汗だくになって数分
古く寂れた縁側に
眩い君の笑顔と
冷たいラムネの味

「夏だね」と放ったその瞬間に
頬を伝う水を拭う
柔軟剤の匂いとその日差しに
胸を焦がしてしまったんだよ

髪を結いて 西瓜にかぶりついて
遠くで待ってる未来に思いを馳せる
「あぁ、このままじゃ少しも届かないな」
晴れ模様 赤い顔 魔が差した
「僕じゃダメですか?」

始まったばかりの夏に
もう終わろうと口を噤んだ
大好きなその君の横顔が
両眉を顰めて笑って見せた
聞きたくないその返事に
見掛け倒しの涼しい風鈴が重なる
湿気を帯びた微かな熱風は
僕の喉を絞めた
「冗談でしょ」

黙りこくって数分
重たい空気を支えきれず
「もう帰るね」と呟く君
溶けてしまった氷菓子

息をするたび痛くなるんだ
慄く胸と頭の奥
未だ白紙の期限付き将来設計
あんなに簡単に交わせた挨拶のハグも
淡く脆く たった一言
一瞬で崩れ落ちた

始まったばかりの夏に
もう終わるねと言われてしまった
じんわりと僕の顔から落ちた
その雫は汗だけじゃなかった
一番濃い味の浅漬けが
塩辛くて泣いた僕を風鈴が嘲笑う
戻れないさっきを悔やんで嘆いて
精一杯の声で
「冗談だよ」 

祭りも花火も見ることなく
残された夏休み
寂しい風の足跡に
君が鼓膜を揺らす

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

風鈴と君 歌詞

オリジナル楽曲「風鈴と君」の歌詞です。ご自由にお使いください。

閲覧数:161

投稿日:2021/03/16 17:41:53

文字数:550文字

カテゴリ:歌詞

オススメ作品

クリップボードにコピーしました