「テ~トさん♪」
そう言ってリンが、取り込んだ洗濯物を畳むテトに呼びかける。
テトは手を止めて、リンの方に目を向けた。
目の前にいるリンの顔には満面の笑顔があって、後ろにはレンもいた。
「どうしたの?二人して」
「えっとね………」
尋ねれば、リンは笑顔のまま言葉を濁す。
後ろで呆れた様子のレンを窺いつつも、リンの反応に不審の表情を浮かべた。
テトの経験上、こういう時の少女は大方二択に分けられる。
欲しい物をねだる時
もしくは
何かを企んでいる時
少しばかり警戒しつつ、テトはリンからの反応を待った。
一度リンがレンと視線を交わして、レンが何かを促すような顔をする。
リンはテトに向き直り、背中に隠していた物を差し出した。
「これ、私とレンからプレゼント!」
そう言ったリンの手に握られていたのは、オレンジ色の小さな花だった。
「これは…金木犀?」
それを受け取って間近で見れば、どこか懐かしさのある香りが漂ってくる。
「今日は10月10日で、テトさんの日でしょ?だから、レンと一緒に買ってきたの♪」
「僕は、無理矢理付き合わされたんだけどね」
笑顔で言うリンと、ひねくれた様子のレン。
そんな二人を見て、テトは嬉しくて自然と微笑んでいた。
「ありがとう。リンちゃん、レンくん。…でも、何で金木犀なの?」
テトは花を見つつ、抱いた疑問を二人に投げ掛ける。
それに対してリンは、先程とは違う笑顔で答えた。
「金木犀は、今日の誕生花なんだって。マスターが教えてくれたの」
「…マスターが?」
いつもと変わらない様子で出勤したマスターの姿を、思い出しながら驚くテト。
そんな彼女を見つつ、レンが一言だけ呟く。
「ちなみに、花言葉は『高潔な人』だってさ」
「…私には、不釣り合いな言葉ね」
苦笑しながらそう答えるテトに、レンは呆れながら言葉を続ける。
「そういう意味じゃないと思うよ」
「違うの?」
そう尋ねるテトに、今度はリンが口を開く。
「きっとマスターにとってのテトさんが、『高潔な人』ってことなんだよ」
含みのあるリンの笑顔とその言葉で、意味を察したテトの頬が微かに紅くなる。
「テトさんって、自分の事には鈍いよね」
「まあ、今更だけどね…」
好き勝手な事を言いながら、黄色い双子は階段を上がった。
一人残されたテトは、静かになった空間でぽつりと呟く。
「ああもう…、私にどうしろっていうの………」
色々な思考が脳内でごちゃごちゃに混ざりあって、いつもの冷静さは微塵もなかった。
とりあえずは手にある金木犀をどうにかしようと、花瓶の代わりになる物を探そうとテトは立ち上がる。
「ホント、あの人は…」
どんな顔をして帰りを出迎えたものかと、茹だった頭を悩ませる。
帰ってくるなと思いながらも、早く帰って来て欲しいと矛盾する感情。
それを掻き消すかのように、大きな溜め息を溢した。
(アナタの言葉、期待しても良いんですか?)
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