「その、あげはちゃんにからんできた子って、男の子?」
くすくすと笑いながらマスターがそう言った。その言葉に、あげはが、こくん。と頷いた。
「そう、男の子です。」
そうあげはが言うと、マスターの笑みが深くなった。
「きっとその子はあげはちゃんが好きなのよ。」
そう面白がるようにマスターは言う。しかし、あげはは首をかしげながら、何で?と言った。
「好きならば、なんであんな、猿とか言ったりするの?」
不思議だ。と眉間にしわを寄せるあげはに、あげはの母親がそういうものよ。としたり顔で言った。
「好きになるってことはそういうものなのよ。」
「好きな子に意地悪をしたくなる。これはもう自然の摂理と言うものです。」
あげはの母親に同調するようにマスターも厳かに、だけど明らかに笑みを含んだ声でそう言った。
 そういうものなのか。とだけどやっぱり納得しきれない様子のあげはを見ながら、大変だ。とリンは茶化すように言った。
「大変だよレン。ライバルが増えちゃったね、どうする?」
そう言ってつんつん、とわざとらしく横に並ぶレンのわき腹をひじで突っつくと、レンがうんざりした顔でため息をついた。
「リン、そのネタいい加減飽きた。」
そう素っ気無くレンが言う。もうこのネタでレンをからかう事はできないようだ。もっと面白い反応を期待していたリンは、つまんない。と口を尖らせた。
 そんな双子のやり取りを見ていたあげはが、ふと考え込むように上を向き、そしてにやりと笑った。
「おばあさん。それって、女の子でも言える?」
「え?」
「好きな子ほどいじめたい。ってやつ。女の子でもやっぱり同じように好きな子ほどからかいたくなるもの?」
そう無邪気な様子で、だけど明らかにリンの事を見ながら確信犯的にあげはがそんな事を言う。その言葉に、リンは瞬時にして真っ赤に染まった。
「あげはっ。」
思わず叫んでしまったリンに、あげはは悪戯するときの自分たちのように、目をきらきらとさせながら笑った。
「別に、誰かの事だなんて言ってないよ。」
笑顔でそんな小憎たらしいことを言う。そのあげはの言葉に、リンは頬を赤くしながら、そうよ。とぐいと胸を張った。
「私は好きな人にはちゃんと優しくするもん。」
リンの言葉にあげはが、へえそうなんだあ。とわざとらしく驚いた声をあげた。
 マスターは、そうねそういうこともあるわね。なんて笑顔で言っているし。勘のいいメイコはその様子でリンの本心に気が付いたようで、ふうん。なんて含み笑いをこぼしていたりしているし。ちらりと横を見るとレンはへたとりに熱中していて、何を考えているか判らないし。
 こいつめ。とあげはに自分の本心を言ったことを後悔しつつ、リンがじとりと睨んでいると、にしし。とあげはが人の悪い笑みを浮かべた。腹が立つ。
「あげはの、猿、さーる。」
リンが反撃とばかりにぼそりとそう言うと、あげはも何か言い返そうとしてか、何か考え込むように眉を微かに顰めた。
「リンの、リンの、、、へそ、へそ、でべそ。」
「私、でべそじゃないし。」
へそって、悪口じゃないし。
 低次元の悪態に、リンはあげはと顔を見合わせてくつくつと笑った。
「いいからリンもあげはも手を動かせ。」
手を止めて笑う二人にレンが苦笑しながらもつっこみを入れた。

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梅酒の造りかた・5

閲覧数:152

投稿日:2010/06/02 19:04:35

文字数:1,368文字

カテゴリ:小説

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