No_ritoの投稿作品一覧
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耳を劈くように、四方八方を囲むようにして響いてくる蝉の声。
青く、抜けるように鮮やかに映える空。そこに遠く浮かぶ入道雲。
痛いほどに強く射し込む日差しは校庭の土の水分を飛ばし、ゆらゆらと蜃気楼すら見せる。
気を抜けば暑さにやられてしまいそうな、そんな夏の真ん中で。
それらをまったく気にするそぶりも見...【小説】JBF~Just Be Friends~【書いてみた】
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それは何も変わりの無い。ありふれた日常の繰り返しだ。
毎朝部屋に差し込む朝の日差し、トーストとミルクだけの簡単な食事。
仕上がりよりも速度重視のメイクに、彩度の低い大人しいルージュ。
都会という風景に保護色のように溶け込んでしまうような紺のパンツスーツも、ヒールの無い履きなれたパンプスも。
...【ピアノ×フォルテ×スキャンダル】Piano Forte_1【小説】
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「よっし、できたっ!」
ひとつの机に向かい合わせで椅子を置いて座り、編集作業を始めてから三時間ほどが過ぎ、やっとの事で最後まで編集が終わった喜びから、カイトが両手を上へと伸ばして伸びをしつつ、完成の喜びの声を上げた。
「手間取っちゃったね」
「提出が遅いやつらが悪いんだって」
こまめに進めていた...【小説】ありがとう、さようなら_4【初めての恋が終わる時】
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片腕を、私はまっすぐに伸ばしてみた。
半径八十五センチ。
これが、私の手の届く距離。
そうこれが、私の世界の広さだった。
■■■■My Space My World■■■■
私。巡音ルカにとっての世界というのは、いったいどれほどのものなのだろう。
そう考えさせられるように...【小説】My Space My World ①【ダブルラリアット】
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「遅くなってごめん」
教室の扉の少し前で、たっぷりと深呼吸して心を落ち着かせてから、ミクはゆっくりと扉へ歩み寄ってその引き戸を開けた。
中に待っているであろう人物に向かって声をかけたのだが、一歩踏み込んだ教室の中は無人で、虚しく自分の声が響き渡った。
「あれ? おかしいなぁ」
卒業文集の編集作...【小説】ありがとう、さようなら_3【初めての恋が終わる時】
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「本当に何も言っていかなくていいのか?」
「はい。大丈夫です」
暖房によって暖まった部屋特有のどこか息苦しい重さの空気と、眠気を誘う午後の日差しが普段よりもどこか時間の流れがゆっくりと感じさせる。
普段であれば人の出入りも多く、いつ来てもそれなりに騒がしく感じる場所であるこの職員室も、明日から冬...【小説】ありがとう、さようなら_2【初めての恋が終わる時】
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初めてのキスは涙の味がした-
そう、それはまるで。いつもテレビで見ているドラマのような恋だった。
他の人からみればそうでないのかもしれない。けれど、十五年と少しだけしかまだ人生を歩んでいない私にとっては、それはドラマみたいな。いや、それ以上に素敵な恋だった。
いつものようにせわしなく人達が行...【小説】ありがとう、さようなら【初めての恋が終わる時】