「カイト、リンの作戦に乗るつもりなのね」
「ああ。そうでもしないと、俺達は力が出せないだろ」
作戦会議の席上、メイコは部屋の隅で震えているリンに目をやる。リンはすぐに目をそらし、涙目になっている。
「メイコ、リンがおびえてるから……」
レンがフォローを試みるが、メイコは意に介してはいない。
「いいわ。どうせ変身できないんだし。傍観しているよりはましかもしれない」
「そうときまれば、後はやるだけね」
ミクも少し楽しそうな表情を浮かべる。その表情とは裏腹に、メイコは大きくため息をついた。
「何で私が……アイドルなのよ!」
「まあまあ、とりあえず、用意を始めましょう」
メイコをなだめたルカは、ミクに合図をして衣装を持ってきた。
「本当にこれで……」
「まあ、やってみるしかないだろ」
しぶしぶ用意された衣装を着るメイコに対して、まるで遠足に行く前の子供のように、カイトは嬉々として衣装を着始めた。
再び、マッド・ドールが現れたとの報を受け、カナデンジャーのメンバーは、狂音獣が出現したコンサートホールへと急行する。
「また現れたか。だが、あの2人は変身できまい」
シスター・シャドウは狂音獣とザツオンを引き連れ、人々を糸で巻きつけていた。ルカに率いられ、ミク、リン、レンはそれぞれ武器を手に対峙した。
「さあ、まずはこいつらに先陣を切ってもらおうか」
「ルカ姉!」
レンの呼び掛けにルカは頷き、左腕を前に突き出した。
「コードチェンジ!!」
4人はそのままカナデンジャーに変身する。
「やれ! わが僕よ」
マッド・ドールが命令を下すと、人々が銃を手にカナデンジャーに襲いかかる。
「そうはさせません! リン!!」
「ルカ姉、わかったよ!」
リンは再び、ホルンバズーカを取り出した。
「また煙幕か! 同じ手を二度も食うものか!」
シスター・シャドウの合図でザツオンが大型の扇風機を取り出した。
「さあ、どうかしら?」
リンはすぐにバズーカを操られた人々に向かって放つ。
「ザツオン、扇風機を回せ!!」
強烈な風が吹き荒れる。その風を切って、弾丸が地面に着弾する。その瞬間、強烈な光が周囲を包み込んだ。
「しまった!」
シスター・シャドウの声が、その後襲いかかった大音響にかき消された。目を焼かれ、大音響を聞かされた人々が右往左往する。その瞬間を狙い、サングラスをかけたミクとレン、そしてルカがザツオンに襲いかかった。
ブレイブロッドがミクの拳が、ザツオンを排除していく。そして、響き渡るルカの子守唄がマッド・ドールに操られた人々を眠りへといざなう。
強烈な光から、視力を取り戻したシスター・シャドウが見た光景は、すやすやと眠る人々と、ヘルメット越しでもわかる、リンの満面の笑顔だった。
「同じ手は、二度も食わないと思ってたから、こっちも対策を」
リンの言葉が終わらないうちに、いきなりの衝撃でカナデンジャーのメンバーが吹き飛ばされた。
「私を忘れたの?」
目の前には、メイコの声を出すマッド・ドールがふざけた表情を浮かべ、ステッキを構えていた。
「私が行く!」
ミクは、拳を相手に向けると、そのまま一直線に走り始めた。
「ミク! あいつのステッキには!!」
メイコが言おうとした時には、既にミクは仕込み銃に狙撃されている最中だった。
「ミク姉!」
慌てて援護射撃しようと、リンが銃を構える。だが、その目の前にシスター・シャドウとザツオンが立ちはだかった。
「残念だったな。これで、初音ミクも……」
シスター・シャドウの脇を高速でレンが走り抜ける。
「ソニックアーム。ブレイブ・スラッシュ!!」
レンのスピードを生かした奇襲攻撃で、マッド・ドールの持っていたステッキをへし折った。
「うおおおお!!」
レンの身長と同じくらい長い、ブレイブ・ロッドがマッド・ドールの腹をとらえた。そして、そのままコンサートホールの入口まで吹き飛ばした。
「リン、今です!」
ルカの指示で、リンはトランペットを取り出した。その合図とともに、あまり乗り気でなく、芸者姿をしたメイコと、やる気満々で着流しを着たカイトが現れた。メイコの手には、三味線のバチが握られ、カイトの手には、三味線糸が握られていた。
「さ、2人とも『仕事』だよ」
レンがそう告げると、2人の眼の色が変わった。そして、トランペットの音色が響き渡る。そのメロディは、『必殺仕事人』のテーマだった。
カイトの投げた三味線糸がシスター・シャドウの腕に絡みついた。
「な、なんだ!?」
シスター・シャドウがうろたえる間に、メイコは三味線のバチでザツオンを次々と葬ってゆく。あっけにとられる人々をよそに、カイトは再び三味線の糸を握る。
「くそっ!」
シスター・シャドウが剣で糸を切り、メイコの方に向かう。メイコは、三味線のバチを握り、対峙した。
「恨み、晴らさせてもらうよ」
今度は、シスター・シャドウを相手にバチを手に応戦する。
「な、なんだこれは!」
巧みなバチさばきに苦戦するシスター・シャドウを援護しようと、マッド・ドールが声を出そうとする。
「そうはさせん!!」
再びカイトは糸を投げつけ、今度はマッド・ドールの首に巻きつけた。
「…………」
それを一気に引っ張り、近くにあった木にマッド・ドールを首つり状態にした。狂音獣は声を出そうと必死にもがくが、喉を締められていて声が出ない。カイトは、無表情で糸を引っ張り、狂音獣に背を向けて、糸を握る手に力を込める。彼の着流しの背中の部分には、「南無阿弥陀仏」と鮮やかな刺繍が施されている。
「…………」
ビーン
糸をはじく音がした。マッド・ドールは首を垂らし、そのまま力が抜けたようになる。カイトが糸を引っ張って切ると、マッド・ドールは地面に落下し、大爆発を起こして果てた。
「すごい……本当にうまく行っちゃった」
リンは、演奏を止めると、すぐに2人の元へ駆け寄った。
「やっと、終わった……」
シスター・シャドウと対峙していたメイコはようやく自由がきくようになり、ほっとした表情を浮かべた。マッド・ドールに操られていた人々も、眠りから覚め、その場を去って行った。
「ダイオンリョウサイセイ」
不気味なロボットの声とともに、マッド・ドールが巨大化してあらわれた。
「ハク、カナデモービルを出して」
「了解。メイコ!」
カナデモービル6機が巨大化したマッド・ドールと対峙した。
「みんな、心を一つに!!」
メイコの声を合図に、6機のマシンは合体し、シンフォニー6へと姿を変えた。
「さあ、行くわよ!!」
巨大化したマッド・ドールがいきなりつかみかかってきた。操縦を担当するレンは、すぐさまマッド・ドールの襟首をつかみ、そのまま投げ飛ばす。しかし、マッド・ドールは独特のバランス感覚を生かして、そのまま足から着地した。
「これならどうだ? ツイン・バルカン」
だが、狂音獣は手にしたステッキから弾を放ち、飛んできた弾丸をすべて撃ち落した。
「そんな……」
リンとレンは呆然と狂音獣の姿を見ている。
今度は、マッド・ドールのステッキから弾丸が飛んできた。
「か、かわせ!」
レンの判断が一瞬、遅れた。弾丸は容赦なくコックピットを襲う。
「うわっ」
「キャー!」
激しく内部を揺さぶられ、全員が体を機体に叩き付けられた。
「足からバルカン砲を打て!」
カイトの声に反応して、左足からマッド・ドールの胸に向かって弾丸が放たれる。
予想外の位置からの攻撃に、狂音獣は驚いて怯んだすきに、
「よし、あのステッキを奪い取れ!」
レンは指令を出した。その言葉に素早く反応し、ロボットが狂音獣の持っていたステッキを奪い取った。
「これでも喰らえ!」
今度は左腕に仕込んであるドリルでマッド・ドールの顔面をえぐる。そして、右のこぶしで狂音獣を吹き飛ばし、ビルにその躯体を叩き付けた。
「さあ、行くわよ」
メイコの合図で、彼女の声に全員の声が同調する。やがてその響きでヴォイスエナジーが高まり、光響剣を生み出した。
「とどめよ! Gクリフアタック!!」
ト音記号の軌道を描き、光り輝く光響剣がマッド・ドールごと後ろにあったビルを真っ二つにした。
そして、大爆発とともに、マッド・ドールは倒れた。
「これで、一件落着ね」
メイコは自分の声をもつ狂音獣を倒せたことに、安どの表情を浮かべた。
「へぇ、話題の動画……えっ!?」
今まで聞いたことがないような、驚きの声を上げたのはミクだった。自室で何気なく動画サイトを開いたミクは、メイコが一心不乱にどじょうすくいを行う映像を発見した。
「うけるwwwwww」「何やってんだ?」「こいつは賞味期限切れだろww」などと、いったコメントが右から左へと流れて行った。
「…………これって……まさか!」
ミクが思い当たる犯人は一人しかいない。その時、扉を激しくたたく音が聞こえてきた。
「ミク姉! 助けてえええええ」
声の主はリンだった。
「あなたには聞きたいことがたくさんあるのよね」
その直後、メイコのドスの効いた声が廊下から響き渡った。
「やっぱり、リン……だったのね」
誰にも気付かれないようにそっと扉を開くと、激昂したメイコに襟首を掴まれたまま、トレーニングルームに連行されるリンの姿がみえる。
「メイコ、許してええええええ」
「さ、一緒にトレーニングしようか」
「リン……ごめんね。こうなったら、メイコはだれにも止められないの」
ミクはそのまま、部屋に引きこもった。
余談ではあるが、それから数日間、リンは魂が抜けたような状況で過ごしていたという。
「久しぶりだな」
カイトはある病院を訪ねていた。そこには、年齢も体格もカイトとさほど変わりのない青年がいた。
「すまないな。こんな無様な姿で……」
青年は車いすに乗ったまま、カイトのそばにやってきた。しばらく雑談を続けていたが、やがて話は、昔話へと変わっていった。
「3年前のこと、今でも時々思い出すよ。もう一度、あの頃のように動けたらと思うこともある」
「そうか」
「だが、この体ではもう無理だ……」
青年は少しさみしそうにカイトの姿を見た。
「すまない。あの時……」
「気にするな。お前たちの選択は正しかった。そして、そのことは私も後悔していない」
青年はカイトにそう言って、沈む夕日を眺めた。
「ガクト、また会いに行くよ」
カイトは、神威ガクトにそう、別れを告げた。
つづく
光響戦隊カナデンジャー Song-13 MUSIC MARIONETTE Bパート
お待たせしました。カナデンジャー13話Bパートです。
今回から、第3クールに突入です。そろそろ、話の大きな流れの道筋をつけていきたいと思います。それではまた。
感想もお願いします。
参考動画
必殺仕事人のテーマ http://www.youtube.com/watch?v=3hAY0zHJ4xU
カイトのシーンの元ネタ(三味線屋勇次) http://www.youtube.com/watch?v=Xou8JDKmxfI
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