辺りを見回してみる。
改めて……深々と、息をついた。
「ねえ、カイト?」
「え?」
「いくら二人と言っても、赤ん坊がここまでできるものかしら」
「だから、うちの子、天才なんだよ、きっと!」
「一体何の役に立つの、それ」
玩具という玩具は、四方八方に散らかされ。
カーテンはレールから外され。
何故か台所のテーブルの上まで抜かりなく荒らされている。
目を離していたわけではないのだ。
ただ、二人のテンポに追い付けなかっただけ。
満身創痍のおとうさん。
捕獲をしくじると、このようになる。
侮りがたし我が子。
「リンの行動力はめーちゃん似だよ、うん」
せっせと後片付けをしながら、顔を綻ばせるカイト。
「……良くも悪くも」
先に傷の手当てしなさい。喉まで出かかった言葉が止まる。
「なんか言った?」
「……なにも」
加えられた一言にさっと睨みを利かせると、ぱっと顔を背けた。
この惨状を前にしては、怒れない。
「肝心の破壊神はおねむときた。……ほんと、寝てれば天使なのに」
「僕はどんな二人でも天使だよ」
──よくもまあ、照れもせずにそんなことが言えるものだと思う。
「めーちゃんだってそうでしょ?」
「……まあ、ね」
そういう正直なところが、彼の魅力であることは、散々思い知ってもいるが。
「ちなみに、僕にとってめーちゃんは女神です」
「は……はぁ!?いきなり何言ってんのよあんた、馬鹿!?」
「照れない照れない」
「照れてないわよ!」
静かに、とジェスチャーして、カイトは悪戯っぽく微笑んだ。
どうやら破壊神──もとい、愛娘と愛息子、引き続き夢の中にいるようだ。
「はぁ……良かった」
「遊び疲れちゃったんだろうなー、さすがに」
「寝てるときまで、仲良しだこと」
赤みの残った顔のまま、だが、この光景を見ていると気が抜けてしまう。
観念したように、メイコも微笑んだ。
「さて、と。いつまでも床で寝させてるわけにもいかないし……ベッドに連れて行こうか」
それは極めて常識的な判断であり、どちらかと言えば勃発した事柄が、不測の事態というやつだ。
右側にリンを、左側にレンを。
「──びえええええ!」
それぞれ抱えた瞬間、右側の彼女は火がついたように泣き出したのである。
「ええええ!!?なんで!?」
「うわあああああん!」
ばっちり目を覚ましたレンも、ひどい勢いで泣き喚いた。
あまりの声量に、思わずメイコは耳を塞ぐ。
「めめめーちゃぁん!」
「引き離したからじゃないの!」
「ほんのちょっとのことじゃん!仲良しすぎでしょ君達!めっ!我慢しなさい!十秒で済むからぁ!」
必死の説得も、残念ながら赤子には通じない。
カイトは走る。全力で。
両手が塞がっている彼は、耳を塞ぐこともできずに。
全力で、ベビーベッドへ向けて。
メイコの言う通り、二人まとめて寝かせてみると、嘘のような静けさが戻ってきた。
聞こえるは、安らかそのものの寝息。
「み……耳がおかしい……」
「……あのボリュームをステレオで聞いたらそうなるわよ……」
「──ねえ、めーちゃん」
虚空を見つめて、穏やかに、彼が言葉を紡ぐ。
「僕、さっきどんな二人でも天使って言ったけど」
「……うん」
「ステレオ、こわい」
爽やかさの中に、トラウマの影があった。
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