「……ヴォカロ町の皆の輪に入っていけない……と?」
「うん……」
グミが切り出したのは、友好関係の話だった。
「……と言ったって、お前ルカさんとはよく話してるだろ? それにミクとも……」
「みんなで話すことができないの。二人と一対一で話すのはまだしも、皆で話してるところに入れなくて……」
「ふーん……」
まぁ大体予想はついてたけどね。
グミは元はと言えば、ヴォカロ町のボーカロイドを殺そうとしている研究者組織『TA&KU』に作られたボーカロイドだ。
たまたま良心回路が作動し、正義の心を持って目覚めたため『TA&KU』を裏切り、ヴォカロ町についた存在―――――それ故に、敵対する存在ではない。
そのことはルカさんたちが一番よく分かっているだろう。
だが―――――かつてはヴォカロ町のボーカロイドを殺すために作られた存在。その事実は消えやしない。
例えルカたちが彼女を受け入れようと、グミ自身にはその事実が重い足枷となってしまう。
話せなくなるのも無理ないな……。
そのことを話した上で、一呼吸おいて俺はもう一度口を開いた。
「……だがな。そのことを気にしてるやつが何人いると思う? 今やお前はヴォカロ町のアイドルだ。当然だわな、元よりボカロの好きな人が集まって出来上がった町なんだから、楽しく歌い踊るお前が人気にならんはずがない」
「うん……」
「もうお前は町の皆にとっては敵なんかじゃない。大切な仲間の一人だ。そのことを、決して忘れちゃいけねえ」
「うん……わかった」
「……ふぅ。わかったならさっさと皆のところに行きな。俺が干渉できるのは、物語を大きく変えないことだけだ」
「……ありがと。大好き」
「ぶふぉ!?」
思わず飲みかけた『綾○』を噴き出した。この野郎、あっさり言ってんじゃねえよ。
そんな俺の様子も気にせず、グミは小走りに時空転移用PCへと飛び込んで行ってしまった。罪なやつ……。
「……ん?」
ぶっ壊れぶらぶらしている扉の影で、下から順に胡桃色の髪と青緑の髪とくすんだ青緑色の袖が揺れているのが見える。
頭隠してなんとやら……ってか。
「そこのかくれんぼさん、ばれてっから早よ出てこい」
『ギクッ!!』
一瞬震えた後、どっぐちゃんとゆるりーさん、そしてしるるさんが物陰から現れた。
「あはは……ばれてました?」
「思いっきり、ね」
あれは誰が見たってわかるって。
「……ふふ、なんだか顔色よくなってますよ。体の熱退いたんじゃないですか?」
「あ……そういえば……」
さっきまで火照りまくりだった身体が、いつの間にやら落ち着いている。
落ち着いて話すことが、結果的に心身の回復につながった……とか?
何にせよ、だいぶ楽になったな。グミに感謝しなくちゃ。
「……ターンドッグさん。ちょっと聞いていいですか?」
突然、ゆるりーさんが声をかけてきた。
「ん? 何さ?」
尋ね返すと、少し躊躇うような仕草を見せた後に、意を決したように口を開いた。
「……グミちゃんのこと、どう思ってるんですか?」
「……へ?」
直前のグミの言葉のせいも相まって、一瞬『あっち』方面の考え方をしてしまった俺だが、ゆるりーさんの表情を見てすぐに勘違いだと気付いた。
妙に心配そうな顔をしている。色恋沙汰を考えているなら、からかい半分か、もしくはルカさんのことを考慮して頬を膨らませるだろう。
「……何が言いたい?」
「いえ、その……グミちゃん、よく空気になってるじゃないですか、ターンドッグさんが書く物語の中で。もしかしたら……ターンドッグさん、グミちゃんのことを……」
「嫌ってるか信用してないか―――――と疑ってるのか? 俺を……」
「そんなこと!! ……ほんの少しはある……かな。ネルちゃんの前例がありますから……」
こないだのネル騒動の事だ。ゆるりーさんはどっぐちゃん情報網により、この時の事情をしるるさんの次によく知っている。
それだけに、ネルよりも扱いの悪いグミに対して、俺がどんな考えを持っているかに一抹の不安を抱えているのだろう。
「私も聞きたいな、それ。他のメンバーに比べて随分と空気率が高いのは、何か理由があるんですか?」
しるるさんも同じ事を口にする。どちらかというと、この手のネタはしるるさんのほうがずっと聞きたいことだろう。
何せいちばん気にしていたからな―――――グミが空気になっていることを。
俺は一息ついて、話し出した。
「……グミはな。俺にとって最大のイレギュラーなんだ」
『イレギュラー……?』
二人が口をそろえて聞き返す。
「最初に敵の存在としてインターネット系列のボーカロイドを考えた時は、仲間に寝返るなんて発想はなかったんだ。敵は最後まで敵のまま……最初の構想はそんな感じだった。だがしかし……キャラクターを与えられたグミが自ら動きだして最初にやったことは―――――裏切りだった。俺が全く想定していなかった方向に走り出したんだ。『仲間を傷つけるなんてやりたくない』とでもいうかのように、物語を紡ぎ始めた……。俺はその様子を文字にしてテキストにして……それしかできなかった。グミは今、俺が迂闊に干渉できないほど独立した存在になっちまってる。今こそグミの自由にやらせているが、最初のころは何とか俺の手で動かそうとしてた。その結果が―――――アレだ」
「空気になっちゃった……ってことですか?」
「そういうことさな」
信じられないといった顔をしているゆるりーさんの横で、しるるさんは少しだけ納得したような顔をしている。
「なるほど……勝手に動き出してやったことがあまりにもターンドッグさんの考えてたことと違ったために、グミちゃんという存在を掴み切れずヴォカロ町の世界ではイレギュラーとなってしまい、ターンドッグさんの手で動かすことが困難になっちゃったわけですか……」
「そんなとこですね。……グミの事は信頼してるよ、ゆるりーさん。あいつは本当に表裏がない。楽しい時は明るく笑い、ムカついたときは全力でキレ、哀しい時は人目を気にせずボロボロ泣く。何より、ルカさんが最大の親友と認めた相手だからな」
「そうですか……すみません、疑ったりして……」
「気にすんにゃ」
「あ。今噛みましたね?」
「いや噛んでない。今のはわざとだ(キリッ)」
『わざとかい!?』
今日一番のツッコミいただきましたー!!
「……それにしても、これからも彼女の自由にさせるつもり? いつまでもそれでいいと思っちゃいけませんよ?」
「わかってますよ、しるるさん。だけどあいつは今、自分の手で自分のいるべき位置を定めようと頑張ってる。あいつが自らのいるべき場所を見つけた時、必ず俺に身をゆだねてくれる。その時のために、俺もあいつが安心して自分の道をゆだねてくれるような人間になるよう頑張りますよ」
そうだ。その日のために。
今はがんばれ、グミ。自分の在処を見つけるために。
この4カ月後――――――
グミは己の嘗ての同志や作りの親との決着をつけ―――――
自らの手で自分のいる場所を掴みとることになるのだが―――――
――――――――――――それはまた、別のお話。
~『仔猫と竜とEXTEND!!』に続く~
dogとどっぐとヴォカロ町! Part7-2~グミの悩みとTurndogの《罪重ねた論理(いいわけ)》
タイトルのメイカ・ファロウスさんは気にするな(キリッ
こんにちはTurndogです。
いや、わりとマジでね、グミちゃんが空気になっちゃった理由こんな感じなの(言い訳其の1)
急にふっと『ルカちゃんの仲間になりたい!』ってグミちゃんの声が聞こえた気がして『紫色の(ry』を書いた結果凄く扱いにくくなっちゃって!(言い訳其の2)
だけどなんとか絡ませたくて『蒼紅の(ry』で無理やりねじ込んだ結果があれだよ!(言い訳其の3)
……はい、すみません全ては私の技量不足でした。
でも今やってる話からはたくさん話せると思うよ!グミちゃん(`・ω・´)カッコヨス!!
あとゆるりーさんに質問させたのは、実際にこのメンバーで対面した時、イメージ的にちょっと遠慮しがちにしかしはっきりと質問する姿が似合いそうだったのと、例のTurndogラッキースケベの例え事件の最後の後遺症のためww
多分次出る時からは比較的まともなキャラになると思う。
やったねゆるさんどっぐちゃんに嫌われないよ!(そんなゆるりーで大丈夫か?
そろそろネタが尽きてきた。
イズミさんと茶猫さんの出演契約を取り付けたからまだギリなんとかなるが、これ以上はスコープが手に入ったり本編が進まない限りひねり出すのが厳しくなるかも。
誰か!!ネタをくれ!!←
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ご意見・ご感想
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ご意見・ご感想
グミちゃん……可愛いわぁ。和むわぁ(´∀`*)
グミちゃんが空気だったことについて全く気にしていなかった私は何なんでしょう(カノンッ
私はあんまり「キャラが勝手に動く」ってことはありませんかねー
第一長いシリーズ自体書きませんし……
……前にコラボに書いて結局消しちゃった奴、もう一回書こうかなー。何か一年単位で続きそうなぐらいに長い予定だけど(ぇ
2013/08/25 21:47:29
Turndog~ターンドッグ~
それはまぁ……いいんじゃないかな。グミも、よくやってくれてるしね(黙れルシフェル
設定を考えすぎると、単発でも動きますよ、自分は。
1年単位?甘い甘い、ヴォカロ町なんて2年目突入してんのにまだ半分いってないから!(おい
2013/08/26 17:35:32
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ま、でも、わかりますけどね、予定にないパターンw
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じゃあ次回は私としるるさんで皆に寿司を振る舞う話でも(ハチャメチャすぎるわ
2013/08/23 19:50:34