「リン…!!
僕の、言うことを聞いて…?
リン、君は生きて罪を償わなきゃいけない。
…外の世界を、ちゃんと知らなきゃいけない…。
だから、逃げてよ…リン!!」

「………やだ、やだぁ…レン…!」

「……………。
リン、僕の最初で最後の我が侭を聞いてよ。」

「……ズルいわ、レン…。」

優しくおでこにキスして笑う僕に、リンは観念したように言った。
そして、リンはクローゼットから一番のお気に入りのドレスを取り出して、僕に渡した。

「……バイバイ、リン。
よろしくね…レン…。」

「……………。」

“僕”になったリン。
“リン”になった僕。
僕は涙を堪えて、笑った。
リンは俯いたまま僕に背を向けて、隠し通路に消えていった。

「さ…今から少しだけ、王女様だ。
きちんと、やらないとね…。」

僕は涙の痕を綺麗に拭き取って、リンそっくりの笑みを浮かべる。
そして、その直後に彼らは“僕”の部屋に踏み込んできた。
赤き鎧の女剣士に、青の王子、そして遠くから僕を睨む赤い髪の少年。
僕はリンが言いそうなことを言って、あっけなく捕まった。

「…王女よ、ここで処刑の時が来るまで待つがいい。
せいぜい…恐怖に震えているんだな。」

あの女剣士に似た顔立ちの少年が、憎しみと怒りが隠しきれぬ声で言う。

「…………。」

「……………っ。」

それに僕は、黙って嘲笑を返した。
少年の顔がみるみるうちに歪む。

ガシャーン!

そして、牢屋の鉄格子が降りる冷たい音が響いた。
…あと、どれくらい“僕”は生かされるのだろうか。
数時間か、数日か。
どちらにしろ、残された僅かな時間で僕の出来ることは限られていた。
でも、僕が最期にしたいことは決まっている。
ただ、祈りを捧げるだけでいい。

“どうか、神様…リンが無事に逃げられますように…”

“リンが、外の世界でも幸せに生きていけますように…”

そして、最後の願いはリンへ。

「リン…もしも生まれ変われるならば、その時はまた遊んでね…。」


Fin.

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

『鎮魂歌はいらないよ、姫(レクイエム)』6

少し長かったかな…?
でも、最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!

嗚呼…、スッキリしたぁ~!
書けて良かった~!

閲覧数:1,635

投稿日:2010/09/06 01:29:54

文字数:868文字

カテゴリ:小説

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