気のせいか、外が忙しない空気に包まれていた。足音や人の声が何度か聞こえる。明らかに面倒事っぽいんだよな…。嫌な予感がしつつドアを開けると、丁度ルイと出くわした。

「あ、フノオ君。ねぇ、浬音ちゃん知らない?」
「は?」
「居ないみたいなのよ、ハレルさんや皆で探してるんだけど全然…。帽子屋さんも
 見ないし…どうしたのかしら?」
「あ、帽子屋なら確か今日居ないよ。本社に行ってるとか聞いた。」
「そうなの?もう…肝心な時に…。とにかく、見つけたら連絡して、頼むわよ!」

俺の返事を待たずに走り去ってしまった。つくづく面倒事起こす奴だな…。少々呆れて溜息が出る。と、口元を押さえて青い顔で立っている人影があった。

「……………………。」
「…メオ?どうした?顔色悪いけど…?」
「…し、知らない…!」
「ちょ…待てって!真っ青だぞ?風邪でも引いたんじゃないか?」
「ちが…違う…あ、あたし…あたしこんなつもりじゃ…!」
「え…?」
「し、知らなかったの!帽子屋さんならすぐ助けるって思って…本当に知らなくて!」

震える手と声で事態を把握した。

「何処に居る…?」
「…え…?」
「浬音は何処だ?!」
「き…機材倉庫…そ…外の…。」
「…判った…。」
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!あたし…あたし!」
「良いから聞け!…彼女は俺がふざけて倉庫に閉じ込めた。お前は…俺に脅されて、
 皆にそれを黙ってた。誰かに聞かれたらそう言え!良いな?」
「え…?」
「お前は何もやってない!何も知らない!良いな?!」

目を泳がせながら頷いたのを確認すると倉庫へ走った。どうしてそんな事を言ったのかよく判らない。だけどあのまま放って置けばメオは皆に責められて、追い詰められてしまうと思った。責められて、追いやられて、居場所が無くなれば…多分…。

「…何やってんだ…俺は…。」

一人でも居なくなれば一億円が近付くんじゃないか…誰が消えようが関係無い…見捨てりゃ良いのに…。

「どうしたの?」

ホラ何やってんだよ?下手すりゃ俺の立場が危ないっての。一言言えば良いんじゃないか、朝吹浬音を閉じ込めたのは焔音メオだって…そうだよ、言えばそれで終わるんじゃないか…ただ一言…一言で…。

「機材倉庫だ。」
「え?」
「…朝吹浬音は俺が機材倉庫に放り込んで閉じ込めた。」
「な…っ?!」
「お前っ…!本当なのか?!この暑い中あんなとこ閉じ込めたりしたら死んじまうぞ!」
「あの女がヘラヘラ尻軽な真似してたからムカツいたんだよ!」
「ムカツいたからってやって良い事と悪い事があるでしょう?!」
「止めろ!とにかく本当なら早く倉庫へ行かないと!」

皆がバタバタと走り去った後、深い溜息を吐いた。

「GAMEOVER…かな?」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-83.著莪-

そこ、庇いますか

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投稿日:2010/08/22 07:11:45

文字数:1,157文字

カテゴリ:小説

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