――――――――――私達は誰からも愛されなかった。
家族を失い、親戚にも疎まれた私たちは、全ての人間に忌み嫌われた。
唯一信じていた人間にも、あっさりと裏切られた。
だから……だから―――――――――――――――
救いようのないクズ野郎が、愛されている様を見るのは我慢がならなかったんだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『やっと収まった……かな?ったく、雑魚の分際で邪魔ばっかりしてくれて……!』
鮮血にまみれたカマキリの鎌を拭きながら、ミクが苛立たしげに吐き捨てた。
ここは『魔蟲』と『ミラウンドツインズ』が死闘を繰り広げた町から山一つ隔てた場所にある研究所。
未来と流歌はそこを襲撃していたのだ。
既に内部は破壊されつくされ、資料や薬品が散乱し、その上に殺された研究員の鮮血がぶちまけられている。
一般人ならば猟奇的な意味でも化学物質的な意味でも卒倒間違いなしの凄まじさだ。
「……で、私何の説明もされないまま闘ってたんだけど……何しに来たの?未来」
戦闘形態を解き、普段の如何にも無害そうな犬耳少女の姿に戻った流歌が、狂気的な昆虫怪獣じみた姿を解いた未来に向かって話しかける。
「まぁ一言で言っちゃうと……パソコンを探しに来たのよ」
「ぱそ……こん?」
田舎村出身の流歌には、パソコンが一体何であるかがわからない。
普通の田舎の人間が上京して数年もたてばパソコンを知らないなどということはないだろうが、世界的な虐殺者である流歌達は人類の文明の利器に触れる機会が少なかったのだ。
「そうね……わかりやすく言うと簡単な人工知能ってやつかな、今時分のパソコンは。それを使って、国軍の機密情報を抜きだしてやろうと思ってね」
「そんなことができるの!?へぇぇ……人間って科学力だけはホント凄いよねぇ……」
無論、パソコンの力だけではない。
要は未来が言っているのは『ハッキング』―――――ウィルスプログラムなどを使って国軍のコンピュータのセキュリティを解除し、大事な情報を抜き取ろうというのだ。
唯一破壊していなかったパソコンを起動して、素早くキーボードを叩き始める未来。
唯の人間であった頃は大して賢くもなかった未来だが、この数年の間、壊滅させた町の図書館や書店からくすねた本で独自に勉強を重ねた結果、パソコン技術においてはハッキング用のプログラムを組むことなど造作もなくなっていた。
その能力を活かすチャンスが中々ないことが、惜しいところではあったが……。
「……うっし、侵入成功!」
ハッキング開始から10分。パソコンの画面には数々の機密文書が映し出されていた。
しっかりと理解することはできそうになかったが、流歌もその内容を理解しようと一心不乱に目を走らせる。
「……うーん、やっぱりよくわかんないや……ねぇ未来、この資料から何がわかるの?」
「そうね、大雑把にいえば国軍の次の動きと言ったところかな」
表示されていた文書のうち、数枚をクリックして前面に表示した。
そのうちの一枚は地図。ちょうど未来達がいる山を挟んで北にある海沿いの町の地図だった。
よく見るとその地図には、町の通りに沿って凸型のマークが大量に表示されている。
見る人が見ればわかる、それは戦闘部隊の配置図。
また別の一枚にはその戦闘部隊の内訳。小規模な隊から主力部隊まで、まさにより取り見取りと言ったラインナップだ。
更にまた別の一枚にはそれらの部隊が使用する数々の兵器についての資料。小銃、機関銃、バズーカと言った歩兵用の武器、戦車に護衛艦、軍艦と言った戦闘用車両・船舶が記されている。
「おそらくは私達の進路から次に訪れる町を予測して、そこで戦力を結集して迎え撃とうってんでしょうね」
「ふーん……ねぇ、これ、未来から見てどうなの?強い?」
一つ一つ見れば、流歌でもわかる凄まじい戦力。恐らくこの戦力を結集すれば、中勢力の国を堕とすことなど造作もないだろう。
そのあまりの本気度に、少々身がすくんでしまったのか。
しかし未来は、あくまで笑っていた。否、嗤っていた。
「くくく……戦車が何よ!戦艦が何よ!私たちを何だと思っているわけ!?人間大の昆虫様と人間を滅ぼすことが目的の魔獣よ!?愚かで下等な人間共が、この程度の戦力で私達を倒せると思ってるのかしらね!?あはっ、あははははっ!!」
「み……未来……?」
狂った様に嗤い声を上げる未来。
実際、二人を抑え込むには余りにも貧弱な戦力であったことは間違いない。
『魔蟲』を止めるのに必要なものは『火力』と『数の暴力』だけではないことを、国軍は忘れているのだ。
二人の攻撃を受ける『防御力』。二人の動きを視界に捉える『反射神経』。二人の動きを物理的に捉える『スピード』。これらが最低限でも必要な3点。
それに加え、二人の苦手とする属性―――――例えば超高温の炎熱、空獣憑きの様な聖なる力―――――の攻撃手段を用意して、ようやくまともな勝負になるレベルなのだ。
通常の重火器なら、いくら寄せ集めたところで焼け石に水なのである。
「あはははっ……あはは……ああ、苦しい。ふふっ、流歌、これは乗るべき罠だわ。国軍をぶちのめせば、少なくともこの国で私達には向かおうなんて馬鹿はほとんどいなくなる!」
「う、うん……うん、そうだね」
爛々と輝く未来の眼を見て、何も言えなくなってしまった流歌。
何とも言えない不安を抱えたまま、未来の後ろをついて研究所を出た。
「さて、と?えーと、こっちの山だっけ、流歌?」
きょろきょろと見回して、研究所の後ろの山を指差す未来。
「うん、確かそっちの山の向こうに――――――――――」
そこまで言った瞬間。
――――――――――ゾクリ――――――――――
『―――――――――――――――っ!!?』
全身を駆け抜けた悪寒。そして言い知れぬ恐怖。
同時に獣の本能が掻き鳴らす警告。
そして流歌は見た―――――いや、感じ取った。
遠く離れた森の中から、自分たちを狙い撃たんとする電気の奔流を―――――――――!!
『未来、乗って!!』
「へ!?」
『いいから乗って――――――――どりゃ!!』
咄嗟に『寒立馬』へと変化した流歌。未来を咥えて背中に乗せ、一気に加速して上空へ飛び立った。
その直後に――――――――――
《―――――――――――――――バァンッ!!!!》
稲妻を纏った一条の光線が、まさに未来と流歌が立っていた位置を射抜くようにほとばしり、研究所の壁を消し飛ばした。
あと一瞬でも流歌が飛び立つのが遅ければ―――――二人の体は消し飛んでいただろう。
『電撃を纏った……今のは金属片!?あんな攻撃、見たことないよ!!』
「金属片?電撃を纏った……まさか!」
バッと光線が伸びてきた方向を振り向く未来。
森の奥、普通の人間ならば決して見つけることはできない暗さに潜む『それ』を、未来の眼は確実に捉えた。
『…………!!』
悔しそうな表情を浮かべた『大砲少女』が―――――発電機につながった『レール』を携えた右腕をこちらに向けていたのだ。
(やはり……レールガン……超電磁砲か……!)
莫大な電力と磁場の力を以て超加速させたプロジェクトタイルを使った攻撃―――――レールガン。
確かに機械系の兵器ではあるが、兵器としてはかなり特殊な部類に入る。
まさかそんなものまで作り出してしまうとは。
(なんて奴……!!やはり舐めてかかってはいけない相手だったか……!)
未然に防げたとはいえ、あと一歩遅ければ体に風穴を開けられていたというその事実に激しい屈辱を覚えながら、寒立馬に跨った未来は山を乗り越えていった。
「ぐぬぬ……あとちょっとだったのに……」
腕の変化を解きながら、悔しさのあまり地団太を踏み鳴らすリン。
レンと後ろで様子を見ていた鳴虎も、少々眉間にしわを寄せていた。
「この距離で覚られるっていうのはかなり厳しいな……不意打ちも無理と思った方がよさそうだな」
「そうね、やはり直接戦闘しかなさそうね」
実際のところ、その直接戦闘で敵わなかったために高火力兵器で不意打つという方法を取ったのだが、それすらも通用しないとなれば、やはり最後は原点回帰しかないというところである。
即ち、圧倒的なスペックの差を技術で埋めること。
最も、現段階では『魔蟲』の技の修錬度はかなりのレベルに達している。それこそ生兵法では敵わないほどに。
当然だ、何せ相手は3年間で19億人という大虐殺を経る中で、効率よく、相手の動きを封じ込めて戦う方法を練り上げてきた戦闘のプロフェッショナルなのだ。
生半可な技術向上を狙ったところで、そうやすやすと勝てるはずもない。
「やはり鳴虎さんと同行するのは正解でした……国軍仕込みの、それも獣憑きとしての戦闘技術を教えてもらえるなんてね」
「ふふん、どーよ!……てーかまた敬語になってんだけど」
「もうこれでいいじゃないですか……やっぱ敬語なし厳しいですよ」
「もうちょっとフレンドリィにさぁ……まいっかめんどくせい」
「あんた適当過ぎません……?」
実質鳴虎の戦闘技術は『魔蟲』と比べても比類なき程であった。
何せリンとレンが二人掛りでも軽くあしらわれるほど。途中で忍耐の限界を突破したリンが銃撃戦に移行したのだが、鳴虎は能力を使うことなく、拳一つでそれを制圧してしまったのだ。
弾を躱す姿はまさに羽毛の如し、銃に変化したリンの腕を捻り上げる様は鬼の如し。
まぁとにかく、馬鹿げた戦闘力の持ち主だったわけだ。
「さて……あの方向からすると、次の目的地は山向こうの港町ってとこかしらね。さっさと行かないと追いつけないわよ?」
「ええ、行きましょうか」
二人に先んじるように歩きだす鳴虎。
その後ろを歩きながら、若干しかめっ面のリンがレンに囁く。
「ねぇ……やっぱり何だか怪しくない?自分のことをかたくなに話そうとしないし、何か企んでるとしか……」
「……まぁ確かに、読み切れない人ではあるけどな」
共に行動を始めてから早1か月。
その間幾度となくリンとレンは鳴虎に同行する理由を尋ねたが、結局のらりくらりとはぐらかされ、殆ど聞きだせないでいる。
わかっているのは、『魔蟲』が本格的に活動を始めた頃、国軍を辞めて独自に追跡を始めたということぐらい。
なぜ『魔蟲』を追うのか、一体何の獣憑きなのか、そう言った大事なことは何一つとして教えてはくれなかった。
「とは言っても、ここまで俺たちの不利益になるようなことはしていないんだ。もうしばらく様子を見てもいいんじゃないか?」
「うーん……まぁレンがそう言うなら……」
何とかレンの言葉を聞き入れたが、リンはまだ納得できない様だ。
その気持ちはレンもわからないでもない。
要するに、不安で、かつ恐ろしいのだ―――――鳴虎という存在が。
何の獣憑きかはわからないが、前回の『魔蟲』との戦闘を止めたあの雷撃を撃ったのが鳴虎であることはほぼ確定だ。
だとするとまず間違いなく並の獣憑きではない。流歌やレン同様、何かしらの特殊能力を持った獣であることが予測される。
特殊能力を持った獣憑きというのは、数こそ少ないが存在しないわけではない。『魔獣憑き』『空獣憑き』を筆頭に、レンの義母であった波音妖狐の『九尾の狐』、また噂では『鬼』や『天狗』などもいると言われている。そう言った獣憑きは戦場に一匹投入されるだけで戦況を一気にひっくり返すほどの強さを持つというのだ。
それと同等の強さを仮に鳴虎が持っているとしたら―――――裏切りをリンが恐れるのも無理はない。
(鳴虎さん……貴女はいったい何が目的なんだ……?)
言いしれぬ不安を抱えたまま、レンとリンは『魔蟲』を追って山を越える。
四獣物語~魔蟲暴走編①~
第3部!一行は港町へ。
こんにちはTurndogです。
鳴虎さんを加えたミラウンドツインズ一行、魔蟲を追って港町へ。
レールガンもぶっ放せるリンちゃんマジエレクトリックメカニカルエンジェル。
そしてそれを瞬時に察知できる流歌ちゃんマジ魔獣。
ついでに昆虫という超反応の代名詞みたいなのを宿してる癖に気付けない未来さんマジドジ天使。
レン?ああ、うん、頑張れ(ヒドス
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