雪の降った日
手袋を持ってこなかったボクに、キミは自分の手袋の片方を貸してくれた
手袋をつけてないボクの右手と君の左手をギュッと握って、「これで寒くないね」と言ったキミの笑顔が、ボクの心を不思議とポカポカと温めた
ボクは家につくまで、キミにこの「ドキドキっ」ってうるさい心拍数が聞こえないかとっても不安だった
花が咲いた日
キミは「桜が綺麗だよ」と嬉しそうだった
ボクは桜なんかよりも、キミのほうがずっと綺麗だと思った
それを直接口にすることは出来なかったけれども
太陽が眩しい日
ボクはキミの誕生日にキミの好きなものをあげた
キミはとっても喜んでくれた
ボクはキミがこの世界に生まれてきたことに喜んだ
紅葉が枯れた日
紅葉が枯れたはずなのに、何故かボクの視界は真っ赤だった
雪が降った日
ボクがキミのことを「好き」だと思うようになったときのように、キミは笑ってくれない
ボクがキミのことを「好き」だと気づき始めたときのように、キミは花を見ても嬉しそうにしてくれない
ボクがキミのことを「好き」だと伝えたかったときのように、キミは表情一つ変えない
ボクがキミのことを「好き」だと伝えようとしたときのように、キミは動かない
どうして? キミのために手を握ってあげてるのに
どうして? キミのために桜の花を咲かせたのに
どうして? キミのためにキミの好きなものを用意したのに
寒いよ
温めてよ
キミの笑顔で
見たいよ
桜よりも綺麗な
キミの顔
好きだよ
世界で一番
キミのことが
嘘でしょ
ボクがキミを
殺したなんて
*-*-*-*-*
本屋。
青髪の少年の青色の眸に一冊の本が止まった。
彼は数秒間見つめていると、本棚からその本を取り出し、立ったままページを開いた。
が、1分も経たずに本を閉じてしまった。
しかもその表情は見るからに不機嫌そうだった。
それに隣で彼の一連の行動を眺めていた茶髪の少女が、不思議そうに言った。
「そんなに面白くなかったの、その本」
「うん、全然面白くなかった」
「へぇ……どういう内容なの?」
少女は彼から本を受け取り、黙々と読み始める。
しかしスグに「ぷっ」と吹き出すと、次第に大声を上げて笑い出した。
ギョッとする彼に、少女は目に涙を溜めながら言う。
「ちょっと始音クン! コレスゴイ面白いじゃん!」
「……はぁ!? 何処が!?」
「アタシ、こういう『グチャグチャのドロドロで救いようのない話』好きなのよ!」
「グチャグチャのドロドロって……咲音って悪趣味な性格してるんだな」
始音のストレートすぎる言葉にも、咲音はニコニコ顔で「うん、よくレンクン先輩にも言われる」と答えた。
思わず「ドSな先輩にも言われるって……」と呟いたとき、後ろからポンと右肩に手を置かれた。
始音が恐る恐る首だけ後ろを振り向くと、「キラキラ」という効果音がついた笑顔の金髪の少年──鏡音がいた。
始音の顔が一瞬で真っ青になったことに気づいているのかいないのか、鏡音はその表情のまま口を開いた。
「へぇ、始音君は『グチャグチャのドロドロで救いようのない胸糞悪すぎて反吐が出る話』が好きなのかー」
「そ、それは俺じゃなくて咲音のほう……」
「じゃあ、この本は始音君の誕プレにしてあげるよ!」
「えっ!?」
驚きの声を上げる始音だったが、鏡音がスグに「もちろん嬉しいよね?」と聞き返すものだから、何も言えなくなる。
「アハハ、良かったよ。君が好きな本を選ぶことが出来て! やっぱりプレゼントは本人に選ばさせたほうがいいよねー!」
「えー? 私はBL小説のほうがいいと思う!」
「初音は黙ってて。っていうか腐海に帰ってくれる? いるだけで気分悪くなるんだよね。今ならお前のその腐った脳みそが入ってる脳天にこの本をクリーンヒット出来そうだよ」
「鏡音ちゃんったら手厳しすぎー! 腐ってても女の子だから、もうちょっと優しく扱ってよね?」
「はっ、モンスターの間違いじゃないの?」
「酷ーい!」
鏡音と緑髪の少女──初音の口喧嘩に、始音は小さく溜息をついた。
チラリと隣を見ると、咲音は無関係だといわんばかりに本を読んでいた。
どうやら喧嘩を止める気はないらしい。
きっかけは咲音の一言だった。
放課後、一番最後に部活にやってきた咲音が、入ってきたなり誰かから聞いたのか俺に「お誕生日おめでとう」と言ったのだ。
別に誕生日を祝ってくれるのは嬉しいが、どうして鏡音先輩の前で言うんだ。
この人に知られれば、何かちょっかいを出されるに決まってる!
案の定というか、鏡音は分かりやすいほどの笑顔になり、始音に本を買ってあげると提案してきたのだ。
元々あまりやることがなかったため、本屋に4人全員で行くことになり……今に至る。
大方、始音の「苦手な本」を買うつもりだったのだろう。
だからこの人は苦手なんだ……
「……咲音のせいだからな」
「あー、そう。それより見てみてカイトクン。この本も面白いよ」
「どうせまた救いようの無い話なんだろ……」
「うん。不幸な主人公が他のパラレルワールドの自分が幸せなのに憎んでて、他のパラレルワールドの自分を次々と殺していく話」
「…………」
始音は心の中で問うた──今日はホントに自分の誕生日なのかと。
そんなパラレルワールドの話。
この世界の「始音」は、とても幸せだっただろう。
【カイト誕】始音という少年が青が好きという世界での2月14日
全然祝ってる感じがしないのは何故でしょうか
書いてる本人がカイメイなのか分からなくなった←
■第一部──実はこっちメインで書いてました。いつかこれの小説を書けたら書きたいです
■第二部──高校が決まったら、兄さんが主役のバトル学園モノ(ここらへん未定)のを書こうと思って、伏線張るために書いたらいつの間にか「やっぱりこれパラレルにしよう」ってなった結果
■まだ兄さん誕始まってないそうなので、2月17日に別の奴書きます
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