タグ「KAITO」のついた投稿作品一覧(12)
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ミクは拭いた皿を丁寧に揃えると、僅かに口角を上げた。台所ではメイコが鼻歌混じりに料理の腕を振るい、カイトは別室で準備中、リンとレンとルカは買い出しに出向いている。
彼女は現在、隣家で待機中だろうし、その兄がしっかり家に引き留めておくと言っていたから、万が一でもここに来る事は無いだろう。
準備は着々。...Common special Day's
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「何か言い残す事はありますか?」
舞台は先程の居間に戻り、ぐみから借りた衣服を身に纏った流架は開口一番にそう言った。手には楽歩から剥ぎ取った木刀を握り締め、目にはこれ以上無い程の憎悪と侮蔑を宿らせて、目の前で正座する二人の男子を見下ろす。少し離れた所には、静観しつつもちゃぶ台に置かれた人参のサラダを...巡り会えたこの場所で 11
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通された居間もまた、随分と広かった。床に敷き詰められた畳の枚数は二十枚程。激しさを増す雨粒が縁側と部屋を隔てる硝子戸に当たり、単調な音色を奏でている。暖簾(のれん)で仕切られた隣の部屋は、台所のようだ。ちゃぶ台や座布団など、必要最低限の家具しか設置されていない事が殺風景さを醸し出し、より部屋を広く感...
巡り会えたこの場所で 10
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「む?」
四限目の授業が終わり、腹を空かせた生徒達が弁当を広げ出した教室で、鞄の中を覗いていた楽歩が不意に声をあげた。
「む? むむむ?」
頭の上に疑問符を浮かべつつも、必死に鞄の中を引っ掻き回す。終いには鞄を上下逆さにして中身をぶちまけ出した楽歩に、不思議に思った海斗が尋ねた。
「どしたのがっくん...巡り会えたこの場所で 9
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桜の木からは花弁がすっかり抜け落ち、色も緑に落ち着いた。まだ四月の下旬だと言うのに、そんな事はお構い無し気温は日ごとに上がっていき、清涼感は反比例するように消失していく。駅から続く真っ直ぐな坂を登る制服の軍隊も、額にじわりと汗を滲ませている。
その群れの中に、桜色の髪をなびかせ歩く流架の姿もあった。...巡り会えたこの場所で 8
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お兄さんは心配性
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「で、何で私も手伝わなきゃいけないんですか?」
海斗が教室を脱走してから数分後、流架は楽歩に連れられ中庭を歩いていた。
左右を高等部と中等部の校舎に挟まれたこの中庭は、学校の名物と言っても過言では無い程美しい。中央にある噴水を囲むように設えられた花壇には色とりどりの花が植えられ、綺麗に整備された芝生...巡り会えたこの場所で 7
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とある休み時間の事だった。
「たたたたた大変だああああああ!!」
次は自分の得意とする古文の時間なので上機嫌で机から教科書を掘り出していた我の耳に、その声は雷鳴のように響いた。即座に脳から発せられた信号に従い、ほぼ反射的に耳を手の平で覆う。キーンという音しか拾えなくなった耳を押さえながら、我は自分の...巡り会えたこの場所で 6
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刹那、鋭い疾風(かぜ)が不良の身体を通り過ぎた。
「え?」
まるでスローモーションのように、その身体が沈んでいく。ドサッと音をたてて廊下に顔から倒れこんだ彼は、ぴくりとも動かない。
長い沈黙が廊下を支配する。
「な…」
不良達は目を白黒させ、床に伏して動かない仲間を呆然と見下ろす。
流架にも、何が起...巡り会えたこの場所で 5
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勝てる気がしねぇ
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翌日。
午前八時三十分…つまり朝のHRが始まる時間に、流架はある部屋の前に立っていた。頭上には、『2-1』と書かれたプレート。
そう言えば、アイツはどこのクラスなんだろう。
ふと、頭にそんな考えが過った。
昨日は名前しか聞かなかったから、学年もクラスも知らない。まあ、高等部の制服を着ていたからこの高...巡り会えたこの場所で 3
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寒さも幾分和らぎ、うららかな日差しが暖かく肌を差す。殺風景な木に芽吹いていた新芽はいつの間にか蕾に縮こまり、今や見る人全てを魅了する桃色の花へと姿を変えた。ふわりふわりと舞い落ちる桜の花弁にまみれながら、鞄を持った生徒達は『私立ボーカロイド学校』と彫りこまれた校門へと次々に向かう。授業は午前中に終わ...
巡り会えたこの場所で 1