「やだぁ、レンくんってば!」
「えー?いいじゃん、別に」
「レンくんチャラーい!」
「そーよぉ!きゃはは!」
「そんな俺と遊びたいって言ったのは、お前等だろ?」
女って、ほんと簡単だ。
ちょっとでも優しくしてやれば尻尾振って、目を輝かせてついて来る。
「じゃあね、俺もう眠いから」
「えー?」
ぐずる女達を冷たくあしらい、俺はフワリと地から足を浮かせた。
―何故地から足を浮かせてられるか?そんなの簡単だ。俺は幽霊なんだから。
「あー、眠い」
と言っても、空を飛ぶには死後10年もかかるけど。
森の奥の廃墟に俺は住んでる。仲間達と。廃墟は静かでいい。森の奥だから、人間が面白半分で来るなんてことがないし。
「―ん?」
耳を澄ませると、どこからか声が聞こえた。
「-ぅ--ぇ-----!」
「森からだ」
何か面白いことでもあるかな、なんて俺は少し期待を抱き森の方へと降りていった。
森に降りて、声のする方へと向かう。
「―ん?」
よく見ると、少し先に人間の子供が座り混んでいる。
人間を見るのは久しぶりで、俺は興味本意でゆっくり近づいた。
「ひっく、」
頭に白いリボンをのっけて、ふわふわなワンピースを着ている。でも、何度も転んだのかワンピースも脚も汚れている。
「マ、マ…。ひっく…」
小さく縮こまって座るその子が、なんだか可哀相に見えてきた。
伏せられた長い睫毛が濡れていて、思わず頬を触ってしまった。
すると、その子供はビクッと体を揺らして目を大きく見開いて周りを見渡した。
―ああ、そうか。人間に俺は見えないんだな。
「こ、わいよぉ…」
子供は俺のせいで余計に怯えてしまった。
仕方なく俺は、近くに生えていた花で指輪を作ってその子の小指に嵌めてやる。
「…、?」
その子供は、いつの間にか指に嵌められていた花の指輪を見るなり、涙がピタリと止まった。
「す、ごぉい……。だあれ?おばけさん?」
キョロキョロと周りを嬉しそうに見渡すその子は凄く愛らしい。
「リンね、リンって言うんだよっ」
先程まで泣いていたのではなかったか?
子供とは実に単純である。
「リン、優しいおばけさんなら怖くないよ!」
「―優しくなんかないよ」
「リン、おばけさんを見てみたい!」
「―人間には見れないよ」
「リン、おばけさん大好きだよ!」
「だ、いすき…?」
大好き、だなんて言われたのはいつぶりだろうか。
生きてた頃から嫌われものの俺だから。
それが嬉しくて、俺はリンの額にキスをした。
そして、近くの木の枝を折る。
人間から見たら、枝が独りでに折れて浮いているという不思議な絵面だろうな。
「―こっちだよ」
「そっちなの?」
聞こえてるわけじゃないのに会話が成立した。少し嬉しい。
木の枝で、街の方まで導いてやる。
「おばけさんは独りぼっち?」
「仲間と住んでる」
「へぇ、一人暮らしなの?いいなぁ。でもリンは、まだママ達といたいなぁ。おばけって楽しい?」
「縛られるものがないからね」
「泥棒したことあるの?すごぉい!おばけさんもご本読むの?」
「俺はあんまり読まないけど、ルカが読んでるかな」
「シンデレラ、可哀相だよね!リンが魔法使いだったら、あのお家からすぐ出してあげるのに。おばけさんは好きな人いるの?」
「いないよ。俺には、そんなのいらないし。ていうか、シンデレラはハッピーエンドで終わるよ。最後まで読んだの?」
「そっか。じゃあ…リンがおばけさんのお嫁さんになる!」
「―そうだね、って……えぇ?!」
ビックリして思わず木の枝を落としそうになった。
もう向こうから明かりが見えてる。街についたんだ。
「リンね、ウェディングケーキ食べたい!」
「ウェディングドレスを着たいんじゃないのか…」
「おばけさん、リンの前きてしゃがんで」
リンに言われた通り、俺はリンの前でしゃがんだ。
すると、リンの可愛い唇が俺の瞼に触れた。いや、実際は触れないんだけど。
「だからね、おばけさん。リンのこと覚えててね!リンがおばけさんのお嫁さんだよ!」
そう言うと、リンは明かりのあるほうへと走っていった。
俺はただただ、リンの遠ざかる背中を見つめることしかできなかった。
「…」
シンとした森で、俺はゆっくり瞼を触った。
「――――」
頬が紅潮するのがわかる。
「リン、…」
―そう、これが俺の初恋なのだ。
-第1話END-
コメント0
関連動画0
オススメ作品
誰かを祝うそんな気になれず
でもそれじゃダメだと自分に言い聞かせる
寒いだけなら この季節はきっと好きじゃない
「好きな人の手を繋げるから好きなんだ」
如何してあの時言ったのか分かってなかったけど
「「クリスマスだから」って? 分かってない! 君となら毎日がそうだろ」
そんな少女漫画のような妄想も...PEARL
Messenger-メッセンジャー-
さあ
船出を祝って旗を揚げよ
御囃子に合わせる手拍子
渡り鳥が示す楽園
ずっと
描きたくて
見つめるだけの画用紙が今や
地図となっている
さあ
舞台を見上げて光灯せ...六拍子御囃子 / MEIKO KAITO 初音ミク 鏡音リン 鏡音レン 巡音ルカ
IMO
「Fight!」φミント
殴っても殴っても
書き現せない地図を目指せ!
Go!away
ちっとも笑えないね
だって僕らきっと
仲間なんて言えない
ただの馴れ初めだから
集まるだけが
強くなれる秘訣だとしたら...「Fight!」φミント
ミント
1A
ボクの世界は暑くて寒くて
ちょうどいいなんて
調子良くないよな
苦しいって叫んでみたって
誰にも伝わりゃしないんだ
1B
ヒカリってすぐ消えるのに
何を期待してるんだろ
夜が怖い、朝も怖い...live song
ハルピコ
A1
幼馴染みの彼女が最近綺麗になってきたから
恋してるのと聞いたら
恥ずかしそうに笑いながら
うんと答えた
その時
胸がズキンと痛んだ
心では聞きたくないと思いながらも
どんな人なのと聞いていた
その人は僕とは真反対のタイプだった...幼なじみ
けんはる
君は王女 僕は召使
運命分かつ 哀れな双子
君を守る その為ならば
僕は悪にだってなってやる
期待の中僕らは生まれた
祝福するは教会の鐘
大人たちの勝手な都合で
僕らの未来は二つに裂けた
たとえ世界の全てが
君の敵になろうとも...悪ノ召使
mothy_悪ノP
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想