一人は十字架に抱かれ、ただ空を仰ぐ。
一人は十字架に魔女を繋ぎ、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「罪深き魔女よ、悔い改めよ!
献身は虚無と化した。
いまやそなたの中の総てが、道を外れて狂っている!」
‘‘聖職者’’であるミクが、神威の隣で叫ぶ。
「この魔女を野放しにしておけば、死が我等にのしかかる!」
ミクがそう言うと、集まっている民衆も叫び出す。
『魔女よ、悔い改めよ!』
十字架に縛られているルカの顔は、泣いていた。
(確かに私は魔女だけど、魔術なんか使ってない!)
むしろ‘‘魔女’’として魔術を使っていたのはミクだが、ミクの魅了する魔法に囚われている彼らにはそんなことはわからない。
ルカが何かを言おうといしているのに気づいたミクが、叫ぶ。
「悪魔を呼ぶ悪しき呪文を叫ぶ前に、王子から何か一言を!」
一方、神威の顔は悔しげな表情だった。
そして、静かに声を発した。
「…かの罪なる魔術に、審判を」
それにニヤリと笑ったミクは、処刑人に言い放つ。
「処刑人よ、悪しき魔女に聖なる炎を放つがいい!」
そして民衆から歓声が上がる。
ルカの瞳は、悲しみと怒りを浮かべていた。
(どうして…どうしてこんなことに?
嫌だ、私は何もしていないのに死ぬのは嫌だ!)
「罪人よ、何か言い残すことは?」
(そうよ…逃げる為には、これを使うのは仕方ないわ)
そしてルカは言った。
「この王子への愛さえ魔術なのだと言うのであれば…憎しみの炎を放つがいい!」
そして、ルカを縛る十字架に火が放たれた。
「あら、魔女さん?
用件はそれだけでいいのかしら?
なんならもっと言ってもらってもかまわなくてよ?
ま、髪が短いから魔術を使うのは無理でしょうけど」
ミクが皮肉っぽく言うと、ルカは笑った。
「…は、あははははっ!
もっと言わせてくれるのならば、遠慮なく!」
そして、静かに告げる。
「…Penitenziagite!(悔い改めよ)
Opus transit in otium(献身は虚無と化した)
Penitenziagite!(悔い改めよ)
La mortz est super nos!(死が我等にのしかかる)」
「呪文を唱えたって無駄よ!
よほど高い魔力を持った者でない限り、この状況で魔法は使えないわ!」
ミクが言うが、ルカは構わず続ける。
「…Penitenziagite!(悔い改めよ)
Virtus migrat in vitium(美徳は悪徳と化した)
Nunc cuncta rerum debita(いまや総てが)
Exorbitant a semita(道を外れて狂っている)」
「おい魔女!魔法を使ったって、そうにもならないぞ!」
「そうよ!」
民衆が口々に叫びだす。
「…かく虚しき人の愚かしさといったら。
そちらこそ悔い改めたほうがいいんじゃないの?
ほら、あの夕日の赤は燃え続けているわよ?」
そんなルカに、ミクは言う。
「それと夕日になんの関係が…」
言いかけて気づく。
(…確か、魔術を使わない魔女は、魔力を使わないわけだからかなり魔力が高い。
それに、その強力な魔力を宿した魔女は、自分が危ないときに夕日の赤が燃えていれば、あの呪文で逃げることができる…
まずい!)
「やめなさい!」
「Penitenziagite!(悔い改めよ)
Opus transit in otium(献身は虚無と化した)
Nunc cuncta rerum debita(いまや総てが)
Exorbitant a semita(道を外れて狂っている)
Penitenziagite!(悔い改めよ)
La mortz est super nos!(死が我等にのしかかる)」
そして…ルカの背中に、黒い大きな翼が現れた。
ルカはぽつりと呟く。
「この赤く燃ゆる火のような、血の涙の理由を忘れるな」
ルカは自分を縛っていた縄を引きちぎった。
「それと、魔女も魔力の源を知っているのは魔女だけだ…
それを‘‘聖職者’’であるはずのミクが知っていたということを、まず疑え」
「!? 言われてみれば…」
「あッ…しまった!!」
そして、言い捨てる。
「民衆、ミク、それから王子。自分達が犯した過ちを、後悔するのだ」
ルカは、空へ飛び立った。
ルカの最後の言葉を理解した神威は、その場に崩れ落ち、泣き叫んだ。
「う…うわあああああああああああッ!!」
その手には、漆黒の羽が握られていた。
そして言う。
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