ちょうど2つ目の峠を越えたところで、ミクは初めて背後を振り返った。
まわりの農民もあまり使うことのない旧街道である。朽ちた看板を目印にひたすらミクは歩き続けてきたが、運動に慣れない足が音をあげている。
休もうか、とちらりと思ったが、遥か遠くで揺れる篝火を遠目に見て、ミクは再び杖代わりの柏の枝に力を込めた。

初音とは、武蔵の国周辺に昔から根付いている名家であった。
血筋は鎌倉のころ源から分かれた分家であり、地元でも名の知れた家柄だ。
ミクはその初音家の嫡子で、男児に恵まれなかった先代の遺児でもある、いわば姫なのだ。
それがなぜ今こうして汚らしい旧街道を歩いているかと言えば。

初音家には代々老中を務める二つの家がある。それが神威と巡音だ。
権力が大きいのはどちらかと言えば巡音のほうで、神威は度々煮え湯を飲まされてきた。簡単に言ってしまえば好敵手なのだが、そんなに青臭い関係がまかり通る世の中ではない。
先代についていた老中もやはり巡音で、神威の不満はかなり高まっていた。それを収めていたのは先代の初音で、彼がいてこそ初音はなりたっていたのであろう。
しかし先代の初音が隠居を決めて新しい老中を決めようとした時、問題が起こった。
巡音の跡取りがいなかったのである。
先代としては神威より巡音を老中に就けておきたかったのだが、神威の陰謀だろうか、嫡男が水の毒で病死してしまったのだ。
残ったのは姫君のルカ嬢一人で、やむなく神威に位が譲られるかと全ての人は思った。
だが指名されたのはまさかのルカ嬢で、ついに神威は反旗を翻して先代を殺し、こうして城に火を放ったのだ。
動乱のなかでミクは家臣たちとも分かれてしまい、こうして一人旧街道に影を落としているのである。
巡音の家の者もちりぢりになってしまったらしく、誰とも会うことはかなわなかった。ルカなどは殺されてしまったかもしれない。

ミクは自分より年上の遊び相手であったルカを思い出して少し泣いた。それからまた、仕方ないと割り切って前を向いて歩き始めた。

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花椿【ボカロ戦国】

続けるか続けまいか悩んでいます。

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投稿日:2010/01/03 13:44:20

文字数:855文字

カテゴリ:小説

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