閉ざされた　鉄の扉
開くこと　決してならず

黄金の鍵は　消えてしまった
初めから　
存在(あり)はしないというように

扉の内部(なか)　暗い部屋
終りは何処に　果てない闇
溢れているのは　昏い歌

闇の中の月下美人
不気味に赤い　薔薇の花弁

血と肉をひらかれた　女　ひとり
白い肌の上を　幾つもの
腕が　指が　愛撫を止めず
眠ることも　許されない

その唇から　零れ落ちるのは
世界をうたう歌

幾千もの　欲望（ねがいごと）
終りは何処に　果て無い闇
溢れているのは　昏いうた

闇の中　手伸ばす　玉章(たまずさ)
妖艶なるは　百花王

血と肉をひらかれた　女　ひとり
憎しみを　悲しみを　罪と罰
孕んでいく　世界の汚濁
終りの無い　凌辱

その唇から　零れ落ちるのは
世界を呪ううた

錆びかけた　鉄の扉
洩れている　律無きうた

黄金(きん)の鍵の　在り処は此処に
初めから　
隠されてなどいなかった

血と肉をひらかれた　おんな　ひとり

闇の中美しく　歌い　叫ぶ

彼女こそが　黒の　歌姫　