鳳仙花がクラムを追い駆けて出て行ってしまい、微妙な空気が流れた。脅されたって聞いたけど、助けるつもりなのかしら?と、小声でシャルロットが話し掛けて来た。

「…たまには欲張ったら?」
「え?」
「強そうな人ペア指名すればいけるんじゃない?折角ドレス着れるんだし。」
「私こんな背だから可愛いのとか似合わないわよ、それに強そうな人って…。」
「居るじゃん、ほら、入口の所。花壇に熱~い視線送ってる人がさ。」

花壇を見てから、辿る様に入口に視線を移す。…って、帽子屋さんじゃないの!

「無理無理無理、あの人もう花壇ちゃん専属みたいな物じゃない。」
「勝ちに行くならあれ狙うだろ、行ってみろって。」
「大体!何で私に言うのよ?!
「面白そうだからに決まってるだろ!何ならスナイパーと組んでも良いから!」
「勝手に決めないでよ!それに自分のペアは決めたの?!」
「アリエッタに土下座してみようかと思ってますが何か?」
「ほんっと潔いバカよね…。」

呆れながらホールを見回した。でも実際誰と組めば良いのかしら?スナイパーやハレルヤさんは何かメイクとか出来そうに無いし、となると女の子とペア組むのもアリ?でも男性陣余っちゃうかもしれないし…そもそもドレスの選び方とかも良く判らないし、NPCもいちいちクセが強いし…。

「花壇さん、私と組んでくれませんか?」
「へっ?!」

お願いハレルヤさん、空気を読んで―――っ!!!帽子屋さんの刺す様な視線が端から見てても恐い!判っててやってるなら貴方最強だと思うのよ!ああ、ほら、花壇ちゃんが縋る様な目で周り見てるし、もぉーう!!

「嫌ですか?」
「あ…あの…私…。」
「帽子屋さん、チコリが『自分より背の高い人が居ない』って困ってますよー?
 ペア組んでみたらどうですか?」

ちょっとちょっとちょっとぉー?!何勝手に尤もらしい理由並べてんのよ!!しかもあの顔!!どう見たって面白がってるわ!!

「あのっ…!帽子屋さん、ペア組んでみたらどうですか?わ、私ハレルヤさんと
 組みますから…!」
「え…?」
「ありがとうございます。では、失礼。」

会釈をするとハレルヤさんは花壇の手を取ってそのままスタスタとホールを出て行ってしまった。とんびに油揚げを攫われた、って本当にこう言う時にぴったりの言葉よね…。

「…チコリさん。」
「はいぃっ?!」
「どうしますか?私で良いならペア組みますか?」
「えーっと…。」

笑顔だけど怖いです、帽子屋さん。これ、心臓弱い人なら発作の一つも起こすんじゃないかしら?でもこの人色々万能そうだし、背高いし、この際頼むのもアリ?と言うかもう頼まないといけない空気?

「お、お願いします…。」
「判りました。但し…。やるからには私も容赦をしません。」
「は?」
「ドレスやアクセサリは勿論、メイクから普段の姿勢、所作、肌や髪に到るまで
 一週間で完璧にして貰います。」
「えええええ?!ちょっと、冗談でしょ?!」
「施設は揃ってます。御心配無く、栄養学、作法は叩き込まれて居ますので。
 宜しいですね?」
「……。」
「返事!」
「はいぃぃっ!!」

目がマジだわ…。それと横で爆笑してるシャルロットいっそ死ね!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-89.紫紺野牡丹-

エステもあります

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投稿日:2010/08/26 09:37:38

文字数:1,344文字

カテゴリ:小説

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