暗い、暗い、闇夜。

 月すらも隠れて、灯りのない闇夜。

 僕は長いこと、泣き叫んで泣き叫んで、声が枯れても泣き叫んで。

 いつしか、僕の喉はどんな声を出そうとしても出せないほど枯れつくしていた。

 ミクも―――――こんな気分だったのかな。

 何かを伝えたくても、もう声が出せなくて。

 なにも―――伝えられなくて。


 「………。」


 無言のまま、僕はつきっぱなしのパソコンの画面を見た。

 相変わらず、ミクはマウスパッドの上で横たわっている。幸せそうな顔をしたまま。


 「………ミ……ク……。」


 僕は枯れた喉で、声ともつかないような声でつぶやいた。


 「……僕は……無力だ。ガラクタ一つだって……救えやしない……。……ごめんよ……ミク……ごめんよ……。」


 思い出す。ミクの全て。楽しそうなあの声を。

 ミクの絵のマウスパッドを見た時の嬉しそうな言葉を。


 『わぁあ……!こんなに上手な絵描いてくれたの……!?あたしも描きたいなぁ……!』


 転がったビー玉と砂時計を見た時の楽しそうな言葉を。


 『あたしが外に出れたら、あそこでくつろいでいい?……なんちゃって♪』


 窓の手すりを見た時の羨ましそうな言葉を。


 『あそこから見る夕日……綺麗だろうなぁ……。』




 想いがあふれてくる。頬を伝っていく。

 涙になって、ぽつり、ぽつりと頬を濡らしていく。

 ミクの笑顔が、鮮やかに浮かび上がって―――




 『ずっと―――――一緒だよ?』




 「ミク―――――――――」


 頬を伝った涙が、ぽたりとミクのそばに落ちた――――――――――――








 ――――――――――――――カッ!!!








 一瞬だった。

 突如パソコンから眩いばかりの光が放たれた。驚いた僕は椅子ごとひっくり返ってしまった。

 放たれた光は渦を巻きながら柱を作り上げる。更にその柱からも光が放たれる。

 いつしか僕の部屋は、虹色の光で満たされていた。

 あまりの眩しさに目をつぶっていた僕は、しばらくしてうっすらと目を開けて、そこに信じられないものを見た。





 青緑の光が、人型に現れた。光は輪郭を露わにしてゆき、突如、実体化を起こした。

 銀色に輝く衣装。棚引く青緑のツインテール。黒いブーツが、袖が、次々と現れていく。

 ああ、まただ。夢みたいで、信じられないけど。

 確かに僕の前にいるんだ―――等身大の、初音ミクが。


 「あ……あああ……!!ミク……ミク……!!」


 ゆっくりと目を開けたミクが、僕に向かって微笑む。とても優しい笑みを浮かべる。


 『……ありがとう。あたしの為に、泣いてくれて。』

 「あ……ミク……ごめんよ……そして……ありがとう……!!」


 涙が止まらない。さっきとは違う涙が、溢れてくる。

 その時、僕とミクの間に一枚の紙が舞い降りてきた。

 それは楽譜だった。さっきまで僕が書き続けていた楽譜だった。


 (……!)


 瞬間、僕の脳内に一気に言葉が湧き上がってきた。

 ああ、なんてこった。ミクがいるだけで、こんなに言葉が湧き上がってくるのか。

 僕は鉛筆を取り出し、再び歌詞を書き出した。


 『……それは?』


 ミクが上から覗き込む。僕は涙を拭いつつ、歌詞を書きつつ応える。


 「これはミクと……そして僕の物語。」


 そうだ。全てこれはミクと僕の物語だ。


 ミクの眠りが信じられず泣き叫んだことも。ミクを救えない自分の無力さに涙を流したことも。


 全てすべて、僕たちの紡ぐ物語なんだ。


 「ミク……やっぱり僕には君が必要だ。今まで全然浮かんでこなかった言葉が、君がいてくれるだけで湯水のように湧いてくるよ。」


 僕のそんな言葉に、ミクも笑って言葉をそろえる。


 『……うん。あたしも同じ。君といるだけで、言葉がどんどん浮かんでくるよ。そして……たぶん同じ言葉、思い浮かべてると思う。』


 ああ、僕も感じるよ、ミク。僕らの紡ぐ言葉は、きっと同じだ。

 僕はミクの目を見て、そして頷いて、歌詞を声に出して紡ぎ始めた。





 「【その時 世界は―――】」


 ミク。僕はようやくわかったよ。僕たちはどんな時でも一緒にいるんだ。


 『【途端にその色を、大きく変える―――】』


 あたしもわかるよ。どんな時でも一人じゃないんだってこと。


 「【悲しみ―――】」


悲しいことも、


 『【喜び―――】』


 楽しいことも、


 「【全てを一人と―――】」


 何もかもわかった。


 『【一つは知った―――】』


 あたしたちは―――やっと何もかも知ることができたんだ。


 「【言葉は歌になりこの世界を―――】」


 さぁ……もう一度、世界に届けよう。


 『【再び駆け巡る君のために―――】』


 君だけの―――ううん、あたしたちだけの言葉を―――!


 「【その声に、意志を宿して―――】」


 ミクの声で―――僕たちだけの想いを届ける―――!!


 ODDS&ENDS。僕らはガラクタ。半端物。

 だからこそ、共に生きる―――――!!


 僕はミクに、楽譜を手渡した。



 「―――僕の想い。託すよ―――ミク!」

 『――――――――――うんっ!!』






 さぁ―――――世界へ――――――――――!!





 『今―――――想いが響くっ!!』

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【自己解釈式二次創作風小説】ODDS&ENDS~歌姫《ガラクタ》と僕《ガラクタ》の二重奏《デュエット》~⑤

クライマックス!!こんにちはTurndogです。

DIVAのPVではここでもう思いっきり泣く!
もう涙腺耐え切れませんw

さぁ次回!……え、終わりじゃないのかって?

なんと!衝撃の結末が!

閲覧数:285

投稿日:2013/02/28 23:54:12

文字数:2,311文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    え、おわりじゃないの?w

    やっぱり、ミクちゃんはかわゆいw←

    2013/03/04 23:57:51

  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    嗚呼……
    泣きそう……
    どうしてこんなに、歌詞とお話がしっくりぴったりジャストフィットなのか……
    すごいです……

    2013/03/03 09:01:50

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