寂時雨 怜音の投稿作品一覧
-
日常が手から零れ落ちていく
美しい宝石は地面に触れた途端
ぼろ屑に変わる
もう二度とは元に戻せないこと
分かってるんだ
単純なものが複雑になる
大切なものが煩雑になる
受け止めきれない愛が恐怖に変わって
小さな嘘が優しさに感じられるんだ
僕には重く感じられるんだ...heavy
-
A1
優しい言葉を書き連ねようと
ペンを走らせた
でも積み重なるのは
慰めの言葉ばかり
ありがとうもさよならも
誰かに投げかける言葉は
虚空に消えていく
B1
傷つかないための場所は...寂時雨の中で言葉を紡ぐ
-
肌の下に眠る 燻る血液
骨の中で揺れる こわばった顔
血走った眼は 僕の知らない君を映す
悲しみや苦しみが涙を作ると
喜びや楽しさが笑顔を作ると
思っていた
砂糖は甘いね レモンは酸っぱいね
分かるよ 受け止められるよ
素直なんじゃないよ
どう受け取ればいいかわかっているだけ...燻る血液
-
冷たい色がオレンジだと答えたら
あなたは笑うだろうか
その笑顔が素敵であればあるほど
この心がスッと冷たくなることを知らずに
声の形が一つ一つちがうように
応え方は正しくなくていいよね
いつか
さよならにこもった侮蔑に
さよならと言える日が来るのか
冷えた笑い 目線 場所...生温い聲
-
いつもより深く呼吸をしてみたら
排水溝を通る塩素の香りが鼻についた
陽だまりの中でわずかに
ハート形の観葉植物が揺れている
午前11時の薄明るい花盛り
自分だけが汚くて居た堪れないや
微睡の中でドロドロになって
右も左もわからなくして
浮腫んで痺れた手足が
30秒の幸福(しあわせ)と...微睡の中のドレミ
-
流れ着いた瓶を拾い上げた僕は
波の音に混ざった声を聴いた
ガラスに溶け出した深く澄んだ青と
潮の香りを秘めた滲んだ文字
水面に波紋が広がるように
切なさが淡く胸をつかんだ
照りつける日差しが景色を包んで
海風が手紙を空高く舞上げていく
夏空に 映し出された影法師
吹き付ける風を抱きしめ...夏色の手紙
-
静寂を生み出す雨音が
心の温かさを教えてくれるまで
目を閉じていたいんだ
水溜まりの上に寝そべって
静けさを肌で感じていたいんだ
ねえカサンドラ
バースデーソングの後のように
祝ってくれるかな
ローソクが溶け出す前に
一本残らず吹き消すから...カサンドラ
-
涼色を写し取った
ネモフィラの群れが
風に乗って空へと帰って行く
空気の中に溶け込んだ
半透明の姿に手を伸ばす
脆く儚げに舞い踊ってる
フィルムの向こう側で
貴方が笑っているんだ
その全てが幻想で
僕のワガママだとしても...ネモフィラの花畑で
-
吹き抜けていく 冷たい風
雲間に見える 朧月
胸の内を掬う 黒いベール
指先を染める 真っ赤なネイル
夢へと誘う揚羽の模様が
悲しみを飲み込んで
何度も何度も
愛しては殺した
微笑みと嘘 浮かべては
あなたの影を 見つめてる...胡蝶の夢路
-
青空がいつもより透き通って見えた
熱を帯びた風が汗をくすぐり通り過ぎていく
遅い朝食のミルクティーが足先を温める
今日の一歩を踏み出すために
胸に空気を溜めていく
吸って 吐いて 吸って 吐いた
柔らかな日差しとともに
一日の香りを身体中に満たそう
ありふれた日常の
ささやきに気付けるように...ささやき
-
罪悪感と後悔が心を蝕む
押しつぶされそうな理不尽さえ
自分のせいだと言い聞かせてた
その弱さと傲慢さが痛みに変わってく
わずがな希望さえ
指の隙間から零れ落ちてく
そんな気がした
それでも
あの時あの場所で 選んだことを
裏切らないで 恨まないで...インナーチャイルド
-
血管に鉛が流し込まれたようだ
フィルターのかかった景色には
いつだって死がそばにいた
静謐な空間で描いた夢は
煙に巻かれて形を失っていく
ここは嫌だ どこならいいんだ
助けてよ 助けてよ
足を離した瞬間に
二度とできない後悔が
風を切って押し寄せてくる...鉛色の花
-
これからの話をしようかなんて
嘘ばっかり もうどうするかなんて
全部決めてるんでしょ
ああ もう分かったわよ
分かりたくもないけど
飲み込むまで
口に突っ込むんだから
嫌になっちゃうわ
ほらもうこんなにも
溶け出したガラスのように...嘘
-
あなたの瞳が話せたなら
この世界をどんな名で呼んだでしょうか
あなたの肌が歌えたなら
この世界にどんな音を届けたでしょうか
きっとあなたなら
心の中にある形なきものに
優しい名前をつけたでしょう
二度と交わることのない
この糸が明日を紡いだとき
世界を通してあなたと...ツナグ
-
空は朱 雲は橙
貼り付けられた景色を眺めて
同じ日々を過ごしている
寄せては返す波のように
何度も 何度も
夢を描けたあの日
色をつけてくれたあの時
あの場所とあなたの
そうその言葉が 私を
強く大きくしてくたんだ...Good night world
-
冷たいナイフで抉り取ってほしいの
暖かい涙腺を片方ずつ
煌めく水晶に閉じ込めて
薄汚く色褪せるまで
夜の匂いの中を歩く
浮ついた頭の中では
醜い学者たちが忙しそうに
星の数を数えている
破裂しないように
少しずつ裂いていくの...古脳
-
「なに」とか「どんな」 なんかじゃ縛れない
「どう」とか「いくら」 とかじゃ推し測れない
「確かさ」が欲しい だって
形にしたら 物足りなくなる
心はどこまでも 我儘だから
見つめると暖かくて 目を閉じると心地いい
そんな優しい灯りが 欲しいだけ
型にはめなくていい ...優しい灯り