無邪気な子等の戯れ
誰も見てないよと潜めた声
逃げ惑う子鬼達の
叫声が藍の夜に響いた
伸びた影 絵取る指
上がる口 戯事が始まる
「鬼さん此方、手の鳴る方へ」
左様ならと黄昏に消える
「鬼さん何処?手の鳴る方へ」
誰もいない石段で揺らぐ
「おそろしか、おそろしか、鬼さんほんにおそろしか。」
「だけども僕らは遊ぶのさ、鬼さん喚んでは遊ぶのさ。」
無邪気な子等が夜更かし
誰も見てないよと潜めた声
土に敷く子鬼達の
叫声が藍の夜を穢した
笑う声 塞ぐ耳
止まる足 最期の日が暮れる
「鬼さん此方、手の鳴る方へ」
”サヨウナラ”が濃紺に消えた
「鬼さん此方?鈴の音其方!」
椛の影が目先で揺らぐ
「おそろしか、おそろしか、鬼さんほんにおそろしか。」
「だけども鬼さん愛しいな、鬼さんほんに愛しいなぁ。」
毎夕始まる戯事に
”サヨウナラ”は無いそうな。
「鬼さん此方へ」手を鳴らし
朝方見つかる屍
鬼さん此方、手の鳴る方へ
鬼さん此方、手の鳴る方へ
鬼さん其方、鈴の音聞いて
さあさ参ろうか
「鬼さん此方、手の鳴る方へ」
今宵も彼方へ鈴の方へと
「鬼さん此方、お手を拝借!」
夕闇さえも見えなくなって
響く叫声が途切れ
また朝が来る
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