「頭の中に靄がかかったような」って言うけど
ずっと「とても落ち着く」って意味だと思ってた
森の中で薄暗くて少し白くてマイナスイオンで
そんな場所にいたらゆったり出来そうだなって

なんでだろういつもこうやって世界とズレていく
周りのみんなはくっきりと行き先が見えるのかな
それとも連れて行ってくれる誰かに出会えたかな
私は小鳥もさえずらない薄暗い森で一人きり

「出口が見つかるといいね」って優しい声がする
「目標が定まるといいね」って励ます声がする
心地よいこの森に居ちゃいけないのは何故って
それだけは誰ひとりとして答えてくれなかった

この靄が私にとって毒だったとしてもいいんだ
知らぬ間に肌が爛れ落ちて吸い込む肺が溶け落ちて
歯も骨も目玉すら消えて無くなってしまっても
それってなんだか悪くないんじゃないかって思う


「苦虫を噛み潰したような」って言うけど
ずっと「不安を解消した」って意味だと思ってた
口の中に生きた虫が動いてるのすごい嫌じゃん
そんなだったら噛み潰して吐いちゃえば良いって

どうしてかないつもこうやって社会とズレていく
周りのみんなはきっちりと足並みが揃ってるのかな
それとも説明書を配ってる誰かに出会えたかな
私は見たことのない虫の死骸を見ながら一人きり

「大丈夫すぐに慣れるよ」って暖かい声がする
「ちっぽけな不安だって」って親切な声がする
噛み潰す前の虫の不快感はどれくらいって
そんな事誰ひとりとして教えてくれなかった

この虫が私にとって害だったとしても構わない
知らぬ間に肌を覆い尽くし穴から体内を犯し尽くし
目も耳も脳すら残らず食い尽くされてしまっても
それってなんだか心地よいんじゃ無いかって思う


「後は野となれ山となれ」って言うけど
ずっと「ここから芽吹いていく」って意味に思ってた
穏やかな草原が山いっぱいに広がっていってさ
そんな魔法かおとぎ話の話だったのかなって

何故だろういつもこうやって多数から外れてく
周りのみんなははっきりと答えが出せるのかな
それともどこでも行けるマップを手に入れたかな
私は芽吹かない腐り落ちた蕾のそばで一人きり

「いつものことでしょう?」って軽い声がする
「また始まっちゃったよ」って笑う声がする
朽ちた蕾がどんな花でどんな香りだったかって
それすらも誰ひとりとして伝えてくれなかった

あの草原が私にとって終わりであっても気にしない
踏み入れた瞬間に意識が薄れ草原の一部と化して
わずかばかりの拙い思い出が名もない草になっても
それってなんだかもう天国じゃ無いかって思う


何も知らないどこへも行けない辿り着かない
迷うことも許されないまま靄のかかる森へ帰る
不思議な揺らぎがどこかに残っていたら
それはきっと瞬く間に消える私の足跡だ

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

消える意識と靄の足跡

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投稿日:2021/07/06 21:50:13

文字数:1,167文字

カテゴリ:歌詞

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