめる。
 折角の誕生日だというのに何だか調子が狂う。いつも元気なリンが沈んでいるとこちらまで気分が沈む。
 サンタのあほう、と心のなかで毒づいて、俺はゲームを手にとる。マスターや兄姉はパーティーの準備をしてくれているらしいし、この微妙に重い空気の中で気分を紛らわすのにゲームはぴったりだと思う。
 敵が出てくる。必殺技を使って倒す。弱い。前言撤回、全っ然楽しくない。すぐに俺は電源をきった。
 リンはというと食い入るようにモニターを見つめるままで、俺達の誕生祭動画を見ているのかと思いきや、リンが見ているのはクリスマス動画。
 こりゃ重症だな。…笑ってくれないかなぁ、リン。
 これでは誕生日が台無しだ。折角デートもしたのに、帰ってきてクリスマス用の靴下を見るなり、リンはパソコンに向かってしまった。でもリンが悪いわけではないし、どうしようもないことだ。だから余計に質が悪い。
 段々腹が立ってきた。誰にって、俺に。こんなときくらい慰めてやれよと思いつつも、言葉が出てこなくて二の足を踏む。リンは俺にとって誰より大切なのに、何もしてやれないことが悔しい。
 そう、リンは誰より何より大切。双子で、姉で、鏡で、結局の関係はよくわからないけれど、今日で生まれて二年。一緒に唄って、一緒に笑って、一緒に怒って、一緒に泣いて、そうやって過ごしてきた日々は俺にとってかけがえのない宝もの。
「…リン、やっぱり俺、サンタこなくてもいい」
 動画の一時停止ボタンを押して、リンは腑に落ちない、という顔で俺を振り返る。
「…なんで?」
「だってさ」
 俺は今幸せだから。多分もう貰ったのだと思う、一生分。聞けばリンに俺をつけるという案は一度没になっていたらしい。もしかしたら俺は生まれていなかったかもしれない。それを考えると、リンと今一緒にいられることは奇跡に近いことだと思う。その奇跡はサンタがくれたものにしろ、そうでないにしろ、かけがえのないもので。
 これからもずっとリンといるだろうし、だったらもうサンタは来なくても一生分貰ったと思えば何てことはない。俺はリンが大好きだから一緒にいられるだけで幸せで、リンには感謝しなくてはと思う。
「…だからリン誕生日おめでとう。一緒にいてくれてありがとう」
 俺が思うことを全て語ると、リンはしばらく呆然としたあとに笑ってくれた。いつもと同じ、いや、それ以上の笑顔。やっぱりリンは笑っているときが一番好きだ。
「そっか…サンタ、来なくていいかも」
 俺はほっと胸を撫で下ろす。リンが笑ってくれてよかった。一年に一度の誕生日なのだから、笑ってくれないと。
「ありがと、レン。大好きっ!!」
 リンは俺に抱き付く。温かくて柔らかくて、やっぱりリンは気持ち良い。…別に変なことなんて考えていません言い訳じゃありません。でも昼にキスまでいったんだからさ、ていやいやダメだ落ち着け俺。
 せめてこのままずっとこうしていたいけれど。コンコンとドアをノックする音がそれを許してはくれなかった。兄姉達やマスターに見られるのはゴメンだ。リンに降りてと言えば、頬を膨らませて俺に抗議する。
「やだ! レンはあたしのこと嫌い?」
「そうじゃなくてっ!」
 ドアの向こうから、俺達を呼ぶ声がした。その声の持ち主はよりによってメイコ姉。ルカ姉やカイト兄ならまだしも、メイコ姉にこんな状況を見られれば確実に冷やかされる。入るわよ、という声とともにメイコ姉は部屋に入ってきた。マズい。
「パーティーの準備できたわよ」
 リンが俺に抱き付いているこの状況を何とも思っていないようにメイコ姉は言うものだから、俺は兎に角助かった、と安心する。…メイコ姉がそれほど甘くないことくらい知っていたはずなのだが。
「あら、レン。リンが機嫌直してくれてよかったわねえ。何を話してあげたのかしら」
「え…」
 ダラダラと生暖かいものが背中を伝う。嫌な予感しかしない。このメイコ姉の楽しそうな笑顔ほど怖いものはないのではないだろうか。
「奇跡ねえ。しかもリンのこと大好きなんですってね。よかったわね、リン」
「うんっ!」
「…っ……!」
 まさかの追い討ち。
 メイコ姉のニヤニヤとした笑顔と、リンの純粋な笑顔。同じ笑顔でここまでかわるとは。
 明らかに聞かれていた。それも話の内容をほぼ全て。逃げ道を探しあぐねて、メイコ姉を見てみれば魔王の微笑みは消えていなくて。
 ――奇跡に近いと
 ――リンが大好きだから
 ――一緒にいられるだけで
 うわ、俺は何てことを口走ったんだ。恥ずかしい、ていうか恥ずかしいどころの騒ぎじゃない。頼むから時間よ戻ってくれ。いやでも時間が戻ればリンはいじけたまま、てそれはダメ。
 てか何? 奇跡、て。リンはそれで喜んでくれたからとりあえず良しとして、いや別に良くないけど。出会えたのが奇跡に近いって何!? 俺はうさん臭いどこかのホストか! 自分で思い出して寒気がする! 悪い意味での鳥肌がたつっての! うわ止めろ数分前の俺!!
 途端に寒気と羞恥心に襲われて、俺は膝を抱えてしゃがみ込んだ。リンが俺の前に座る気配がして、それでも後悔と羞恥にさらされている俺は顔を上げられなかった。あー、かっこ悪…。
 別に格好をつけたくて言ったわけじゃないし、リンといられて幸せだと思うのも本当だ。悔いるとすれば自分のボキャブラリーの少なさか。違う言葉でリンに話していれば、こんなことにはなっていなかったのかもしれない。
 元はと言えばメイコ姉が原因じゃないか。知らぬが仏という言葉もある。いや、もしメイコ姉が言ってくれなければ、俺は気付かないままに自己満足のような寒い台詞を吐いていたのかと思うと、まだ良かったのか。
 そのメイコ姉はクスクスと笑って部屋を出る。早くおりてきなさいね、と言いながら。こんな状態の俺に皆のところへ早く行けというのかこの悪魔。
「レン…?」
「……何…」
 リンは俺の頭を撫でる。泣いている幼い子をあやすように。
「なんか、よくわかんないけど…あたしは嬉しかったよ?」
 何だこの状況は。つまりは先とは真逆か。リンが俺を慰めて頭を撫でて。
 …て俺慰められてる側? しかも頭を撫でられて。それって。
「…リン」
「何?」
「それ余計にハズい」
「え!?ごめんねレンっ!」
 何だかもう俺のささやかな男のプライドはずたずたになった気がする。しかもリンは頭を撫でるのを止めようとしない。止めてと言ってもリンはやだと即答する。
「だってレンの髪さらさらで気持ち良いんだもん」
 髪がさらさらだって男が言われてもそれほど嬉しくない上に、これはあまりにも恥ずかしいから止めてほしい。
「あたしだってさっき恥ずかしい思いしたんだから。おかえし」
 リンは手を止めない。つまりは嫌がらせか畜生。恥ずかしい思いをした、て言っても、抱き付くのはリンからしてくるくせに、キスは恥ずかしいなんてその境界はどこだ。
 ただ、こうやって撫でられるのは、恥ずかしいけれど、それでも悪い気はしないかな。…なんて、そんなの。

 言ってあげないけど。



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

続・12月27日【鏡音誕生祭2009】

こんばんは、ミプレルです。リンレンおめでとうー!! 結局パーティーまで入らなかったよ! ミク達出番なくてごめんね!
実は昼のデートより前にこちらを書いたので(ぶっちゃけクリスマス前に書き始めた)、リンの性格が違う気がします。でもボカロってそこが良いですよね。公式の性格設定がないから全てこちらの妄想で好き勝手できますし。…言い訳じゃないんだ。
先のではリンが恥ずかしがっていたので、こちらはレンなのですが…レンより私がハズいよ\(^0^)/ うわああぁぁぁああorz←

兎にも角にも、読んで頂いてありがとうございました。感想、アドバイス、誤字脱字の指摘等、お待ちしております。
リンレン誕生日おめでとうー!! 何回でも言います、2周年おめでとうー!! 声も見た目も設定も(鏡でも双子でも姉弟でも兄妹でも恋人でも幼馴染みでも)もう何から何まで大好きだー!!!←

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閲覧数:433

投稿日:2009/12/27 20:10:19

文字数:4,087文字

カテゴリ:小説

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  • 七瀬 亜依香

    七瀬 亜依香

    ご意見・ご感想

    こんにちは、いつもお世話になっとります七瀬です。誕生祭…間に合ったんですね…いいなあ…(遅刻組←
    で、感想ですが…ミプレルさんちのリンレン嫁にしてもいいですか?つか襲わせt(黙れ
    何、何なのこの理想の双子は?!甘えた純情なリンも一人青春街道爆走中なレンも可愛いいいっはあはあ(自重しろ サンタが来なくてしょんぼリンとかキザ台詞に悶えるヘタレンとかちょ…おま…!どれだけ萌え殺すつもりですかっ!呼吸困難で死ぬわ…!一体何回生き返ればいいの…!(いい加減黙れ

    初投稿作品から少しづつ読ましてもらってるんですが、本当ミプレルさんの成長速度に嫉t…いいえ感服です←。暴走してるのは分かり切ってるのであえて読み返しません!(オイ
    ではこれからもよろしくお願いしますね。リンレンおめでとう!鏡音は正義!(笑)

    2009/12/30 11:33:23

    • ミプレル

      ミプレル


      え…ええええぇぇえ!?待ってちょっと待って何が起こったのメールフォルダ開けてメッセージのお知らせがあること自体びっくりなのに亜依香さんからてどういうことですかいいんですか感想とかもらっちゃっていいんですか!!?だってだって尊敬する人からメッセージとか!感想とか!もう私はどうしたらいいの!!

      …落ち着け自分。
      こんにちは、亜依香さん!こちらこそお世話になりっぱなしです、ミプレルです。
      終業式からちまちまと描き進めたので何とか間に合いました…。亜依香さんのジェミニ素敵でしたよ!神様GJ!てか亜依香さんGJ!亜依香さんならきっと誕生祭小説書いてくれるって思ってました!信じてた!(何
      それからコラボの学パロも…コラボ内で叫んじゃだめかと思ってコメントできない…!暴走していいですか?(あかんやろ

      亜依香さんの嫁になら喜んで!代わりに亜依香さんちの双子さらっていきまs(殴
      はあはあして頂けたら本望です← ってかしょんぼリンwwwうまいです亜依香さんwwwダーっとレンにキザ台詞を言わせたあとに私が恥ずかしくなった罠。誕生日くらいキメてほしいのにうちのレンはどうもヘタレです←
      成長、できているといいのですが…って初投稿からですか!?ひえぇありがとうございますってか恥ずかしい!レンの台詞と同じくらい恥ずかしい!自分でも怖くて読み返せません(それってどうよ

      読んで頂いてありがとうございました!コメントまでして下さって本当に嬉しいです…っ!こちらこそこれからもよろしくお願いいたします!リンレンおめでとう!大好き愛してる!!← そして合言葉来たwww鏡音は正義!笑

      2009/12/30 13:48:30

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