「美味しい・・・。」
「あらっ、そう～？良かったわ～♪」
「お母さん（怒）邪魔っ！！」
わたしはお母さんを押して男の前に座った。すると男とまた目が合った。
「ねぇ、名前は？」
「名前・・・名前はグミヤ。」
「グミヤ・・・？」
「あらっ、イイ名前ね～♪」
「もうっ、お母さん！！」
「はいはい・・・・」
グミヤは少し笑いながらご飯を食べている。名前からしても日本人では・・・なさそうだ。
わたしが考え込んでいると、いつの間にかグミヤはご飯を完食していた。
「ありがとうございました・・・。」
「いえいえ、ところでグミヤくんお家は？」
「家・・・・？」
グミヤは明らかに頭の上にハテナが浮かんでいた。
「何・・・家・・・ないの？」
グミヤは頷き、わたしは不思議に思いながらグミヤを見た。
ますます不思議な人たと思っていた。するとお母さんがいきなり手を叩いた。
「じゃあっ、うちに住みなさいよっ！！」
「えぇぇぇぇぇ！！！何言ってるの！！！？」
「いいじゃない、パパは海外にいるんだしぃ～」
お母さんはノリノリでわたしの反論に耳を傾けようとはしなかった。
「じゃあ、決定～！！」
「ちょっ・・・・」
わたしは何が何だかよく分からず、とりあえずグミヤをわたしの部屋につれて行った。
グミヤも少し混乱している様子だった。
「ねぇ、一体君は何なの？」
「グミヤ・・・・。」
「いや・・・それは分かってるけど・・・血とか言ってたじゃない。」
「血・・・お前の血・・・美味しかった。」
「いやいやいや・・・そんな事誰も聞いてないからさ・・・。」
これではキリがないと思い、わたしは諦めた。この頭が狂っているんじゃないかと思われる男に何を尋ねても無謀だと思った。
すると突然グミヤが抱きついてきた。
「なっ、何するのっ！？」
「お腹・・・減った・・・血・・・頂戴。」
「はっ、血！？」
「血がないと・・・死ぬ・・・。」
わたしの中には、１つの空想上のモノが浮かんだ。信じたくはないが、ここまで当てはまるものなんだろうかと思いながら尋ねた。
「もしかしてグミヤってヴァンパイア・・・・？」
「・・・そうだけど？」
「えっ・・・えぇぇぇぇぇぇ！！」
軽々に言ったグミヤを見ながらわたしは固まっていた。そんな間にグミヤの唇が首に触れた。
その直後、自然と手が出てグミヤを殴っていた。
「痛い・・・（泣）」
「ったく何してんのよっ！！ってか何でヴァンパイアのグミヤが人間界にいるのよっ！！？」
「俺は・・・悪のヴァンパイアを捕まえるために人間界に来た。」
「ふーん・・・・・」
「俺はルカ姫様のためにも・・・・」
－ルカ姫様・・・？
グミヤが呟いた一言をわたしは聞き逃さなかった。
グミヤの真っ直ぐな視線は、とても嘘を吐いている様な目ではなかった。
仕方なく、わたしは信じる事にした。
「それで・・・その悪のヴァンパイアってドコにいるの？」
「分かんない・・・。」
「はっ？？」
「絶対にここら辺には・・・いる。」
「ふ～ん・・・早く見つかるといいね・・・。」
わたしは他人行儀に言った。するとグミヤはわたしの手を握った。
「なっ、何！？」
「ぐみ・・・お願いだ・・・・手伝ってくれないか！？」
「はーーーー！！！」
「俺１人じゃ・・・無理なんだ・・・・。」
「いやっ、そんなっ・・・・」
グミヤの目は今にも泣きそうで・・・まるで捨てられた犬みたいだ。
断りたくても断れない雰囲気になってしまった。
「うっ・・・分かったよ・・・。」
「本当か！？」
「うん・・・その代わり、ちゃんと説明してよっ！！」
「あぁ。」
わたしは面倒な事に巻き込まれてしまった。なんて面倒なモノを拾ってしまったのだろうか。
でも面倒なのは、まだまだこれからだ。