僕は、誤魔化すなんていったんだよ。

 それでも。

 この本心は不気味だ。

 醜態を並べているだけに過ぎないんだ。

 偽って、そっぽ向いて、嘘を重ねて――僕は今日もまた、嘘をつかせた人間を見て嘲笑うだけ。


 僕はそれから孤児院に入った。同じ境遇というか、仲良くなった二人が居てね。

 一人は自分の体を消すことの出来る少女だった。『見えない』恐怖が君にもわかるかい? 誰にも認知されない、という恐怖が君には……わかるかい? ともかく、彼女は可哀想だったよ。

 だから僕は近づいた。

 なんというか、ひどく卑怯だけどね。僕を『同年代の女の子に見せる』ように欺いたんだ。同性の方が話しやすい、って言うだろう? 勿論それで仲良くはなれたよ。おかげでグーパンチを食らったけれどね。

 二人目は人の心を読無ことのできる、嘘が嫌いな青少年だった。昔は、僕の嘘が見抜けちゃったものでさ、まったく信用されなくなっちゃったって訳だよ。

 二人に、同じようにちゃちな理想がインプットされてしまったんだ。

 なんというか、解るだろう?

 僕らの理想は、大抵が一緒なんだよ。

 けれども。

 その理想が単純にかなったとしても、この世界はひとりぼっちじゃ生きていけないんだ。

「それも嘘か?」

 もう一人の僕が問いかける。

「――いやいや、本心だよ? そんなこと無理に決まっているじゃないか」

 僕はそう答えた。

 僕の脳はあくまでも、正常なつもりだった。

 けれども。

 見えないうちに崩れかけていたんだ。そして、その脳に『No』というたった一語で示す拒否反応が満ち満ちていくのが、身にしみて分かったんだよ。




 もっと聞いてくれ――って心の中で願ったよ。

 僕の『本物』って奴を早く見つけて欲しかったんだ。

 心を、嘘を、我が儘を。

 寂しいよ――そんな言葉を言ったって、僕は変わらない。

 ニヤけそうな程に――自分に呆れてしまう。

 『本物』ってものは、僕のたくさんの『嘘』に埋めつくされているんだ。

 今まで、誰もがそれを解ってくれない。

 解ろうとしなかった、というのが正しいかな。

 ともかく、僕には沢山の仮面があったんだ。それを無意識に使ってしまったというか――、やっぱり僕という存在には常々呆れてしまうんだよ。



 ――ねえ、呆れちゃうような僕なんて、もう救えないかな?




 それをある人に言ったんだ。聞いたら、なんて言ったと思う?

「そんなこと、問題ないだろう? お前はお前だ。それでいいじゃないか」

 ――そう言って、君は変わらないんだね。

 僕が『友達』になってから、さ。

「……あぁ、ミスっちゃったなぁ」

 僕はやっぱり、本心じゃない『不気味』な僕に――溺れてしまうんだ。

 本心は、ずっと変わっていないのに。

 あの『怪物』に心臓を飲み込まれた時から――。








 ――あぁ、ちょっと喋り過ぎちゃったね

 ――まぁ、ただの法螺話だからさ

 ――それじゃ、今日はこの辺で。

 ――次に合図がなったときは




 ――もっと不気味な咄をするよ。


おわり。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

夜咄ディセイブ【自己解釈】 後編

おわった。
解釈難しかったです。

本家:http://www.nicovideo.jp/watch/sm20116702

閲覧数:555

投稿日:2013/02/17 22:13:21

文字数:1,331文字

カテゴリ:小説

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  • 友愛@in不可

    友愛@in不可

    ご意見・ご感想

    あの女体カノとかはそーゆー風に解釈できるんですね…!

    いつ読んでもauroraさんの解釈小説は素敵です!!!

    2013/02/17 22:55:57

    • aurora

      aurora

      >>友愛さん

      僕はそんな感じに解釈しました。
      素敵と言っていただけて、とても嬉しいです。

      2013/02/19 17:57:11

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