sunny_mの投稿作品一覧
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<ストーリー>
魔術の生きる、何処かの世界。其処は今、滅びの危機に瀕していた。
僅かずつ、しかし確かに、消失していく世界。
これまでと在り様を変え、ただひたすらに破壊しヒトを襲う、異質な魔物の出現。
抗する術は魔術のみ――力ある者は『塔』と呼ばれる組織に籍を置き、崩壊を食い止める術を求め、或いは魔獣...コラボ概要 【シェアワールド】響奏曲【異世界×現代】
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ふざけんな。と低い声が響いた。
誰の声か。と驚き、あげはがその声の主に目をやると、そう言ったのはタロウだった。今まで少し離れた場所で見守っていたはずのタロウが低い声で悔しげに表情をゆがませて、あげはの母親を睨みつけていた。
「ふざけんな。あんたの娘は、あんたの傍にいたいって、言ってたんだ。自分が...たとえば、の話・15
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タロウとともにおばあさんの家に戻ると、おばあさんと母親と共に、きちんとした感じの妙齢の女の人があげはを待っていた。
あ、この人はじどうそうだんじょの人だ。そう、あげははひと目で気がついた。この女の人とは面識はないけれど、同じ雰囲気の人には何度も会っていたから分かる。いろいろと話をして、これが一番...たとえば、の話・14
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まだわたしが物心つくかつかないかの頃、気がついたらパパがいなくなっていた。単純に仕事で遠くに行ってしまったのか、何かがあって死んでしまったのか、ママと離れることに決めたのか。理由は知らない。ママは教えてくれなかったから。
そしてママはわたしのことをパパの名前で呼ぶようになった。
草一、傍にいて...たとえば、の話・13
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「私、本当は、あんたのこと羨ましかったんだよ。レンに可愛い。なんて言われて、凄く羨ましかった。なのに、なんでそんな不細工な顔してるわけ。こんなの、腹がたつし、凄く悔しい。」
「え、嘘だ。」
吃驚した勢いで、嘘だ。とつぶやいてしまったあげはにリンが、嘘じゃない。と更に声を荒げた。
「こんなことで嘘つく...たとえば、の話・12
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俺はばあちゃんの孫ね。と歌を歌っていた男の人、タロウは笑顔でそう言った。
「ばあちゃんに頼まれたんだ。あげはちゃんって女の子を探せって。だけど俺、君の顔知らないだろ?一応リンを連れてきたけれど、ひとりひとり確認するのは面倒だなって思ってさ、歌ってみた。」
そう朗らかに言うタロウに、あげはは、別に...たとえば、の話・11
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ぼんやりとした面持ちで、あげはは駅前のロータリに設置されていたベンチに座っていた。夜の闇迫るこの時間、公園などに一人でいるのは奇妙に目立つ。その点、駅前ならば丁度ラッシュの時間でもあるからあまり目立たずにすむ。そう考えての行動だったが、どうやら正解だったようだ。
仕事が終わった学校帰り今暇これか...たとえば、の話・10
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「ママ。おかえり。」
息苦しさを覚えながらも、あげはがなんとかそう言うと、母親はただいま。と微笑んであげはの横に立ち、こんにちは。とおばあさんに挨拶をした。
「ええと、草一が何か、、、。」
迷惑でもかけただろうか、と心配そうに眉をひそめる母親に、おばあさんが、違いますよ。と穏やかに首を振った。
「お...たとえば、の話・9
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リンやレンの歌だけでなく、ミクの歌や彼らの姉であるメイコの歌を聴いたり、兄のカイトの今練習中だという曲を聴かせてもらったりしているうちに、時が過ぎ、ふと見上げた空には東から夕闇が迫っていた。
楽しい時間は長ければ長いだけ、終わってしまう瞬間が寂しい。もう家に帰らなくてはいけない時間を示す時計を見...たとえば、の話・8
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留守にしていて締め切っていた部屋の空気を入れ替えるべく、おばあさんが窓を開けていく。それをあげはも手伝っていると、ブン。と鈍い電子音が響き、勝手にパソコンが起動した。
「おかえりー、マスター。」
驚くあげはの目の前でパソコンの中、画面の向こう側に長い髪を二つに結った、あげはよりも年上の可愛らしい女...たとえば、の話・7
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数日後の帰り道、あげははいつもの通学路を歩いていた。太陽の光が日に日に強くなって袖から伸びた肌を焼く。かたかたとランドセルの中で筆箱の揺れる音が、歩くスピードと同調して響く。
角を曲がってすぐ塀からはみ出た庭木がつくる木陰に差し掛かったとき、あげはは、つと迷うように歩を緩めた。かたかた、かたん。...たとえば、の話・6
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誰もいない家に、おばあさんは心配して一緒にいようか。と言ってくれたが、あげはは今度も、大丈夫です。と首を横に振り、ひとり、母親が帰るのを待った。どんなに優しい人であってもむしろ優しいひとこそ、かかわりあってはいけない気がした。
家にたどり着いてほっとしたのだろうか。急激に体温が上がるのを感じた。...たとえば、の話・5
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その言葉に少女が頷くと、おばあさんは微笑みながらそっと少女の手をとり背中を支え、再びソファに座らせてくれた。
そのさらりとしわだらけのあたたかな指先が心地よい。導かれるままに古いソファに腰を下ろすと、じんわりと発熱からくるだるさが少女を襲ってきた。自分が思っている以上に体は辛いみたいだ。と背もた...たとえば、の話・4
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少女が目を覚ますと知らない天井が目に入った。
茶色い木の天井。肌に触れるのはさらさらと少し硬い、洗い立てのタオルケットの感触。頭の下にはふかふかのクッション、寝かされていたのは布張りのソファ。そこは見知らぬ古い家だった。古いピアノ。あめ色に磨きこまれた板張りの床、使い込まれて少し毛足の短い敷物。...たとえば、の話・3
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その日、朝起きたときのだるさは風邪の前兆だったようで、ずっと少女を蝕み続た。結局三時限目の終わり、熱を出してしまい、少女は学校を早退した。
のろのろと、いつもだったら自分と同じ年頃の子供でごった返している、けれど今は人気のない昼前の通学路を少女は一人きりで歩いていた。初夏の、澄み切った濃い青空に...たとえば、の話・2
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たとえば、もしものはなし。
今、自分のいる場所とは異なる、この地球上に存在しないかもしれない、別の次元の場所では、わたしはただ一人きりで生きているかもしれない。
まだ子供だけど大人のように、誰の手も借りずに一人きりであちこちを放浪しているのだ。自分ひとりで生きていけるのだから、きっと人を傷つけ...Master・たとえば、の話・1
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―L・ある孤独なロボットの話―
そっと、眠るリンの頬に僕は触れた。触れるだけで沸き上がる恥ずかしいような慈しむような感情は、僕のモデルであるカガミネ・レンというヒトから由来するものかもしれない。けれど、感じているのは僕だ。そう思った。
眠るリンの体はずっと起動をしているせいで熱いくらいだ。少しは...―L・ある孤独なロボットの話―~ココロ~