あるところに、ちいさな「ゆめ」がありました。
だれがみたのかわからない、それはちいさな「ゆめ」でした。
しかしその「ゆめ」をみたひとは、めがさめてしまいました。

「ゆめ」は、ひとにみてもらうために、あるのです。
だれもみてくれないと、その「ゆめ」は、
きえてしまうのです。
きえてしまうのです。
ちいさな「ゆめ」はおもいました。

このままきえていくのは、いやだ。
どうすれば、ひとにぼくを、みてもらえるだろう。

ちいさな「ゆめ」は、かんがえます。
かわいいおかおを、おもいっきりしかめながら、かんがえます。
ちいさなゆめは、かんがえてかんがえて、ついにおもいつきました。



   人間を自分の中に迷い込ませて、世界を作らせればいい。



「ゆめ」のかわいいおかおは、ゆがんでしまいました。


 彼女は、そこに立っていました。夜の森の入口。闇の入口。
 そこで、彼女は見つめています。奥に見える、真っ赤な林檎を。血のような色を。
 彼女は、引きつけられるように森に入って行きます。そして、虚ろな瞳でその林檎に手をのばします。
 しかし、『これを食べてはいけない』と、本能が拒絶しました。彼女は、引き戻します。引き戻ろうとします。

          しかし、彼女の意識とは裏腹に、
          真っ赤な林檎に手をのばします。

 そして、林檎は彼女の口に入ります。

 最初、林檎は、普通の、ありふれた林檎でした。

 けれど、口に運んだ途端、林檎のどこからか赤い汁が垂れてきます。それは、『血』です。
 それが、彼女の手の甲に落ち、ダイヤを形作ります。


             《ようこそ、アリス》


 声が降ってきました。
「………誰?誰なの?」
 彼女は問います。けれど、その問いはあっさり無視されます。

             《さぁ、その剣で進んで》

 見ると、彼女の手には剣が握られていました。もちろん、先ほどまで彼女は何も手にしていませんでした。彼女は言います。
「嫌!この先には進まないわ!私は、家に帰るの!!」
 彼女は振り返って、来た道を戻ろうとします。
 ――けれど。

              《どこに、帰るって?》

 振り返った先は、真っ暗でした。彼女は、その闇に脅えます。震えます。そして、戻れなくなりました。
 そして、声が繰り返します。

               《進んで、アリス》

 彼女はその声に言い返します。
「私は、アリスじゃな…」
 しかしその声は遮られます。

                 《進め》

 瞬間、剣を握った手が引っ張られます。
「何…!?」
 手の先を見ると、剣がひとりでに動いていました。彼女はその剣を手放そうとしますが、それは叶いません。ぐいぐい、森の奥に引き込まれて行きます。
 そして、引っ張られて行った先には、人が、1人歩いています。
 剣は勝手に振り上げられ。
 そして。

                ザシュッ。

 人を、殺しました。
「あ………」
 その返り血が髪に飛び、真っ赤に染まりました。残った血は、道になります。真っ赤な道に。
 また、声が言いました。

          《さぁ、道を作りなさい、アリス》

「いゃ…」
 そこまでで、彼女の思考は消えていきます。黒く、塗りつぶされます。森の闇に、呑まれていきます。そして、再び意識が戻った時には。
「はは、ははははははははははははははははははははははは」
 笑います。血を見て、笑います。そして、今度は自分の意思で人を切り裂きます。
 そして切り裂かれた亡骸は、道を作ります。真っ赤な道を。
 しかし。

 その笑い声は、森を呼び覚ましてしまいます。

 そして、樹の蔓が彼女に延びます。そして、引きずりこんで行くのです。でも、彼女は笑い続けます。彼女は狂い続けます。

 彼女は罪人のように捕えられます。
 そして、永遠に森の奥に閉じ込められました。
 それでも、彼女は笑い続けます。

 彼女の血は、紙に楽譜を書きました。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

人柱アリス Ⅰ‐赤のダイヤ‐ (グロ注意)

勢いで書いちゃいました

妄想イヤッフゥ!

閲覧数:275

投稿日:2010/01/23 08:06:12

文字数:1,713文字

カテゴリ:小説

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