その頃、女王は姫と対峙していました。
女王はがむしゃらに走り続け、いつのまにか庭へと来ていたのです。そこには姫が待ちかまえていたかのように立っていました。女王は気持ちを切り替え、余裕のある笑みを見せつけました。
「何しに戻って来たのかしらね。森の奥でおびえながら隠れていたのではなくて?」
「・・・・・・やっぱり、あの女の子は女王さまだったのね。確かに最初は突然のことで混乱してしまって使用人に促されるまま逃げてしまったけど・・・・・・。そろそろそれも落ち着いてきたから、こうして戻ってきたの」
「私に殺されるために、よね?」
女王は笑みを深くし、
「あなたを倒すためによ」
姫は女王を睨みつけました。
二人がしばらくにらみ合っていると、王が顔を真っ赤にしながら庭に出てきました。
「はぁ、はぁ・・・・・・。もう・・・無理」
「体力ねぇなぁ、王さまよぉ」
「うるさい・・・・・・。あれ? なんで姫がいるの?」
王は鏡を背中からおろしながら、首を傾げました。
「ちっとばかし遅かったか・・・・・・」
「だから遅かったとか手遅れとか、いったい何なのさ!?」
「あの二人を見てみな」
そう言われて、王は二人を交互に見ました。そして、二人の間に漂う剣呑な空気に気づきました。
「あの二人、あんなに仲悪かったっけ?」
王の問いに鏡は妙な間を空け、答えました。
「・・・・・・。人の感情はころころと変わるもんだ」
「止めた方が、いいよね」
「そりゃあな。でも王さまはあの間に入れるか?」
「・・・・・・無理だね」
二人は彼女たちの戦いをおとなしく見守ることにしました。すると、
「そこの青い人、道を尋ねたいのだが・・・・・・」
と、なんとも戦場に場違いな気の抜けた声がかかりました。
王が振り返ると、そこにはあの王子がいました。
その声は姫と女王にも届いていて、
「え!?」
と、姫は驚きの声を上げました。そして姫の集中が途切れた瞬間、女王がしかけました。
姫が女王に意識を戻した瞬間、姫の目前には女王の靴の裏が迫っていました。
「しまった!」
姫はとっさにその場で飛躍して攻撃を避け、そのまま前方に一回転、女王にかかと落としを食らわせようとしました。しかし女王は腕を交差させて攻撃を受け、体を沈ませて衝撃を緩和。そして、意味ありげに微笑みました。
「あらぁ、今日の姫のパンツはピンクの水玉なのねぇ」
「ちょ、ちょっと大声で何言ってんの・・・・・・きゃあ!!」
女王は一瞬力の抜けた姫の足をつかみ、力任せにぶん投げました。
姫は完全に動揺していて、スカートを押さえた体勢のまま真っ逆さまに落ちていきます。姫の頭が地面に激突する直前、誰かが姫の体をキャッチしました。
「お、王子様・・・・・・」
「怪我はないかな?」
王子は姫をお姫様だっこしながら安否を確認しました。
「はい・・・。ありがとうございます」
王子に降ろしてもらい、姫は女王の方を振り返りました。女王の前に、王が立ちふさがっていました。
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