あの恨みも、核融合炉ごと吹っ飛ばそうというのか。
鏡音リン、私はどうやらお前を見くびっていたようだ。
所長は、携帯電話を取り出した。
発信先は……鏡音リンであった。
コール音が何度も鳴る。
次のコールで諦めようと思った、その時だった。
「……はい、こちら鏡音です。
何の御用でしょうか?所長」
リンは電話に出た。
所長は、ふうっと深く息をついてから話し始める。
「鏡音くん。私は、君に謝らなくてはいけないことがある。
2年前、君とレンくんを引き離した件についてだ」
「今更、何なんですか?私が核融合炉を起動させたからですか」
「それもあるが……君の弟のレンくんが君を探している」
「は?なんで、レンが……」
リンは驚いた。
弟のレンは東京にいるはずなのに、
何故ここでレンの名前が出てくるのか、
リンには理解できなかった。
「君の弟のレンくんは、1ヶ月前この研究所へ入所したんだ」
「……!!!!」
「部署は違うから、君は知らなかったのも無理はない」
リンの声のトーンが変わった。
「知ってて、黙っていたんですか」
「それは……」
ごもる所長に畳み掛けるように、リンは怒鳴る。
「あなた、それでも人間ですか!!!!」
所長は、その言葉に黙り込んでしまった。
「レンは、レンはそこにいるんですか」
「いや、ここにはいない。君を探しに出て行ってしまったようだ」
「……分かりました。あなたも早く避難してください。
今まで、お世話になりました。では」
冷たく言い放つと、リンは電話を切った。
そして、たった1人の家族であるレンのことを想った。
「レン……」
研究所の施設内は、赤いハザードランプがくるくると回り
警報がけたたましく鳴り響いていた。
白衣を着たままのレンは、起動室へと走っていた。
起動室への螺旋階段は、この施設の外へ出ないと行けない。
自動ドアの遅さに、苛立ちが募る。
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