レイジの投稿作品一覧
-
第十一章 反乱 パート2
元部下達との殺し合いというものは心苦しいものだな。
一つ剣を振り、抵抗を続ける黄の国の兵士を薙ぎ棄てたメイコは、ふとその様なことを考えた。反乱は予想以上に上手く進んでいる。城下町は既にメイコ達の手により占領を完了させており、残るは王宮のみという状態であった。その王宮...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) 24
-
第十一章 反乱 パート1
「メイコはまだ見つからないの?」
僅かに口調を強くしたルカがガクポにそう告げたのは、メイコを見失ってから二日後の日中であった。
「はい。残っている兵力の半分を投入しての捜索を続けておりますが、未だ・・。」
微かな疲労を見せたガクポは力なくそう言った。
まずいわ。
...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) 23
-
第十章 夢 パート2
ルカが疲労困憊という様子で黄の国の王宮に到達したのはその日の夕暮が近付く頃であった。馬から飛び降りたルカはすぐに衛兵に至急の要件を伝え、リン女王への謁見の取り次ぎを依頼する。
ひどい空気だわ。
王宮に一歩踏み入り、ルカはそんな感想を持った。空気が悪いとは違う。
怨嗟で満...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) 22
-
第十章 夢 パート1
夢を見ている。
リンはふと、そう思った。夢だと自覚できる程度に奇妙な体験であるのに、まるで現実の様な重みをその夢は放っていた。
なんだろう。この感覚。まるで体験したことがあるみたい。
リンはそう思って、周囲を見渡した。隣を見る。
あたしがもう一人?
隣ですやすやとし...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) 21
-
第九章 進軍
グミとメイコの密談から二週間ほど経ったある日、青の国の王宮で必死に彼の呪いを解く方法を探し求めていたルカは、青の国の王宮が妙に慌ただしいことに気が付いた。
一体何事だろう。
そう考えたルカは、私室から身を乗り出すと、ルカの目の前を大急ぎという様子で歩いていた一人の兵士を呼びとめて...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑳
-
第八章 決意 パート2
「あんた、また来たのか。」
レンが略奪を行ってから数日後のことになる。メイコが行きつけとなっている酒屋に顔を出すと、酒屋の主人は呆れたようにメイコに向かってそう言った。除隊してからというもの毎日のように訪れていたものだから、いい加減顔を覚えられたらしい。僅かに苦笑しながら...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑲
-
第八章 決意 パート1
緑の国の滅亡からもう、一カ月も経ったのか。
ある時レンは、給仕の準備の手を止めて、ふと、そう思った。
季節は秋から冬へと向かおうとしている。その間、黄の国の王宮は様変わりしていた。
そのきっかけの一つにメイコの除隊という出来事があったであろう。赤騎士団だけでなく黄の国...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑱
-
第七章 赤い騎士の除隊
間に合ってくれ。
カイトは祈るような気持ちで、ただひたすらに緑の国に向かって進軍を続けていた。グミが急報を告げてから三日が過ぎている。カイト率いる青の国の精鋭部隊は、強行軍の甲斐あって僅か三日で国境付近の砦まで到達していたのである。
明日にも緑の国に侵入できる。そうすれ...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑰
-
第六章 消失 パート6
その頃、レンはおよそ一千名の兵士と共に王宮への突入を果たしていたのである。
緑の国の王宮は三層立てになっている。馬を下り、使い慣れたバスタードソードを片手に掴んだレン達にまずに立ち塞がったのは、数百名からなる緑の国の近衛兵であった。ネルが率いていた緑騎士団と勝るとも劣らぬ...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑯
-
第六章 消失 パート5
明日から、攻城戦が始まる。
ネルとハクを撃破してから二日後、黄の国の軍は緑の国の王宮の包囲を終えた。
野戦により多少目減りしているとはいえ、黄の国は全軍でまだ二万五千以上の軍容を誇っている。
負けるはずがない。
レンはそう考えて、一つ寝返りを打った。
寝付けない...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑮
-
第六章 消失 パート4
「かなりの被害が出たようだな。」
夜襲を受けた翌日、苦虫を噛み潰したような表情でロックバード伯爵はメイコに向かってそう言った。被害報告は黄の国の死者が二千名に対して、緑の国の死者は数十名に過ぎない。
完敗と言っていい被害であった。
「本日中に敵軍を打ち破る必要がありま...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑭
-
第六章 消失 パート3
黄の国の軍と緑の国の軍が激突したのはそれから三日後のこと。場所はミルドガルド山地であった。
黄の国から緑の国へ進軍するには、まず大陸中央部を縦断しているミルドガルド山地を越えなければならない。それほど標高の高い山ではないが、それでも道は狭くなり、大軍の移動が困難になる地域...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑬
-
第六章 消失 パート2
彼を排除する。
その決意を固めたアキテーヌ伯爵が黄の国の王宮に戻ったのは遠征軍が出立した三日後のことであった。そのアキテーヌ伯爵は閑散としている王宮を見て不信に思い、偶然近くを通った官吏に何事があったのかと尋ねた。
「は、先日緑の国へ遠征軍が出立致しました故に。」
...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑫
-
第六章 消失 パート1
重い雲が黄の国を覆い尽くしていた。
遊覧会から黄の国に帰還した翌日、レンは普段目の覚める時間通りに目を覚まし、体を起こした。リンの私室にあるような、きらびやかな調度品で飾られた豪華なベットとは異なり、レンが普段就寝に使っているベットは従者連中が一般的に使用しているような...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑪
-
第五章 遊覧会 パート2
遊覧会は例年三日間に渡って開催される。一日目は晩餐会と各国の官僚同士の挨拶で終始するということが例年の相場であった。
それは今年も変わりなく、正装に着飾ったリンは他国の貴族連中からの挨拶を延々と述べられることになったのである。その間、時間のできたレンは少しだけ散歩をする...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑩
-
第五章 遊覧会 パート1
季節が巡り、再び夏がミルドガルド大陸に訪れた。
黄の国では例年通りの季節風がふんだんに吹き、雨が十分に降り注いだが、一度壊滅的な打撃を受けた農村がそれだけで回復する訳がない。無策のリンは農業に対して何も対策を打たず、農村の生活は相変わらず困窮したままであったのである。
...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑨
-
第四章 青の国の王子
大分動きが良くなったな。
青の国の国王、カイト王は眼下に広がる兵士たちの動きを観察しながらその様な感想を持った。現在カイト王の指導のもと、青の国全軍による野戦訓練が行われているのである。場所は青の国の王宮からほど近い平原であった。紅白に分かれた軍が訓練用の木刀や刃の付いてい...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑧
-
第三章 緑の国の女王
「ミク、また手紙が届いているわ。本当にモテモテね、あんたって。」
緑の国の女王、ミクに対して遠慮のない言葉を放ちながら緑の国の謁見室に現れた人物はネルという。明るい金髪をサイドテールにした髪型が特徴である彼女は、ミク女王に向かって半ば放り投げるようにして手にした手紙をミクに...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑦
-
第二章 魔術師ルカ パート3
少し表情を暗くしたルカが再びリンの前に現れたのは翌日の午後であった。
一度リン女王陛下に黄の国を襲っている飢饉の状況についてご忠告申し上げないといけない。
そう考えたルカではあるが、さて、どのように伝えるものかと思案していると、リンの方から呼び出しを受けたので...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑥
-
第二章 魔術師ルカ パート2
「ルカ様!」
ルカがガクポを連れて王宮に到達すると、出迎えに来ていたレンが大きく手を振りながら笑顔を見せた。
相変わらず、元気みたいね。
ルカはそう考えながらレンに対して軽く手を振り返し、こう答えた。
「久しぶりね、レン。調子はどう?」
「上々です。相変わら...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ⑤
-
第二章 魔術師ルカ パート1
農耕技術が発達していないこの時代、農作業は天候との戦いであり、運任せであり、神頼みであった。平年通りの気候に恵まれればそれなりの収穫が見込めるが、気候の変動があった時、この時代の農業は果てしなく弱かったのである。昨年の黄の国を襲った乾燥はまず地方の農村経済を直撃した。...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ④
-
第一章 黄の国の暴君 パート2
剣の訓練を終えたレンは汗に汚れた訓練着を脱ぐと、普段召使として使用している、少年の身には少し威厳がありすぎる執事服に着替えを済ませた。時刻を見る。
「ああ、もうこんな時間だ。」
時計の針は午後二時半。そろそろリンのおやつの時間だった。一日で唯一の楽しみの時間であ...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ③
-
第一章 黄の国の暴君 パート1
「レン!遅いわ!もうおやつの時間だわ!」
その言葉が王宮内に響いたのは午後三時、春先のうららかな一日の言葉であった。特に物珍しい光景でもない。場所はミルドガルド大陸西端に存在する黄の国の王宮。声を上げたのは黄の国で昨年即位したばかりのリン女王陛下であった。輝くよ...悪ノ娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作) ②
-
プロローグ
それは夜。
月明かりすらない新月の夜、静まり返った帳の中で、一人の男が不安そうな表情で腕を組み、苛立ったように軽く足踏みをしていた。まだか、と思いながら固く閉じられた扉を眺める。もう何度目になるか分からない行為である。視線を送ったところで開くものでもないとは分かっているのだが、それで...悪の娘 小説版 (VOCALOID楽曲二次創作)