僕を出迎えたのは鈍色の箱だった。幅・奥行き五十メートル。高さは三十メートル程度。天井には太いパイプが縦横に走り、床には円筒形の何かが無数に据えられていた形跡がある。照明設備が不完全なのか、やや薄暗く、部屋の角には闇が蟠っていた。なにに使われていた部屋なのかはさっぱり分からない。が、本来の機能を潰して無理やり作った戦場だということはすぐに理解した。
その証拠にほら、僕の正面、四十メートルほど先に黒いコートで全身を包んだ男が殺気を漲らせている。
「ようこそ、俺の戦場へ!」
高らかに声を上げ、獣のような獰猛な笑みを浮かべた二十台半ばの男。逆立てた赤い髪は前髪に白いメッシュが入っていて肌はひどく白い。黒いコートの中にはおそらく銃器と弾薬が山と仕込まれているのだろう。
ハインシュルツ。今ミッションの最後にして最大の敵。全身の九十パーセントを機械化したサイボーグだ。その戦闘力は強化外骨格(パワードスーツ)を装着した兵士を軽々と凌ぐ。戦車ですら格好の獲物とするぶっちぎりにイカれた戦闘マシーン。
「歓迎するぜ、猟犬(ハウンドドッグ)?」
鷹のように鋭い眼が眇められた。睨み合うには遠い距離から、残忍な意志が叩きつけられる。
僕は躊躇なく床を蹴った。刃渡り五十cmのブレードを握り締め、スーツの出力に任せて弾丸のように突っ込む。敵を間合いに捕らえるまで二秒足らず。
「ハァッ!!」
ブレードを逆袈裟に切り上げる寸前、僕の眼前に二つの銃口が突きつけられた。瞬時の判断で攻撃を止め、横っ飛びに飛び退く。ハインシュルツが取り出したのは二丁のアサルトライフル。それも普通の歩兵用の豆鉄砲じゃない、戦闘ヘリの機関銃さえ上回る威力を持つ化け物銃だ。直撃すれば、頑健な鎧のような僕のパワードスーツも無残に引き裂かれるに違いない。
ライフルの銃口は、ほぼ直角に軌道を変えた僕を正確に追ってくる。ロンダートで体勢を立て直した僕は、地面スレスレまで上体を沈めて疾駆した。敵を中心に弧を描くように回りこむ。追随する無数の銃弾が床や壁に穴を穿つ。マズルフラッシュが連続してハインシュルツの表情を鮮烈に描き出した。
敵の右手に回り込んだ僕は跳躍し、スーツの足底に磁力を発生させて壁に着地する。反動を利用して足に力を溜め、すぐに磁力をOFFにして再び躍動した。三角跳びの要領でハインシュルツの背後を取る。
右手に握ったブレードを跳ね上げる。鋼を両断する刃が切り裂いたのは、しかし敵のコートのみだった。ライフルを捨てて飛び退いたハインシュルツが笑みを深める。
「やるなァ! 流石だ。流石だよNo-face(顔なし)!」
腰に取り付けてあった軍刀を抜き、嬉しそうに男は言った。刀の刀身が高速で振動する音が聞こえる。僕は無言でブレードを構えなおした。内心の不快感を顔に出さぬよう気を付けながら。
「なぁおい、顔なし君よ。お前の中には今どれくらい残ってるんだ?」
教えてくれよ、とハインシュルツは嗤いながら囁く。耳障りだ。
瞬きの間に幻視する雨の中で、顔も思い出せない誰かが僕を呼んだ気がした。
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川柳五七
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昨日に置いてきたお別れで
鳴り止まぬ腹も諦め気味だ
どうして街はまた
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それって君達が何も感じれなくなったみたいでしょ?
遠吠えにしたって
最後には笑えるよう願って吠えてる
その時の想いはどこにある...嗤うマネキン歌詞

みやけ
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