十一枚目:
「お前、大変だな。
生きるのを手伝ってやろうか?」
男への不満をSNSで呟いていると、
後ろから虚ろな目をした男に声をかけられた。
「願いを叶える訳では無い。
あくまで手伝うだけ。
お前の願いはお前が叶えてやれ。
他人に期待しすぎるな。
だから今みたいにある事ない事文句が出る」
「偉そうに、てかあんた誰?マジでキモい」
「何を言う?お前よりは偉いさ」
「で?何が言いたいの?」
「お前の中の劣等感って奴だ、
他人に完璧を求めるなって事」
「意味わかんない…」
「今はまだ、分からなくてもいい」
気持ちの悪い男に捕まるなんて、
今日はついてないなと思いつつ、
その場から立ち去ろうとする私。
去り際に男は、偉そうな口調で私に告げた。
「傷つけるのは勝手だが、必ず自分の行いは自分に返って来るという事を忘れるな」
それから私の生活が一変した。
あの気持ち悪い男と出会ってから、
不幸ばかりが起こるようになった。
彼氏にフラれ、道行く男達から必要以上に避けられるようになった。
顔に何かが付いてるというよりは、
まるで人では無いモノを見るような目。
近所の餓鬼共から化け物と呼ばれ、
両親から絶縁を求められた。
合コン行っても、飲み会に参加しても、
私は嫌われ者として扱われる一方、
私よりもブスな女が優遇される。
少し劣るくらいならまだしも、
私が男だったら絶対に近づかないくらいのブスが必要以上に男から言い寄られる様を目の前で見るのは、気持ち悪いを通り越して吐き気がする。
私はとうとう独りになった。
死ね、死んでしまえ。
男のせいで、男さえいなければ…
より一層、男というものが嫌いになった。
前よりも憎しみが湧いた。
それから男だけでなく、
私以外の全てが敵に見えるようになった。
「愚かだな、皮肉なものだ」
するとまた、私の前に例の男が現れた。
「因果応報って奴だ、自業自得だろ?」
「うるさい!お前のせいだ!死ね!」
私は男を睨みつける。
目の前の男が憎い。
私は、見下したような男の顔が許せなかった。
「で、これからどうする気だ?
俺を殺すのか?それとも街中で暴れる?
いいよ、それでも。
気の済むまで狂えばいい。
そうやって自分の非を正当化しながら、
関係の無い奴らを憎めばいい」
「ふざけるな!私の気も知らないくせに!」
「お前もお前を傷つけた奴の気も知らなかっただろ?だから平気で傷つけた。違うか?」
「うるさい!うるさい!うるさい!」
私は男を殺そうと思った。
この男をどうやって殺そうか?
そればかり考えた。
私は間違えていない、私は正しいんだ。
だから罪悪感もない。
周りにバレても、きっと理解してくれる。
気持ち悪い男に付きまとわれていたと言えば、
友達も絶対に心配してくれる。
友達?そういや、友達っていたっけ?
友達、だったんだっけ?
次第に頭が可笑しくなる。
何もかもがアイツのせいだ。
そう思った瞬間、急に目眩がし始め、
私は意識を失った。
「お疲れ様」
最後に聞いたのは、男の低い声だった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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名無しの手紙(十一枚目)

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投稿日:2023/02/09 14:12:30

文字数:1,268文字

カテゴリ:小説

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