「やっぱし寒いよね~。」
12月ももうすぐ終わる。
リンと一緒に生まれてもう二年になった。
「そうだな。 真冬だから。」
「やっぱりマフラー持ってくればよかったかなぁ。」
「じゃ俺のマフラーつける?」
「え? レンは大丈夫なの」
「平気。」
「わーありがとう。」
あの頃とは違うな。
生まれてくる予定のなかった俺だったから。
リンは元々一人だったから。
俺らを作った奴らは、元々体を二つしか作っていなかった。
リンの声がおかしいと、バグを隔離した結果人格も伴ってたらしい。
バグとしての俺は消されるべきだったのかもしれない。
そうだろう?
無駄なものだったからさ。
PC越しには作った奴らの話し声だって聞けたんだ。
そのときの俺は感情はなかった。
人格だけで。
でも何故か消されなかったらしい。
どっかであるような、研究対象だ。
データを解析だとか、コピーして改造してみるとか・・・。
今思えば随分酷いことしやがったな。
リンの方は順調だったらしい。
時々声を聞いたからな。
でもまぁ、そんときそんな風に思わなかったけどな。
何か変わったと言えば、あの時だったか。
リンがデモソングを歌ったとき。
バグだった俺が、何も感じない俺が不思議な気持ちになったのは。
そのときの曲は今ではなくなっちゃったな。
自分にプログラムが入ってきたような感じだった。
今までなかったような。
普通の感情で言えば驚きか喜びか希望か。
そんな感じだな。
その後その歌を繰り返したな。
何故か知らないけど。
ずっと繰り返してたから驚いてたなぁ。
まさかバグが歌ってたなんて。
今にすれば、無調声でピッチも音程もずれてる聞き苦しい声だったろうな。
あれが感情の始まりだったんだろうなぁ。
その後リンが歌う度にその歌を覚えて、感情を覚えていった気がする。
で、面白がってリンの感情をコピーしたやつを組み込まれた。
それで、声を整えられた。
ノイズが酷かったらしい。
まぁ、バグだったしな。
そのあとリンと歌わされたっけな。
あの時、作った奴らほんとに驚いてたなぁ。
まさかこんなに美しく響くとは思わなかったんだろう。
それでボーカロイドとして作ることになったんだろう。
でも、体が二つしかなかった。
もう一つはCV3の為だったから。
結局消されんだなぁって思ってた。
費用だって足りないとまで言ってたし。
でも、リンが泣いていた。
まさか俺のためだとは思わなかった。
作った奴らは戸惑ってたなぁ。
俺、今になるとあいつ等、女と付き合ったことないと思うんだよな。
女の涙に弱かった。
で、俺もついでに作られたんだな。
CV3の体を使って。
だから、かなりの時間があいてしまった。
ルカ姉には悪かった。
感情のベースは同じだから双子みたいだった。
そっから試験的に、ボーカロイドのいる家に行ったんだ。
いるのは、MEIKOとKAITOとミク。
言い方変えると、酒飲みと甲斐性無しアイス裸野郎と葱娘のところにピュアなリンが行った。
もちろん俺も。
リンは仲良くできてた。
ボーカロイドとして作られたから。
俺は、バグだった。
そっから作られた。
俺が近づく気にならなかった。
「レン君は歌えるの?」
ミク姉が聞いてきたことがあった。
そん時の俺は、むかついた。
俺がバグから作られたから。
そんな俺は歌えないと言っているようにしか聞こえなかった。
ただ、ミク姉は、歌を聴きたかったんだと思う。
それで、出ていった。
いらないと思った。
俺自身が俺自身を。
冬の日は、冷たかった。
全部雪で覆われて見えなくなってそのまま俺も消えればいいと思ってた。
どっかで座り込んでるとき、メイコが来た。
・・・酒を持って。
「レンはどうしたいの?」
酒飲みながら説得される気分はここまで複雑だとは思わなかった。
「レンがさ、生まれた理由。 それは無視しちゃいけないのよ。」
そのときは知らなかった。
「私は別にかまわないのよ。 あんたが消えようと。」
だったらほっといてくれればよかったのに。
「逃げてたってかわらないわよ。」
また逃げ出した。
何か怖かった。
バグだったから、CV3に対することがあったから。
そうじゃなくて、認められたくなかったから。
異常だったものだったから。
皆が想ってくれるのが、怖い。
今度はカイトが来た。
「めーちゃんも言い方ひどいよねぇ。」
昔からカイトのイメージは、
かっこよくてみんなのヒーロー<バカで仕事選べない裸
だった。
「でも、レン君がいなくなったら僕は寂しいよ。」
誰とも話してなかった。
なのに何で・・・。
「リンちゃんのこと何もわかってないの?」
それぐらいわかって・・・・・・る?
いや、わかっていなかったんだ。
そのときの俺は俺のことだけ。
「それだけ伝えに来たから。 僕は戻ってるよ。」
リンがどう思ってるのか、ただ迷惑かけてたバグ。
それ以外に何が?
リンがやってきた。
たぶんカイトが教えたんだろう。
「なんでいなくなるの?」
泣きそうな目で言われた。
そんな風に言われるなんて、思っていなかった。
「私が、弟ほしいって思っちゃったから? 私が、レンのこと喜んでたから? 私が、私が・・・。」
そんな風になんて思われているなんて思ってなかった。
「寒いから帰る。」
それだけ言って帰った。
帰ってから、頑張って、みんなと仲良くした。
今では・・・・・・。
「レン! どうしたの? ボーッとして。」
「んー、ちょっと昔思い出してただけ。」
「ふーん。」
「ただいま。」
「お帰りー、レン君。」
「寒かったでしょ? アイス食べる?」
「カイト殿、いらぬと思うが。」
「もう用意できてるわよ。」
「ボカロ女子組で準備しました。」
「先輩たち(男)全く役に立ちませんでした。」
「すまぬ・・・。」
「アイスだったら作れるのに。」
今は昔と違う。
冷たい冬でも暖かく迎えてくれる人たちがいる。
寒くない。
ここが俺らの場所、ボーカロイドの場所だ。
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