>>03
街には、俺たち以外にもゲームをしている奴らが大勢いた。まぁ、当然か。
見分け方は、パートナーがいるかいないかだ。いなければゲームの中だけの人物、いれば俺たちのようにこのゲームをプレイしている人間って具合だ。
ここへ移動する間に、俺はルカから戦い方を学んだ。学んだって言っても、聞いただけで実践なんかしちゃいないが。
この世界では、人間はパートナーに指示を出すだけでも十分やっていけるらしい。ラジコンみたいなもんかな。
一応ジョブってのがあって、選べるみたいだが・・・ハルは選んでないみたいだ。中にはそういう奴もいて、決めずにいろんなことをするらしい。ハルの場合、運動神経そんなに良い方じゃないから、自分で動きたくないだけなんだろうが。
それから、パートナーキャラクターは皆『歌声』が武器になっているそうだ。高周波を出してみたり、歌声で天候を変えたり、モンスターにだけ害を及ぼす歌を歌ったり・・・とにかくその歌声でほとんどなんでも壊せるんだとか。
俺のルカなら明らかに接近戦も大丈夫だと思う・・・なんてことは、口が裂けても言えない。
ルカと街の中を歩きながら、両脇に佇む店を見つめる。ハルたちは自分たちだけで準備をしたいとか言ってたから、待ち合わせ場所を決めてさっきわかれたところだ。
店先には、剣だのナイフだのバズーカだの、本当の世界にこうして置いてあったらとんでもないようなものが平然と並べられている。
「どうするかなー・・・」
本当に自分が戦うとするなら、銃・・・だろうか。
接近戦で何も持たずに戦ったとしても、おそらくそのモンスターとやらにはほとんどダメージを与えられないだろう。そこから考えても、丸腰はまずない。作られたキャラクターだからと言って、女にばかり戦わせるのは男が廃るしな。
剣か銃かと言われれば・・・使ったことがない剣を使うよりはエアガンや猟銃を使ったことがある身としては、銃の方が向いている気がする。
そう言おうかと思うと、ルカは既に銃が大量に置いてある店の前に立ち止まっていた。そんなに興奮してたわけでもないが、どうやら伝わっていたらしい。
「銃なら、ここがいいと思いますわ。この街の中では一番のガンスミスの店ですもの」
「ガンスミスな・・・
別にそんな専門店じゃなくても撃ちやすいのでいいんだけ・・・・・・ハイ、黙ります」
何か文句でもあるの?的な目で見られて、素直にその店先の銃を眺めてみる。客は自分しかいないんだが、本当にここは街一番のガンスミスがいるんだろうか。
・・・いやいやいや、そういうこと考えててバレたらまた睨まれる。
恐る恐るルカの表情を窺うと、彼女は店の奥を見つめていて俺の考えていることなんて気付いていないようだった。安堵の息を吐きながら、店先に並んでいる銃を一つ手に取ってみる。
「へぇ・・・ベレッタか。ワルサーにコルト・・・」
男なら一度は憧れたことがあるだろうたくさんの銃を目の前にしたら、誰だって目移りするもんだろう。それを知っているのかただ興味がないだけなのか、ルカは一言も文句を言わずにただ店の奥を見つめている。
実際自分が持つとしたら、手に馴染むものを持つべきなんだろう。映画とかでもよくそう言ってるし・・・実際持ってる奴に聞いたわけでもないし見たこともないから何とも言えないが。
「んー・・・どれにすっかなー・・・?」
「おや・・・珍しいね、お客なんて」
突然聞こえてきた声に、情けないことにびくりと肩が震えた。ルカの方を思わず見たが、当然彼女が喋ったわけではなく、その視線は店の奥を捉えている。その視線の先へ俺も視線を向けてみれば、気の強そうな茶髪の女性が仁王立ちしていた。全然気配に気付かなかったが、最初からそこにいたんだろうか・・・。
「ども」と言いながら躊躇いがちに会釈すると、彼女は後ろの壁をドンドンと叩いた。
「アンタぁ!お客だよ!」
体がその音量に震えるほどでかい声。
暫くして、奥からガタンガタンと何かが落ちるような・・・ぶつかるようなそんな音がした。大丈夫かと思わずハラハラして奥を覗いていれば、一層大きな音がして人が転がってきた。・・・・・・って、本当に大丈夫か。
ドスドスとゆったりした足音をさせて近付いてくるその人に、俺はごくりと生唾を飲んだ。
暗い部屋の奥からのそりのそりと冬眠明けの熊のようにして出てきたのは、図体もでかけりゃ目つきも最悪で、子供が見たら即行泣いて逃げ出すような男だった。俺でも一瞬震え上がったのだから、子供にゃこれは刺激が強すぎる。
「・・・何だ坊主・・・ベレッタが欲しいのか?」
「え、いや、あの・・・俺はただどれが一番しっくりくるか探してただけで・・・」
この流れは少しまずくないかと思いながら、慌てて返答した。
男は・・・いや、店主は俺を上から下までじろじろと確認して、馬鹿にしたように鼻を鳴らす。ひ弱な体してんなぁとか軟弱だなとか思われた気がするのは気のせいだろうか。そりゃまぁアンタほどじゃないが、俺だって毎朝トレーニングしてるし、これでも一応スポーツ万能とか言われて・・・・・・ってそんなことこっちの世界じゃ関係ないか・・・。
何て文句を言ってやろうかと思っていると、男が俺の持っているベレッタを取り上げて持っていたクロスで拭いて陳列棚へ戻す。
「生憎だが、坊主・・・初めての参加者に売るような武器は取り扱ってないんでな。他あたれ」
冷たく突き放すような言い方をされ、「そうですか、そりゃどーもすみませんでした」息をつく。別に俺がここに来たがったわけじゃないし、そんな言い方をされる覚えはないが、普通は・・・何だっけか・・・マスター?の方が行き先を決めたと思っても仕方ない。
面倒臭いなと思いながら、頭を掻いて背を向けようとした時・・・隣で一部始終を見ていたルカが両手を前で組んだまま店主の目の前へ立った。
何してんだ・・・まさか蹴り飛ばしたりしないだろうな。嫌な予感がしたが、不思議なことにルカからはそんな感情や衝動は伝わってこなかった。
「相変わらずですのね。安心しましたわ」
「あん?アンタ・・・・・・ルカ様か!?」
「おやまぁ、それは懐かしい人が来たもんだねぇ」
前にあったのは1ヶ月ぐらい前かい?と店主の奥さんが言う。何だこの会話・・・これが本当にインプットされたものだっていうのか・・・本物にしか聞こえん・・・。
というかちょっと待て、巡音ルカなんて周りを見回せばいくらでもいる。なのに「様」ってなんだ。彼女が特別なのだろうか・・・それは、あれか・・・AAAとかいうのだから?
考えてみても、このゲームに詳しくない俺の脳内ではやはり答えが出ない。
目に映っているのは、和気藹々と話している三人の姿。やっぱりルカは、俺以外のキャラクターたちには笑顔を見せることがあるらしい。どうやら俺みたいな人間には厳しいようだが。
「ルカ様の頼みとあっちゃあ仕方がねぇ・・・好きなもん何でも持ってけ」
「は、はぁ・・・」
すげぇ、ルカ効果。
ルカの方を見ると、何事もなかったかのようにしらっとした表情でそこに立っていた。何つー憎らしい・・・いやいやいや、言うな、それだけは言うんじゃない俺・・・。
気を取り直して並んでいる銃の一つ一つを取って確かめてみる。どれも本物だけあって、ずっしりと重い。これで頭を本気で叩かれようものなら、脳震盪でも起こしかねない。っつか気絶するな。人を殺す道具であることを考えればまぁ・・・それも当然なんだろうが。
ああ・・・そうか、これ・・・・・・命を失くすための道具なんだよな。
今更ながらにそんなことを考えている自分に失笑。近距離の武器を買おうとしないで良かった。手に感覚が残ってしまうのは嫌だしな。
自分が銃を持っているという感覚をいつでも覚えているよう、なるべく重いものを選ぼうとしていると、そんな俺に店主が声をかけてきた。
「細身だとは思ったが・・・筋肉の付きは良さそうだな。ちょっと待ってろ」
「え、はい」
細身って・・・そりゃアンタより細いが、俺は別に細くないと思うぞ。っつか標準だろ、寧ろ。
言いたいことはたくさんあったが、あまり言えないまま店主・・・おっさんが持って来てくれた銃を一つ一つ試させてもらった。
話してみたら意外に気さくないい人で、ルカ・・・っつーか、AAAのことについても話してくれた。
このルカのAAAってのはハルが言ってた通り全ての巡音ルカのオリジナルのナンバーで・・・他のナンバーのやつらは主人がゲームオーバー、またはクリア後にその主人が同じキャラクターを選ばなかった場合、次の主人のために記憶が全て消去されるらしいが、このAAAには全ての記憶が残っているらしい。あと、表情を上手く作れないという欠陥もあるんだとか。それについては思い当たるところがある。ただ他のルカと比べて無表情な奴だと思っていたが、あれは欠陥だったらしい。
おっさんの言葉に軽く相槌を打ちながら、他にもいろいろと話をした。ま、専門的な話はいまいちよくわかんなかったんだが。
とにかくおっさんは俺を気に入ってくれたらしくて、銃の使い方も全部教えてくれた。
最後におっさんが奥から取ってきてくれたのは、自分が昔使っていたとかいう(設定の)デザートイーグル。それは不思議と自分の手に馴染んだ気がして、俺はありがたくそれを貰っていくことにした。
銃を受け取った時に、おっさんが「ルカ様をこれでしっかり護るんだぞ、坊主」と言ってきた。唐突に何言い出すのかと俺は笑いながら「俺より強いぜ、あの女は」と言ってやると、「そうじゃねぇ」と頭をぐりぐりされた。女を護るのは男の務めだろって話だろう。言われなくてもそのつもりだ。
おっさんは自分の愛銃を俺が気に入ったってことが余程嬉しかったらしく、最後店を去る時にはにこやかに笑って手を振ってくれる。「ずっとそういう顔してねぇとおっかねぇから客来ねぇぞ!」と大きな声で手を振り返すと、おっさんは「うっせぇんじゃ、ガキ!」と大声で笑っていた。
人間、外見で判断しちゃいけないんだなと身に沁みた。・・・まぁ、それで一回失敗してるんだけどな。
ルカをちらっと見ると、「どうかしましたの?」と今まで黙っていた分刺々しい声が返ってきた気がした。
「ああ、いや・・・」
何でもないと言おうとして、ふとおっさんが言っていた「ルカ様」という言葉を思い出した。AAAの説明は聞いたが、別に「様」をつけるような存在ではない。というか寧ろその説明だけ聞けば、AAAってのは欠陥品ってことじゃないのか。なのに何で「様」だよ。
「なー・・・そういえばおっさんに言われてたけど、ルカ様て・・・お前マジで何者よ?」
俺の言葉に、彼女は歩きながら小さく息をついた。まるで人を馬鹿にしたかのような態度で。
「ただの巡音ルカというキャラクターですわ」
彼女はそう言って、口端を吊り上げて微笑んだ。
・・・・・・よくわからん。
>>04
Elysian 03
いやはや、鼻水が止まりません。
しかしながら自分より弟の方が重症です。レントゲンってどんだけ悪いんだよ。
自分は随分マシになったので、今のうちに一気に書き溜めしようと思ったんですが、この話連続で書けるほど短くなかったのを思い出して凹みました。甘かった・・・。(その前に書き溜めできたこともなかった
これ書いてる時のBGMが何故かドビュッシーのアラベスク第1番。
何か話を書いてる時はそうして必ず何か音楽を聞いてます。
E・Bの時も姫騎士の時もそうでした・・・あの時は洋楽も聞いてましたが。
どうせならボカロ曲聴けよって感じですね(笑
しかし今回のアラベスクはどうやらハズレのようで、この話をサクサク書くことができないのです。
ぴたっとくる曲があると随分進みが違うんですが、何かいい曲はありませんか?
ジャンル問わないので誰か救いの手を・・・orz
やっぱりサントラとか探し回るべきですかね・・・。
コメント5
関連動画0
オススメ作品
「君へ続く軌跡」作詞作曲/駒木優
心のなかは空っぽで 何してても
頑張れずに
一つのことも成し遂げれない
自分が嫌になるよ 今も
当たり前も できない
僕を責めた いつだって
必死で 生きてるのに伝わらない
居場所が 奪われてゆく
声や視線が 雨のように...君へ続く軌跡_歌詞

駒木優
勘違いばかりしていたそんなのまぁなんでもいいや
今時の曲は好きじゃない今どきのことはわからない
若者ってひとくくりは好きじゃない
自分はみんなみたいにならないそんな意地だけ張って辿り着いた先は1人ただここにいた。
後ろにはなにもない。前ならえの先に
僕らなにができるんだい
教えてくれよ
誰も助けてく...境地

鈴宮ももこ
*3/27 名古屋ボカストにて頒布する小説合同誌のサンプルです
*前のバージョン(ver.) クリックで続きます
1. 陽葵ちず 幸せだけが在る夜に
2.ゆるりー 君に捧ぐワンシーンを
3.茶猫 秘密のおやつは蜜の味
4.すぅ スイ...【カイメイ中心合同誌】36枚目の楽譜に階名を【サンプル】

ayumin
それは、月の綺麗な夜。
深い森の奥。
それは、暗闇に包まれている。
その森は、道が入り組んでいる。
道に迷いやすいのだ。
その森に入った者は、どういうことか帰ってくることはない。
その理由は、さだかではない。
その森の奥に、ある村の娘が迷い込んだ。
「どうすれば、いいんだろう」
その娘の手には、色あ...Bad ∞ End ∞ Night 1【自己解釈】

ゆるりー
I just wanna rewind
Its not a bigger deal
Its just a genre of EDM
I wanna play a beat
Its not a messy one
Its just a funky beat to dance
and feel the...歌詞Rewind to the Beatのために

vicente_2007
この日をずっと覚えてる ー 巡音ルカ
この日をずっと覚えてる
君が好きな声
君が好きな歌
その気持ちを
覚えてる
まだ好きでいてくれる君を
共に生きてくれる君を
ずっと覚えてる
誰かにとってはただの一日...この日をずっと覚えてる ー 巡音ルカ

NI2
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想
+KK
その他
>>Raptor1様
おはようございます、Raptor1様。読んでいただけたとは・・・!毎回好き勝手やっててすみませんorz
ルカさん格好いいですか。Sっ気がというところは否定しませんが、実際に足蹴にされた人間としては格好いいというか・・・本気でイラっときたものでちょっと・・・(笑
銃についていろいろ書いていただけるとは・・・デザートイーグルは大きくて重い、ぐらいのことしかわかってない自分・・・。表現省いたし軽く見えるよなーと思いつつそのまま投稿してます。そのうち知らない間に修正されてるかもしれません。でも2キロか・・・思ってたより少し軽かった気が。って、日本人じゃ扱えないとかだったらこの話進まない・・・!(涙
やっぱりwikiなんかで調べた方がいいみたいですね。
今回は今更な部分もありますし、ゲーム内ということでスルーして、Raptor1様の言うとおり自分が思ったままやっていきたいと思います。ほどほどに。
いろいろ詳しく書いてくださって勉強になります。メッセージありがとうございました!
2009/04/09 08:47:56
+KK
その他
>>FOX2様
はじめまして、FOX2様。
まさか読んでくださったとは思わず驚きを隠せないままコーヒーをふき出しかけました。
こんなところですみません、「I for sing and you」拝見してます。メッセージ残せないチキンで申し訳ないですが、実は毎回楽しみにしてます。
初期装備デザートイーグルはないだろうと思いましたが・・・実際夢でそうだったので思わず書いてしまいました。話の回数的にはあまり長引かせたくないのですが、装備から言って無理かもと少し心折れそうになっております・・・。
描写すらしっかり書けない上、勉強不足がこれから露呈すると思いますが頑張りたいと思います。
因みに夢でプレイしたこのゲーム、実際にあったら自分も入り浸ってると思いますが、体力ないと戦闘がかなり大変でしたよ。
2009/04/08 23:46:39
FOX2
ご意見・ご感想
電脳世界を舞台にしたファンタジー系の小説ですか。面白そうですね。
それにしても初期装備がデザートイーグルとは、これまた強力ですな。
この世界じゃ銃の反動もしっかり反映されそうですから、使いこなすには熟練が必要かも。
主人公とルカ様、これからどうなるのでしょう。
今後の更新が楽しみです!
つーか僕もやってみたいですこのゲーム・・・・・・。
2009/04/08 23:26:17
+KK
その他
>>C.C.さん
鼻水ズルズルすすりながらこんばんは、C.C.さん。
店主というよりおやっさんって感じが(笑)・・・いいと思います、おやっさん。
ルカが特別なのはAAAだからなのか、それともまた別の理由か・・・まぁいろいろと考えていただくとして(笑
弟はまぁ・・・ほっときゃ治るんじゃないですかね? 点滴打ってでも学校行ってましたし。
BGMの件にもコメありがとうございます。
上げていただいた曲とか歌手とかは一度ゆっくり探してみたいと思います・・・というかもううpペースかかってるので命がけで探します(笑
それから、ゲーム音楽は有名どころあたってみることにしますね。
では、ご意見ありがとうございました。
2009/04/08 22:45:54